第69話 回想⑤ ゲームオーバー ~ミカ視点~
「アミ!!! ノルン!!!」
私は死に物狂いで、自分の喉がちぎれて血が噴き出すのではないかと思うほどの声を上げて、冷たい床の上で必死に叫んだ。
私の大切な、たった二人の大好きな幼馴染。その身体が、男たちの粗暴な手のひらによって生々しく蹂ンされていくその光景を、一秒だって視界に入れたくはなかった。
しかし、上から私の細い身体を完全に縛り付ける、男の尋常じゃない怪力という名の拘束の暴力によって、私の体は冷たい石床に縫い付けられたかのようにピクリとも動かない。
動かそうとすればするほど、手首にギリギリと激痛が走り、地面にただ顔を強く擦り付けられるだけだった。
「ほらほら、早くしないとお友達にこの先何が起こるか分かっているのかしら? そんなに何度も名前を叫ぶ余裕があるなら、早くその便利な魔法とやらで私を驚かせてみせてよ」
冷徹な女の声が、この逃げ場のない絶望的な状況を心底楽しそうに嘲笑うように、松明の光が揺れる暗闇に重く響いた。
彼女の傍らに控える男たちは、下劣な笑みを深く浮かべて、衣服を剥ぎ取られて泣き叫ぶ二人をさらに奈落の底、取り返しのつかない終焉へと容赦なく追い詰めていく。
「メレナ? うそでしょ……? うそだって言ってよ……! なんで、なんで魔法をつかってくれないの……っ!? ねえ、いつもみたいに先読みしてよ、助けてよぉ!!!」
アミとノルンは、目の前に迫る男たちの分厚い肉体の威圧感と、肌を直接触られる逃げ場のない恐怖に、その顔をグシャグシャに完全に歪めていた。
その涙に濡れた親友の瞳が、真っ正面から私の無様な姿を捉えて、激しく揺れ動く。
助けなければならない、私が今まで見栄を張ってついてきた、あの最低な嘘のせいで。大好きな二人がこんな最悪な目に遭うなんて、そんなの絶対に嫌だ────私は死に物狂いで全身の筋肉を強張らせて、背中の男の重圧に抗った。
自分の内側にある魔力のすべてを限界まで、それこそ魂を削り落とすかのように激しく振り絞り、この最悪な肉体の拘束を力任せに解こうとするが、指先一つ、髪の毛一本すら動かすことができない。
魔力はただ虚空へと虚しく霧散していくだけで、私の五感には絶望的なまでの無力感だけが、冷たくのしかかってくる。
「おいおい、そんなに無駄に暴れるなよ? 力じゃお前ら小娘が俺たちに勝てないぞ。ご自慢の魔法もここでは全くの無力だな、ほら、もっと俺を楽しませろよ」
私を上から完全に押さえつけている男の一人が、私の耳元で冷酷にそう言い放ち、私の肌をかすめるように下卑た荒い鼻息を直に吹きかけてくる。
男の汗ばんだ手のひらが、私の生肌へと触れてくる……その強烈な生理的拒絶感がその粗暴な指先が私の剥き出しの肌を這い回るたび、汚物に変えられていくような強烈な嫌悪感が、胃の底からせり上がってくる。
いやだ!触らないで!!!
お願いだから、触らないで────!!!
声にならない叫びが喉の奥で虚しく破裂し、涙と鼻水にまみれた視界のすぐ真横で、アミが、ノルンが、男たちの獣のような怪力に押し潰されていく。
二人の防具の金属が床に擦れる嫌な音と、男たちのハァハァという生々しい荒い息遣いが、私のすぐ耳元で重なり合って響いていた。
「メレナ……信じて、たのに……っ、私たちのこと、ずっと、ずっと騙してたの……っ!!! いやあああっ、来ないでっ、誰か、誰か助けてエェェェッッ!!!!」
最後の一線を無惨に踏み越えようとする、取り返しのつかない最悪な運命を前にして、二人は涙に濡れた瞳で、私を最後の希望として懇願するように、そして同時に、自らを裏切り続けていた私に対する激しい不信と絶望をその瞳に宿して真っ正面から見つめてきた。
その瞳の光が、私のすべてだった温かな過去の記憶を、一瞬にして冷たく焼き切っていく。
しかし、直接相手の肌を触らなければ魔力の流れを読み取ることすらできない、ただの非戦闘用の心理魔法しか持たない今の私には。
数メートル離れた場所で組み伏せられている二人を救う手段なんて、本当に、何一つとしてなす術がなかったのだ。
親友たちの肌を引き裂き、弄る男たちの粗暴な手の生々しい熱と、衣服の擦れるおぞましい音。
そして、私へと向けられた冷たい疑惑の視線が、私の心を完膚なきまでに突き刺して、粉々に破壊していく。
私がついた、あのたった一つの嘘の代償が、これほどまでに最悪な地獄となって親友たちを蹂躙していく。
その圧倒的な現実の前に、私の精神のライフゲージは完全に空っぽになって崩壊した。
「ゲームオーバーよ」
松明を掲げた女が、冷酷に終焉を告げた。
その言葉の響きと共に、アミとノルンの絶望に満ちた最後の叫び声が、世界のすべての色彩を貪り食う暗く深いダンジョン内へと、空しく、そしていつまでも重厚に、私の脳裏へと鳴り響いたのだった。
第70話は、明日の【 12時40分 】に投稿いたします。
もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。
それでは、明日の更新でお会いしましょう。




