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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~真相編~
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第82話 回想⑰ 切実な思い ~ミカ視点~




 しかし、私がそんな信念を胸の奥に抱いていたところで、この世界の現実はどこまでも甘くはなかった。


 私が嘘の仮面を被ってターゲットの男たちに近づき、その肌に直接、私の細い指先でそっと触れては、体内を巡る魔力の細かな流れから『心理魔法』を発動させて記憶の奥底をどれほど必死に覗き込んでみても………




 そんな切実な「本当の綺麗な理由」を持って死線に挑んでいる者など、この広大な迷宮のどこを探したってただの一人もいなかった。




 私のような悲しい過去や重いトラウマを背負って必死に戦っている本物の冒険者なんて、この世には一人もいなかった。


 このダンジョンを攻略しようとする者たちの脳内の記憶は、どいつもこいつも、どろりとした浅ましい欲望に塗れた汚いものばかりだった……




 命懸けの探索で一攫千金を狙いたい。


 強い力を手に入れて、地上の女たちにモテたい。


 チヤホヤともてはやされて、男たちにチヤホヤされたい。


 暗い通路で他の冒険者の隙を見て、誰かを乱暴に犯したい。




 誰も彼も、この命のやり取りがある過酷な戦場で、真面目に誰かのために、人のために探索をしようとする崇高な者なんて、最初からただの一人も存在しなかった。


 みんな正義の味方のツラをして、服の下にあの夜の男たちと同じ吐き気のする下劣な欲動を隠し持っているだけ。


 そんな浅ましい欲望を服の下に隠し持っている人は、何も男の冒険者だけではなかったんだ。


 私と同じ女の身でありながら、その心の奥底に巣食っている記憶は、どいつもこいつも反吐が出るほど醜く、汚い自己愛に満ち溢れたものばかりだった。





 自分よりも若くて綺麗な女の冒険者を引き立て役に使い、地上の男たちからチヤホヤともてはやされたい。


 パーティーの主導権を握り、自分の都合のいいように他人の命や分け前をコントロールしたい。


 格下の男の冒険者を見下し、その自尊心を完膚なきまでに踏みにじって、己の歪んだ優越感を満たしたい。




 みんな同じだ。男も女も関係なく、正義の味方のツラをして、服の下にあの夜の奴らと同じ吐き気のする下劣な欲動を隠し持っているだけ。


 性別がどうあれ、人間という生き物そのものが、私から見ればただの不潔な汚物でしかなかったのだ。



 その汚泥のような記憶を何度も、何度も、直接肌から覗き込み、読み取らされるたびに、私の胃の底からは止まらない嫌悪の反吐がせり上がってきた。


 私の心を辛うじて繋ぎ止めていた、世界へのわずかな期待のすべてが、彼らの浅ましい思考を覗くたびにゴリゴリと削り取られて、完全に消えていった。


 ……そして、そんな他人の醜い記憶の深淵を覗き込み続け、世界のあまりの汚さに喉をカラカラに干からびさせていたある日のこと、私の脳裏に、ある最悪な気付きが唐突に閃いてしまったんだ。




 思えば、かつて三人で荒野の夕日を見つめながら「一流になろう」と笑い合っていた、私たちだって全く同じだったじゃないか。




 有名になって、地上のギルドのみんなに、世界中からチヤホヤされたい。

 それが自分の持っている能力で、一番簡単に、手っ取り早く叶えられるのが冒険者という職業だったから、ただ何となく目指してなっただけ。



 私たちも、あいつらと同じ、ただの見栄えと名声が欲しいだけの偽物の冒険者だった。


 本当に心から、自分以外の誰かのために、人のために冒険者になろうとする奴なんて、そもそもこの世界には最初からいないんだ。



 ……いや、私と同じように、目の前で全てを物のように奪われて暗い過去を持つ人だけ……復讐や、償いや、そんな二度と這い上がれない重荷を背負った人だけが、初めて心から冒険者になろうと思えるはずなんだ。



 けれど、そんな人は、この迷宮には一人もやってこない。


 私が必死に求めていた『救うべき本物の冒険者』なんて、私の都合のいい幻想の中にしか存在しない、ただの綺麗な言葉だったんだ。



 地上の冒険者どもはどいつもこいつも、私から見ればただの吐き気のする汚物でしかなかった。


 そんな奴らのために、私がどうして自分の手を血で汚しながら選別なんて高潔な真似をしなければならないのだろうか、そんなおめでたい偽善はもう終わりにしよう────私の頭の中のすべてが、冷たく、そして狂気的になっていった。



 私はその残酷な真実に気づいて、心が完全に壊れてしまったあの日、もう何の意味も持たなくなってしまった冒険者の選別を、完全にやめた。


 救うべき本物なんてどこにもいないのなら、このダンジョンに足を踏み入れてくるおめでたい偽物どもを、一人残さず全員この色彩を貪り食う闇の底へと沈めてしまえばいい。



 私の心の中に残されていた、最後の生温かい良心のすべては音を立てて完全に壊れ、世界のすべてを拒絶する冷たい静けさへと変わっていった。



 地上で裁けないのなら、このダンジョンの罠ですべてを更地へと消し去ってやればいい。


 一人、また一人と、男たちの命を奪ってその死体を暗闇に沈めるたび、私の心はただ冷たく凪いでいく。



 いつしか、この私が殺しを重ね、死体の山を隠し、血痕一つ残さずお掃除し続けてきた最悪の場所は、地上の人々から『無明の層』と呼ばれ、入ったら誰も二度と生きては帰れない恐怖の深淵として、激しく忌み嫌われるようになったのだった。





第83話は、【 17時10分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、次の更新でお会いしましょう。

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