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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~真相編~
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第79話 回想⑭ 晴れない心と進化する心理魔法 ~ミカ視点~




「アミ……ノルン……」



 ────松明の弱々しい炎が照らし出したソレを見て、私はただ、涙で歪む瞳を大きく開いて凝視するしかなかった。


 そこに転がっていたのは、紛れもなく、私がこの命を懸けてでも奈落の底から連れ戻したかった二人の成れの果てだった。


 上空からこの容赦のない硬い石床へと強引に叩きつけられたその肉体は、あまりの衝撃によって見る影もなく無残に四方へと散乱し、土に汚れた衣服の破片の隙間からは、白骨化した痛々しい骨の白さが暗闇の中に浮かび上がっている。



 かつての面影など何一つ残されておらず、もはや顔の肉的な判別さえ不可能。

 世界の誰にも看取られることなく、光を拒絶する奈落の底で、二人の動かない残骸がただ冷たく、静かに土と同化するようにして横たわっていた。


 

 けれど、視界がどれほど血の赤色に染まろうとも、私には分かった。

 特別な探知の魔法なんか使わなくたって、私の魂のすべてが、床の土の上に無造作に散らばっている彼女たちの愛おしい遺骸の気配を一瞬で捉えて、どうしても、どうしても離さなかったんだ。



「ごめん……ごめんなさい!! あの時、私のついたくだらない嘘のせいで……っ、助けられなくて!! ごめんなさい!!!」



 私は自らの割れた指先で冷たい土を掻き毟りながら、時間の感覚を完全に忘れて、何時間も、何時間も、親友たちの残骸の前でただ一人、冷たい土の上で涙を流して懺悔し続けた。


 どれだけ泣き叫んで謝っても、散乱した二人の肉片が元に戻ることはない。



 私がくだらない見栄の嘘を吐いていなければ、そもそもこのダンジョンを攻略しようなど思うことだってなかったはずなのに。



 自分の醜い自尊心が二人の命を奪ったのだという、五感を真っ白にフリーズさせるほどの猛烈な罪悪感に押しつぶされながら、私はただ、静寂の中で声を枯らして泣き崩れることしかできなかった。


 






































 どれほどの時間が流れたのか、もはや私には分からなかった。

 暗闇の底で泣き叫ぶ声すら涸れ果て、肺が冷たい空気を虚しく繰り返すだけの静寂が戻ってきた頃、私の視界には、ただ冷たく横たわる二人の残骸という現実だけが残されていた。


 あいつらの言葉が呪いのように脳裏で反転する中、私はその干からびた瞳をゆっくりと動かし────


 私は、もう二度と動かない彼女たちの愛用していた遺品の数々や、散らばった白い骨のひとかけらを、土にまみれた自らの手で一つずつ拾い集め、カバンに入れられるだけ丁寧に詰め込み、ロープを伝ってこのダンジョンの外へと静かに出た。


 カバンの中から伝わってくる、骨の冷たい硬さと、かすかな金属の擦れ合う音。

 それが、私の大好きな幼馴染たちの遺した、この世界に唯一の生きた証だった。


 このまま、アミとノルンの骨を抱えたまま、すべてを捨てて三人で笑い合っていた故郷の小さな街に帰ろうかと考えたりもした。


 けれど、二人をこうして自分の手で回収したとしても、私の壊れてしまった心は少しも晴れることはなかった。



 目を閉じれば、今でもあの男たちの下卑た笑い声と、衣服の裂ける最悪な音が耳元にこびりついて離れない。




 私は、地上の光の中で普通の人間として生きていくための心のすべてを、あの日このダンジョンで、すでに一滴残らず吸い尽くされていたんだ。




 代わりに私は、本当の、ただ一人、本物の冒険者になった。

 名前を欺き、顔を欺き、身分のすべてを偽造のカードで覆い隠して。



 そして────あの夜のクズ共のような、綺麗な言葉で正義や理想を騙りながら、服の下に醜い欲求を隠し持っている偽りの冒険者たちを、この光の効かない迷宮の底で一人、また一人と、ただ冷徹に殺し続けた。



 ターゲットの男たちが私への警戒を完全に解いて、最高に下卑た油断を浮かべたその一瞬の隙を狙って、私はその喉元をナイフで一瞬にして掻っ切る。


 あいつらの流す黒い鮮血を浴びるたび、私の心の中のドロドロとした濁った闇は、さらに深く、深く染まりきっていった。



 それからの孤独な日々……

 私はあの壁に穿たれた大穴の特殊な発現条件を、暗闇の中で何度も何度も研究し、執念深く調査を重ね、ようやくその条件を突き止めた。



 あれは恐らく、地下第七階層にいる者が、ある一定以上の『殺意』に達したときにのみ、その対象者の殺意と共鳴するかのように牙を剥いて口を開けるのだ。



 なぜ私に、そんなダンジョンそのものの隠された発動条件が完璧に分かったのか。


 それは、あの穴が灰色の石作りの壁によって完全に塞がれている時、私の『心理魔法』を発動させて、自らの指先で直接その壁に触れたからだ。



 そもそも心理魔法は、使用者が極端に少ないがゆえに、その能力の全容は未だ解明されていない。

 世間で分かっている唯一の事実は『発動時には必ず、対象に直接自分の手で触れなければならない点』、ただそれだけの、戦う力なんて何一つない欠陥品。



 けれど、この心理魔法が定義する『対象』というのは、何も生身の人間に限った話では断じてない。


 自分の手で直接触れさえすれば、生物だろうと無機物だろうと、おそらくはこの世のすべての物質の内部を巡る魔力の細かなベクトルに関与し、読み取ることができる。


 言わば、『解析魔法』に近いもの。

 それが、私がこの大穴の底の暗闇の中でただ一人で辿り着いた、結論だった。



 壁の石のざらついた表面に指先を押し当て、内側の魔力の流れを深く、深く読み解いていくことで、私はこの迷宮の構造そのものを自らの「復讐の牙」として手懐けることに成功したのだ。



 もちろん、この事実は、地上の誰にも、ギルドにすら一言も言ってはいない。





第80話は、水曜日の【 12時40分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、明日の更新でお会いしましょう。

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