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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~真相編~
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第74話 回想⑨ 人間不信 ~ミカ視点~




 次に気が付いたとき、私はセイドウ街の白々として静まり返った病院のベッドの上に、ただ一人でぽつんと横たわっていた。


 天井を見つめても、自分の輪郭がまだ汚泥の中に沈んでいるかのように、世界のすべてが不快に歪んで見えた。


 どうやら、あの第七階層の暗い通路の床で、意識を失い、死んだように行き倒れていた私を、別のパーティーの冒険者が偶然見つけ、地上にあるこの街の医療機関まで運んでくれたらしい。



 私の衣服は応急処置用のシーツに着せ替えられていたけれど、肌に残るあの男たちの汗ばんだ手の感触や、首筋に浴びせられた下卑た鼻息の不快な熱は、おぞましい拒絶感となっていつまでも消えてはくれなかった。



 その後、私の意識が完全に戻ると同時に、私の安否を確かめるためという名目で、私はギルドの査察官や街の治安を守る衛兵たちから、あの誰も知らない闇の奥であの日何があったのかと、何度も何度も執拗に事情を聴かれた。



 一緒にいたパーティーメンバーはどこへ消えた、他に誰か姿はなかったのか。



 繰り返されるその形式的な質問のセリフに対して、けれど、私は彼らの前でただ頑なに唇を噛み締めて押し黙り、何も話さなかった。


 一言も、あの日起きた凄惨な凌辱の真実を口にはしなかった。

 心配そうな顔をして覗き込んでくる衛兵たちの瞳の奥、その全ての視線が、私を嘲笑う不純物にしか見えなかったからだ。



 あの時、私の目の前で親友たちの首を無慈悲に掻っ切ったあの男が、最後に満足げな溜息と共に笑いながら言い放った言葉が、解けない最悪の呪いのように、私の耳の奥底にいつまでも、いつまでもこびりついて離れなかった。




『冒険者なんて、ぶっちゃけ全員そういうの目当てだろ』




 その言葉の強烈な重圧に私の脳内は、目の前で優しく声をかけて私を助けてくれたはずの冒険者も、街の秩序を守るはずのギルド本部の大人たちも、誰も、何も信用することができなくなっていたんだ。


 こいつらも、あいつらも、私の話をきけば『自業自得だ』と笑うに決まっている。表向きは正義を気取りながら、その防具の服の下には、あの男たちと同じ醜く膨れ上がった欲望を隠し持っているに違いない。



 世界全体が、息の詰まるような吐き気のする汚物へと変わってしまっていた。



 それから私は、まだ満足に動かない鉛のように重い身体を無理やり動かして病院を密かに抜け出すと、自らのただ心を読み取るだけの心理魔法と、これまで培ってきた執念深い下調べの技術のすべてを使って、自分なりにあの私たちを地獄へ落とした四人について、セイドウの街を這い回るようにして調べ回った。


 大切なアミとノルンを物のように犯し、殺したあいつらを……


 そして、二人の亡骸すら無慈悲に奈落の底へと引きずり込んで奪い去っていったあの忌々しいダンジョンのすべてを、私はどうしても許せなかったからだ。



 けれど、血の滲むような調査の末に分かったのは、彼らが表向きは過去に一つも不祥事や規約違反を起こしていない、ギルドの書類上では非の打ち所がない『優秀なパーティー』として登録されているという、冷酷な社会の現実だけだった。


 彼らは街の人々からも信頼され、数々の難関依頼をこなしてきた、セイドウ街の誇りとも言える一流の強者たちだった。


 ただ一つだけ、彼らの輝かしい経歴の背後には、闇市場の酒場で黒い噂が密かに囁かれていた。


 頻繁に、ギルド本部に正規の手続きや無許可で、勝手に発生したばかりの未踏のダンジョン探索を行っては、不穏な噂。


 あの日、私たちが罠にハメられて絶叫を上げたあの最悪な夜も、まさにそうだったのだ……



 彼らはギルドの目も届かない「無許可」の特権を利用して、地上の誰も見ていない、色彩をすべて貪り食うあの絶対の闇の中で、私たちの命も、冒険者としての眩しい夢も、その身体のすべての尊厳を、事故と隠して奪ったのだ。



 どれだけ調べても、あいつらの罪を暴く手段なんてどこにも存在しなかった。





 ---





 やがて、その男三人、そしてあの女の一行は、正式にギルドの書類上で『行方不明』の扱いとなった。



 あの穴に飲み込まれたと知る者は誰もいない。



 優秀と謳われたあの凄腕の強者たちが、こぞって一瞬で姿を消してしまった、新しく発生したばかりの底知れない不気味なダンジョン。



 その謎めいた未知の噂をどこからか聞きつけた、さらなる富や、力や、あるいは歪んだ名声を求める大勢の冒険者たちが、吸い寄せられるようにしてこのセイドウの街へと、次から次へと集まってくる。



 彼らは誰もが、まだ誰も見届けていないあの光の効かない闇の底を、自分の都合のいい名声の踏み台にしてやろうと、おめでたい笑顔を浮かべて、重厚な街の門を潜り抜けていく。




 その歩く彼らの背中を病院の影からじっと見つめながら、私の心の中には、もう二度と這い上がれない絶対の絶望の澱が、冷たく、重く、沈み込んでいく────





第75話は、【 17時10分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、次の更新でお会いしましょう。

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