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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~真相編~
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第81話 回想⑯ 完全なシステム ~ミカ視点~




 だが、もし万が一、あの底知れない高さからの落下の途中で運良く生きて地面に辿り着いていたとしても、私は彼らに地上の光を見るための安度の隙など絶対に与えはしない。



 暗闇の底でのたうち回りながら骨の砕けた痛みに息を荒げている彼らのいる場所へ、そこへさらに追い打ちをかけるように、『魔物呼び込み君』の不気味なスプレーの霧を容赦なく吹きかける。


 プシュッという不快なガスの音とともに、芳香が立ち込める。


 大穴の強烈な衝撃によって五体の身体を深く傷つけられ、一切の明かりが効かない暗闇の中で全ての五感を奪われてパニックになり、完全に混乱しきった彼らのいる場所を目指して、理性を完全に破壊されて狂暴化した無数の魔物たちが、血の匂いとスプレーの独特な芳香に誘われ、暗闇の奥底から津波のように押し寄せてくる。



 動けないまま冷たい土の上に這いつくばる彼らの肉体を、飢えた獣たちの鋭い牙と爪が確実に、そして綺麗に仕留めて息の根を止めてくれるのだ。


 暗黒の奥から聞こえてくる、バリバリと肉を貪り食う骨の砕ける生々しい咀嚼音と、男たちの最後の短い悲鳴。

 それを静寂の中で一人でじっと聞いている時だけが、私の張り詰めた喉の渇きをほんの少しだけ癒してくれる時間だった。




 こうして、この地上の光が一切効かない無明の層に、一度足を踏み入れたら誰も二度と生きては帰れない、最恐の冒険者殺しの完全なシステムが完成した。




 この場所こそが、理不尽に全てを奪われた私の、本当の復讐の戦場へと変わったんだ。

 地上のルールで裁けないのなら、このダンジョンの罠ですべてを更地へと消し去ってやればいい。



 もちろん、私は最初から、この手で殺す対象となる冒険者の選別は、自分なりの厳格なルールを設けて、それこそ狂気的なまでに慎重に執念深くしていた。



 ただ無差別に命を奪うだけの、頭のイカれた怪物に成り下がったわけではない。

 私は可憐な女の身分を偽り、嘘の顔と名前を重ねて彼らの懐へと深く潜り込み、まずはその肉体に直接、私の細い指先でそっと触れる。

 触れなければ発動しない、私のあのただ心を読み取るだけの心理魔法。



 その指先から直接、彼らの体内を巡る魔力の細かな流れを読み取り、彼らの脳内の奥底に隠された、これまでの人生の記憶のすべてを冷徹に探っていく。


 男たちが私に下卑た油断を向けているその短い時間の真ん中で、私は彼らの歩んできた過去の景色を、一人ずつ白日の下に暴き出していく。




 そうして覗き込んだ記憶の底、その網の目の真ん中で────かつての私と同様に、地上の光の中で誰にも言えない暗い過去や、胸を引き裂かれるような凄惨なトラウマを抱えて深く傷ついている者。

 あるいは、この命を懸けた過酷な冒険者という仕事でしか、明日の食いぶちを繋ぎ、生き延びていく手段がどこにもないような、切実な事情を持った『本当の冒険者』の姿を見つけた時、私はそのナイフを握る指先を静かに止める。



 彼らは殺さない。私は、そういう人たちの命だけは、絶対に殺さない。


 彼らがどれほど無様に怯え、泥臭く足掻いていようとも、そこには私たちがかつて三人で荒野の夕日を見つめて誓い合った、あの眩しくて温かな本物の夢の残痕が、確かに息づいているのが分かるから。



 もしも世界に、そんな切実な冒険者しかいなかったなら、私はその瞬間にすべての嘘を捨てて、この殺しの連鎖から静かに身を引いていたはずなんだ。



 私はその胸の奥底の、誰にも譲れない絶対の信念の元────あの日、地下第七階層の暗闇の通路で、アミとノルンを物のように無惨に蹂躙し、最後は笑いながら首を掻っ切った、あの夜の男たちのような存在だけを憎んだ。


 自らの持つ力に溺れ、他人の大切なものを踏みにじることしか頭にない、薄汚い偽りの冒険者。

 そんなクズどもだけを、この深い大穴の底で一人残さず狩り続け、この世から綺麗に消し去ってやろうと……



 あの光を拒絶する冷たい赤土の上で、二人の小さく散らばった遺骨をカバンに詰め込み、一人きりで声を枯らして泣き崩れたあの日に、私はそう固く、自分の魂に誓ったのだ。



 その誓いの熱だけが、今でも私の壊れて干からびた心を、この暗闇の中で冷たく、そして激しく支え続けているのだった。





第82話は、金曜の【 12時40分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、明日の更新でお会いしましょう。

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