3話 駄々っ子
住処についてすぐに
「家はどこなの?」と聞く。昨日のように暗くなる前に送った方が良いからな。
〔**!ま******!〕
(ん?急に早口だな)
少々怒っているようにも感じられる声色だった。飯のことか?
聞き取れていないのを理解したのかさっきと同じようなセリフを言う。
〔いや!まだここにいる!〕
(そっちか)
飯の感想より困る回答に何も答えられずにいたが泣き出しそうな顔をしていたから仕方なく、
「良い。ララが良いなら別に良い。でも明日には帰るよ。」
その返事を聞いた途端ララの表情が明るくなった。
(さっきまで泣きそうだったじゃん!やられた!)
〔ありがとうユキ!〕
ユキにとっては小さな、ララにとっては大きな薄暗い洞穴でまた一晩過ごすことになった。
この選択が正解なのかは神でさえ知らない。
「昼ごはんも草」喜んでいる最中のララに事実を伝える。
〔え!草なの?〕
当たり前だ。肉は調理が難しいだけだぞ。
〔ユキは何を食べるの?〕
急に話を振ってきた。俺が草以外を食べていたらもらう算段か?
「僕は食べる必要ないから」と軽く返答。
残念だったなさっきと同じようなことにはさせないよ!駄々っ子め!
〔そっか…。凄いね!食べなくても良いって!〕
明らかに気分が悪くなっている。それだけ不味かったのか、はたまた肉が食いたかったのか。
「肉…食べる?」
つい言ってしまった。食べるなら美味しく食べてほしんだよ僕は。
草だって生えてくるまでに時間がかかるから。いやいや食べてほしくないんだ。
〔あるの?〕
(今回はさっきと違い一気に明るくならない。わざとではないってことか。)
「時間かかるけど良い?」
そこらへんにいる生き物を探して解体して肉を焼ける状態にまでしなければいけない。
本当に面倒くさい作業量だ。
〔うん。ユキありがとう。〕
お礼とは嬉しいものだな。何でもしたくなる。 実際はしないが。
洞穴にララを滞在させ僕は洞穴を出る。よし。まずは生き物を探そう。一角兎らへんが良いか。ゴブリンは僕がお断り。
遠くを見つめながら周りの音を拾う。
(!いそうな音がする)
一角兎は独特な音だ。後ろ足が発達しているせいか地面を蹴る音が大きい。
(いた。大人の一角兎だ。)
子供より大人の方が蹴る力が強い。軽く避けて木にぶつからせてみても木を倒壊させるほど。
子供の方がやりやすいんだよな。と思いながら風の魔法を準備する。そして気づかれる前に首を一切り。
一角兎の血が周囲に散乱する。
(あとは調理するだけ。…しまった!)
この体では肉を運ぶことができないじゃないか!生臭さのあるものを咥えたくもない。
仕方ない。と自分に言い聞かせながら大きさを変えヒトの姿へ変貌させた。
(この姿はカッコいいと思えないから嫌なんだ。)
隠しきれない耳と尻尾が自我があるように動く。
獲物を持って洞穴に戻るとララが出迎えた。
しかし何か慌てている様子。
「何かあったの?」と問う。
その言葉に安心したのか落ち着いて深呼吸をしている。
〔知らない人かと思った〕
その返答に自分の姿がヒトだったことを思い出す。
「僕は人狼だから」
言葉から察せるような種族。この世には一体しかいない。広く知られていないのが悲しいがな。
〔そうなんだ!びっくりした〕と微笑みをこちらに向ける。
〔それは今日のご飯?〕
「そうだよ。調理しないといけないよ。」
疑問にはすぐに答えないといけない。考えたら怪しまれるらしい。クソヤロウが言ってた。
(怪しまれても関係ないけど一応。)
思っていた以上に早い回答で困惑したのかチラチラ肉を見ては僕を見ることを繰り返していた。
早く始めよ。慣れない手つきで毛皮から肉を切り離す。
(血もだめなんだっけ)
やり方ははっきりとは知らないから(確かこう)と記憶を辿りに肉を調理する。
「出来たよ」
外で何かしているララを呼ぶ。
「何していたの?」
率直な疑問を投げかけるとララは〔することないから草見てた〕楽しい?それ。
ララの目の前で肉を焼く。火の魔法を使うのは危ないが致し方ない。
すると香ばしい匂いが辺りを覆う。いい匂いだ。
〔これ!食べていいの?〕
「良いよ」
目を輝かせながら僕に話しかける。確かに草より肉の方が美味しそうだ。
食欲だけで生きていないと言わんばかりの勘の鋭いララが
〔こんなに肉って小さかったっけ?〕と俺に聞く。
「これぐらいだった。」
咄嗟に嘘をつく俺。そう。解体が難しくてだいぶ肉をダメにしてしまったのだ。
死んだ兎に申し訳ないと謝りつつ早く食べろとララを急かす。
俺には必要ない能力だし。
ユキの一人称は基本「僕」です。
元々は「俺」だったので時々変わります。




