#2
スカーの手が内ポケットへ滑り込み、銃を手にしようとした瞬間、リリーにスカーが銃を所持していることに気づき、目の前のテーブルを思いっきり蹴り上げる。
「っ――!」
2人とも反射的に引き金を引く。
弾丸はお互いにテーブル越しに放たれ、リリーの弾はスカーの銃にあたり、スカーの弾はリリーの髪を掠める。
運良くリリーは頭の直撃を免れたが、バランスを崩し、後ろに転倒してしまう。その間、スカーが一気に距離を詰める。
リリーは床を蹴って体勢を立て直し、再び銃を向けようとした。
しかし、スカーがすぐさま手に取ったポッドを投げつける。ポッドはリリーの腕に当たり、熱い紅茶が散った。
「熱っ!!」
リリーは一瞬の怯み、その隙をスカーは見逃さず、スカーはリリーの銃を持つ腕をがっしりと掴む。
「しまっ――」
万力のような力に身動きが取れず、彼に向けていた銃口が天井へ逸れる。
リリーは即座に身体を後ろへ倒し、そのまま額をスカーの額に叩きつけた。
鈍い音が響く。
「っ……!」
スカーがわずかによろめき、手を離す。
リリーはその隙にキッチンへ滑り込み、流し台の包丁を掴んだ。
銀色の刃が一直線にスカーに振り抜かれる。
スカーは間一髪避けたものの頬が浅く裂け、血が飛び散った。
スカーは傷口を触り、血の着いた指先を舐める。
顔は少し笑みを浮かべている。
やや挑発めいてるが、リリーは構わず追撃する。
包丁を軸にした鋭い連撃、
無駄のない動きだった。
かつてスコルピオンの幹部として裏社会で恐れられた剣術。
しかし、
「剣術では君の方が上だけど――」
スカーの腕が、包丁を持つリリーの手首を思いっきり掴む。
いくら剣術が得意といえど、彼女が使っていたのは刀身の長い仕込み刀だ。短い刀の使用は慣れてない。
「体術で僕には敵わないよ」
「くっ……!」
リリーは振りほどこうとするが、びくともしない。
次の瞬間、視界が反転した。
スカーがそのまま彼女の身体を投げ飛ばしたのだ。
リリーの背中がリビングの机へ激突し、激しい音とともに木製の脚が折れ、机が崩れ落ちた。
「かはっ、、、」
肺の空気が一気に吐き出される。
埃の舞う中、スカーはゆっくりと近づいてくる。
頬から血を流しながらも、その足取りはまるで揺らいでいなかった。
崩れた机の破片を踏みながら、スカーはゆっくりと歩み寄り、床に転がっていた銃を拾い上げ、そのままリリーへ向けた。
黒い銃口が、静かに彼女の額を捉える。
リリーは荒い息を吐きながら、壊れた机の上ににもたれかかっていた。
口元には血が滲み、腕も震えているが、それでも、その目だけは死んでおらず、スカーをギロッと睨みつける。
スカーはそんな彼女を見下ろし、小さく肩を落とす。
「ねぇ、こんな状況で言うのはあれだけどさ……本当に戻る気ないの?」
その声には、淡々としているが、どこか諦めきれない響きがあった。
だが――
リリーは睨み返し、吐き捨てるように言った。
「聞いてなかったの?戻らないって言ってんでしょ、サイコ野郎」
その返答を聞いた瞬間、スカーは静かなトーンで話す。
「……本当に残念だよ」
引き金が引かれ、銃声が、家中に響いた。
リリーの身体がわずかに揺れ、そのまま崩れ落ちる。
床へ広がっていく血。
さっきまで漂っていた紅茶の香りは、火薬の臭いに塗り潰されていた。
スカーはしばらく無言で立ち尽くしてから、血のついた頬を指で拭う。
「俺らなら上手くやれると思ったんだけどな…」
前置き長くてすいません、次回から主人公たち登場します!!




