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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~真相編~
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第85話 回想⑳ なぜ? ~ミカ視点~




 そうして哀れな占い師のフリをして接触した彼ら……アロンとリンカという二人組を、間近で観察し続けたある日、私は自分の心の奥底に広がるドロドロとした暗闇の中で、改めて強烈に感じていた。




 こいつらは、頭が完全にイかれている。




 地上のルールも、この迷宮の底知れない恐ろしさも、何一つ理解していないおめでたい奴ら。


 特にリンカという女の佇まいは、私の理解の範疇を完全に超えていた。

 あの凛とした美しい雰囲気や、他のどの冒険者よりも飛び抜けて優れた容姿とは裏腹に、その頭の中身はアロンという男への恋愛脳が全開になった、救いようのない馬鹿さ加減。


 あんな男のどこがいいのか、常にベタベタと寄り添い、呆れを通り越して、見ているだけで私の胃の底からは止まらない不快な吐き気がせり上がってくる。


 しかも、いざという時に魔物から自分を守るための攻撃魔法や防御魔法すら何一つ使えない、男の背主にただぶら下がっているだけの、戦場では何もできない無能な存在。



 最前線に立って命を削り合う冒険者の風上にも置けない、文字通りのただの寄生虫だ。



 おまけに無駄に言葉の圧だけは強くて、私の言葉を遮るように、理屈の外側から一方的に殴りかかってくるような、あの理不尽な言い返し(レスバ)で、私を完封してくる始末。


 喉の奥がカラカラに干からびるほどの焦燥感が、私の胸の内で激しく渦巻く。



 一体どんな最悪な環境で育ったら、こんな我が儘放題の歪んだ女になるんだ。



 私はそのおぞましい正体のすべてを暴くために、少し自らの心理魔法を発動させて、彼女の脳内の奥底の魔力を直接この指先から探ってみま────


 















































 ……リンカさんは、許してあげよう。



 私の指先が彼女の体内を巡る魔力の細かな流れに触れた、まさにその決定的な一瞬の刹那だった。


 私の頭の中のすべてが、まるで冷たい水を浴びせられたかのように、唐突に、そして完全にフリーズした。



 ……よく考えてみたら、今こんな風に笑顔を浮かべて、楽しそうに笑っていられること自体が、一人の人間として奇跡に近いのだから。



 本当にそうだ……


 いや、なぜだ? なぜあなたは、こんな風に気楽に笑えるんだ?


 あんな凄惨な悪夢のような現実を体験したのになぜリンカさん、あなたは────



 なぜ、絶望しないの?


 なぜ……?


 なぜ、世界を、神を、激しく憎みもせずに、普通の人間として普通に生きていられるのか……

 私には、本当に何もわからない……



 私の指先からかすかに流れ込んできた、リンカさんの脳内の魔力の断片。

 その記憶の波長に触れた瞬間、私の頭の中のすべてが、強烈な拒絶感のパニックによって真っ白にフリーズしていった。



 あまりの理解不能な悍ましさに、私は恐怖に駆られてその魔法を途中で思わず強制的に中断してしまったから、記憶の詳しい中身までは何もわからない。



 あんな深淵のすべてを、もう一度、私のこの指先で暴いて見ようとも思わない。



 なぜ……?


 ……いや、もう考えるのはやめよう。




 この隣にいる男……アロンだけは、絶対に別だ。


 まだ心理魔法でその記憶の確心の底を完全に覗き見たわけではないけれど、こいつが救いようのない最悪な人間のクズだなんて、わざわざ私の魔法を使って細かく調べなくたって、その一挙手一投足を見つめるだけで一目で分かる。



 自分がこの世界で一番優秀だとか、優秀すぎて自分の才能が怖いだとか……



 本当に、こいつの唇から漏れ出る不遜な言葉を思い出すだけで、胃の底からどろりとした嫌悪の反吐が出る。



 典型的な、自らの持つ暴力的な力に溺れて他人を見下し、踏みにじることしか頭にない、あの男たちと何一つ変わらない、吐き気のするクズの思考回路そのものだ。



 このムカつく余裕のツラを見ているだけで、私の心の中の濁った復讐の闇は、冷たく、そして狂気的に燃え上がっていく。


 このような男をこの世に生かしておけば、またあの日の私たちのような犠牲者が新しく生まれるだけだ。



 リンカさんも、本当はあんな傲慢な不遜な男と一緒に潜りたくなんてないはずなのに、おそらくはあの暴力的な力で脅されて、無理やり一緒にいるに違いない。


 逃げ場のない恐怖によって心を完全に支配され、逆らうことすらできずに、あんな男に無理やり依存させられ、大切な心を完膚なきまでに壊されているんだ。


 いわゆる、あの日私たちが男たちに組み伏せられて自由を奪われた時と同じ、精神のパニックの真ん中に彼女はいるんだ。



 こいつの歪んだ欲望の生贄として、ただ都合よく人形のように弄ばれているに決まっている。



 あの日、私がついていたあのくだらない嘘のせいで、アミとノルンを救えなかったあの最悪な夜の時のように。

 また目の前で、一人の女の子の未来が無惨に蹂躙されて壊れていくのを、私はただ黙って見ていることなんて絶対にできない。



 リンカさんのあの笑顔の奥に隠された、涙と喉の渇きを救えるのは、私しかいない。


 私が、今度こそ私のこの手で、彼女をクズの魔の手から助け出さなくちゃいけないんだ。



 こいつを大穴の底へ叩き落として肉塊へと変えて、今度こそ、私がリンカさんをこの地獄から救い出してあげる。



 その歪んだ強い正義感だけが、私の壊れた心を暗闇の中で激しく突き動かし、アロンを殺すための、最後の完璧な計画へと私を向かわせたのだった。





第86話は、火曜日の【 12時40分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、明日の更新でお会いしましょう。

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