第80話 回想⑮ ドロドロと満たされる ~ミカ視点~
話を戻そう……この壁に隠された大穴の秘密を完全に解き明かして、その条件を完全に制御できるようになってから、私のこの手による冒険者の殺しは、格段に捗りだした。
あの夜の私は、ただ冷たい地面に這いつくばって、アミとノルンの身体が大穴の風によって強引に奪い去られていくのを、涙を流して見ていることしかできない無力で惨めな存在だった。
二人の前で、私は何一つ魔法を使うことすらできず、ただ自分のついた嘘の代償に絶望するしかなかったんだ。
けれど、自らの『心理魔法』の本当の姿が、直接触れた物質の内部の魔力を深く読み解く『解析魔法』なのだとあの暗闇の底で辿り着き、あの灰色の石作りの壁の奥底を執念深くハックしきったその時から、世界の形は私を中心に完全に反転したんだ。
迷宮の構造そのものが、私の復讐の牙としてその形を変えた。
大穴さえ開きさえすれば、あとはすべて私の手のひらの上、思い通りにすべてを消し去ることができた。
一度その牙を剥いて開けば、周囲のすべての空気を強制的に一息に吸い込むかのように、あらゆる物質を奈落の最深部へと引きずり込む、あの凶暴な暴風の嵐が通路に激しく吹き荒れるのだ。
地上の高位の魔術師が放った魔法すら、空間の不自然な重圧によって濁った沼のように飲み込む、この世界の色彩をすべて失った暗闇。
足元すら満足に見えない、松明の物理的な炎を掲げたところでほんの数メートル先を照らすのが限界のその真っ暗な世界において、突如として目の前に現れた、底知れない漆黒の闇を湛えた未知の『穴』。
それは、このまだ誰も全容を把握していない迷宮に挑んでくる人間たちにとって、あまりにも異様で、あまりにも不気味な怪奇現象そのものだった。
どれほど多くの死線を潜り抜けて経験を積んだ優秀な手練れの冒険者であっても、彼らは私が仕掛けたその罠から逃れることは絶対にできない。
目の前で起きた理解不能な現象に対して、それが一体何なのか、どうしてこんな壁に大穴が穿たれているのか、探求者としての抑えきれない性なのか、彼らはその正体を確かめようとして、必ず無防備にその暗黒の口を覗き込みたくなる。
自分たちほどの力があればどんな異常にも対処できるという、強者ゆえの傲慢な確信。
彼らが一瞬の隙を晒したその決定的な瞬間を、物音一つ立てずに暗闇に潜みながら絶対に見逃しはしない。
彼らの理性が疑問に支配され、五感のすべてが目の前の穴へと集中したその刹那を狙って、私は自らの殺意を壁へと共鳴させ、大穴の条件を強引に起動させるのだ。
ひとたび大穴の放つ強烈な超重力吸引の風が起これば、どれほど腕の立つ戦場の手練れであろうと、どれほど強力な高価な防具にその身を包んでいようと、その暴風の凄まじい風圧から身をよじって回避することは物理的に不可能に近い。
突如として背後から襲いかかる凄まじい重圧の風は、彼らの衣服を激しく引き裂き、呼吸をするための空気すら強引に奪い、地面をしっかりと踏みしめていたはずの足の自由を無慈悲に奪い去っていく。
現実に、これまで私の仕掛けたこの大穴の罠を前にして、無傷で回避できた冒険者なんて、この迷宮の歴史の中にただの一人も存在しなかった。皆無だった。
どんなに必死に床の岩肌に爪を立て、血を滲ませて床を掻き毟って抗おうとしても、大穴の放つ風の前には、彼らの泥臭い抵抗など羽虫の羽音ほどにも聞き入れられはしない。
そして、ほとんどの愚かな冒険者はそのまま受け身を取ることすらできず、奈落の奥底へと吸い込まれ、地下第七階層の底にあるあの硬い石床へと叩きつけられ、無惨な肉塊となって落下死する。
かつてのあいつら男三人組がそうであったように、高い場所から硬い石の床へと真っ逆さまに落ちて、腰から下の下半身を完全に粉砕され、誰に看取られることもなく、痛みに叫び声を上げながらのたうち回り、時間をかけて寂しく息絶えていくのだ。
その肉と骨が強引に砕け散る衝撃の音を、通路の上で遠く静寂の中に耳にするたび、私の心の中のドロドロとした濁った闇は、冷たく、そして静かに満たされていく。
クズの冒険者が、この世からまた一人消え去ったのだと、それだけを心の支えにして私は暗闇の中にただ一人で佇み続けていた。
世界からあいつらと同じ不純物が消えるたび、私の胸の奥の渇きが、ほんの少しだけ冷たく癒されていくのだった。
第81話は、【 17時10分 】に投稿いたします。
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それでは、次の更新でお会いしましょう。




