第83話 回想⑱ 遅い遅い遅い遅い遅い禁止令 ~ミカ視点~
それから数ヶ月という、ただ息を吐いて日々を消費するだけの虚しい時間が経過した後、地上のギルド本部がついにこの未知の迷宮への全面的な探索禁止令を公式に発表した。
遅い。
何もかもが、あまりにも遅すぎる。
その決定が地上で正式に発表されたのは、私がクズどもの返り血で汚し、おめでたい頭をしてやってくる偽物の冒険者たちを殺し回ってから、すでに十ヶ月もの長い時間が経過した後のことだった。
何十人もの人間がダンジョンから消え去り、二度と街に戻ってこなくなって、ようやく自分たちの管理責任を問われるのを恐れて重い腰を上げるギルドの大人たち。
やはり彼らも、命を懸けて最前線の戦場に立つ冒険者たちの安全や命のことなんて、最初から微塵も、欠片ほども考えてはいないのだ。
ただ自分たちの利権を守り、街の体裁を取り繕い、そこから得られる目先の利益のことしか頭にない、あの男たちと同等に薄汚い集団なのだと、彼らの無能な対応を目の当たりにして、私は改めて再認識しただけだった。
……まぁ、そんな地上のクズの冒険者たちのことなんて、今さら私の壊れた頭の中でいくら考えたところで、何の価値も意味もないけれど。
それからさらに、冷たい暗闇の真ん中で、数ヶ月の静かな時間がただ流れていった。
ギルドの発令した探索禁止令は未だに解かれる気配はなく、最近のセイドウの街では、ギルドからの重い罰則や冒険者資格の剥奪を恐れて、無断侵入を企てるような命知らずな偽物の冒険者も、すっかりといなくなってしまっていた。
あれほど毎日のように迷宮の入り口へと群がっていた男たちの足音が、嘘のように完全に途絶えてしまったのだ。
獲物が、誰も来ない。
誰も殺せない日々が続く中で、私の喉は常にカラカラに干からび、心臓の奥が焦燥感で不快に脈打ち続ける。
私の心を辛うじて支えていた復讐という名の潤いが、獲物が来ないというただそれだけの理由で、不自然に停止させられているこの退屈な日々に、私の精神は狂ってしまいそうだった。
そろそろ、この場所での殺しも潮時なのかもしれない。
ギルドに登録されている身分のすべてをもう一度最初から偽造し直して、どこか新しく発生した別の街のダンジョンに拠点を移すべきだろうか。
新しい街に行けば、またあの夜の男たちのような、力に溺れた不潔なクズの冒険者がいくらでも獲物として転がっているはずだ。
ここでただじっと座って飢えているよりは、その方がよっぽどマシなはずだ。
いや、けれど、この色彩を飲み込む絶対の暗闇だからこそ、私は地上の誰にも知られずに、これほど効率よく、術式の手順を踏むことなく確実にクズどもを一人ずつ殺し続けてこれたのだ。
普通の、明かりの魔法がまともに通用してしまうような別の普通の迷宮へと移動してしまえば、この完璧な暗闇が私にもたらしてくれていた暗殺の最大のアドバンテージは、すべて一瞬にして失われてしまうことになる。
正面から武器を構えて戦えば、心理魔法しか持たない私が正規の冒険者に勝てるわけがない。
やはり、地上の禁止令がいつか解除されて、また新しい美味な獲物たちが自らダンジョンへとやってくるその日まで、私はこの暗黒の底に静かに潜んで、ただじっと牙を研いで待っていた方がいいのだろうか。
暗闇の中で一人、冷たい石の壁に額を押し当てながら、私は答えの出ない葛藤を何度も、何度も、果てることなく繰り返していた。
アミとノルンの遺骨を入れたカバンの重みを感じるたびに、私の心は冷たい焦燥感の汚泥に深く沈み込んでいく。
そう、地上の衣服の上からボロボロのフードを深く目深に被り、これからの自分の復讐の戦術を、乾いた喉の奥を鳴らしながら考え、人通りの少ない昼のセイドウの街中を一人で静かに歩いていた、まさにその時だった……
「……ついに、だな」
私のすぐ数メートル前方の通りを同じように歩いていた、見慣れない男女の二人組の話し声が聞こえた。
「ずっと待ち望んでいた……“入った誰一人として生きて帰還しないダンジョン”……この俺に相応しいね」
「何が……面白いだ……。お前の……そのおめでたい自殺願望に……私をいちいち……巻き込むな」
第84話は、日曜の【 12時40分 】に投稿いたします。
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それでは、明日の更新でお会いしましょう。




