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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~真相編~
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第75話 回想⑩ ただ女を………… ~ミカ視点~




「(こいつらも、どうせ全員……アミやノルンを襲った奴らと同じ、ただ女をレイプすることしか頭にない、中身のイカれたクソみたいな冒険者)」



 新しく発生したばかりの、まだ名前も付けられていない未知の迷宮。


 そこへ潜って一攫千金の富や名声を掴み取ってやろうと、自慢の武器や防具を誇らしげに身に纏い、これからの栄光をおめでたい顔で想像しながら街の通りを闊歩する彼らの姿を見るだけで、私の胃の底からはドス黒い、どろりとした嫌悪の反吐が出そうだった。


 楽しそうに談笑する彼らの声が耳に届くたびに、あの日地下第七階層の冷たい床の上で耳にした、あの男たちの卑俗で下劣な笑い声がフラッシュバックして頭の中を狂わせそうになる。



 こいつらも、あいつらも、地上の全ての冒険者は全員中身が同じなのだ。


 誰もが綺麗な正義や高潔な理想のセリフを掲げながら、ひとたび誰の目も届かない暗闇の底に女と二人きりになれば、その防具の下に隠した醜く膨れ上がった欲望を剥き出しにして、容赦なく踏みにじるに決まっている。



 自分を助けた冒険者も、秩序を守るはずのギルドも衛兵も、誰も、何も信用できない。


 私の心は、もう地上の倫理や規約でどちらが正しいかなどと考えるよりも先に、ただただ目の前を歩くあいつらをこの世から一人残さず消し去りたいという復讐の衝動のままに、冷たく、そして狂気的に動いていたんだ。



 それからの私は、病院を完全に抜け出すと、この世界の色彩のすべてを沼のように貪り食う、あらゆる光の効かないダンジョンの闇の底にぽつんと一人で潜み続けた。


 おめでたい顔をしてこの未知の深淵へと足を踏み入れてくる冒険者たちの命を、一人、また一人と、ただ冷徹に、ゴミでも間引くかのように影から殺し続けた。




 触らなければ相手の心を読み取ることもできない、非戦闘用の心理魔法しか持たない私に、そんな地上の正規の冒険者を圧倒する力があるなんておかしい?




 そうですね……私一人だけなら、まともに武器を構えて正面からやり合たって、経験を積んだ正規の冒険者相手に勝てるわけがない。



 けれど、この色彩をすべて貪り食うダンジョンそのものが、私の胸の奥底の復讐の味方をしてくれたんだ。



 まず、高位の魔術師が放ったはずの光魔法すら、空間の不自然な重圧で飲み込むこの迷宮の底なしの暗闇。


 ほとんどの冒険者は、最初の第一歩でまずこの特有の異常現象に対処できず、五感を完全に奪われて暗黒の中でただ苦難に喘ぐことになる。松明の物理的な炎を掲げたところで、見えるのはほんの数メートル先の足元だけ。




 その唯一の松明をどうにかすれば、どうとでもできる。


 視界を奪われ、パニックを起こしている彼らの背後から、事前の構造や逃げ道を把握している私が闇に紛れて近づき、その首をナイフで掻っ切るなんて、私にとっては造作もないことだった。



 一人、また一人と、男たちの命を奪ってその死体を暗闇に沈めるたび、私の心は冷たく凪いでいった。



 けれど、そんなその場限りの辻斬りのような殺しだけでは、私の胸の真ん中の渇きが完全に癒えることはなかった。



 そして何より────この私しか知らない、このダンジョンが秘めている本当の恐ろしい構造トラップ。



 地下第七階層のとある、灰色の冷たい石作りの通路の壁。

 あの日、アミとノルンを物のように無惨に殺し、そして私のすべてを徹底的に蹂躙したあのクズ共の四人の身体を、抗う術なくまとめて不気味な暴風とともに飲み込んだ、あの巨大な『穴』。



 それは一見すれば、迷宮のどこにでもある、ただの無機質な石作りの壁でしかない。


 けれど、それはある一定の、隠された特殊な条件下においてのみ、まるで巨大な生きた怪物の胃袋のようにその牙を剥いて、無慈悲に暗黒の口を開ける。


 あの日から密かに、そして狂気的なまでの凄まじい執念深くさで、その灰色の壁が開くための『絶対の条件』をただ一人で誰もいない暗闇の中で探り続けていた。



 松明の光すら届かない暗黒の中で、一人で冷たい壁に張り付き、その石の表面を指先でなぞりながら、どうすればあの穴が開くのか、それだけを乾いた喉で毎日毎日考え続けた。


 床の赤土に爪を立てて血を滲ませ、割れた指先の痛みに耐えながら、私は狂ったようにその真実の規約を追い求めた。



 私を最高に特別で、最強の味方だと最期まで信じて死んでいった二人のためにも、このまま無能な嘘つきのままで終わるわけにはいかなかったから。



 あいつらを飲み込んだ穴の力をモノにできれば────

 その妄執だけが、私の壊れた心を暗闇の中で辛うじて繋ぎ止めていた。



 そして、私のこの細い指先がその壁の規約を完全に制御できるようになった、その日は唐突にやってきた。





第76話は、明日の【 12時40分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、明日の更新でお会いしましょう。

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