第68話 回想④ ゲームスタート ~ミカ視点~
「う……そ……? メレナ、 あいつの言ってること、何かの間違いだよね……?」
「ミ……カ…………? 嘘、だよね……?」
私のすぐ近くで、私と同じように男たちに荒々しく組み伏せられ、衣服をボロボロに引き裂かれていたアミとノインの二人が、今まで一度も見たこともないような、激しい不信と怯えの混じった懐疑の目を私へと向けてくる。
男の重い体躯に押さえつけられたまま、顔を擦り付け、必死に私を見つめてくる二人のその瞳の光。
それはあまりにも残酷な視線だった。
「ち、違う!! わ、私は……そんな、騙すつもりなんて……!!」
私は涙と鼻水で顔をグシャグシャに濡らしながら、馬乗りになっている男の下で、掠れた声を必死に絞り出すことしかできなかった。
違う、私はただ、二人に嫌われるのが怖かっただけなんだ、置いていかれるのが怖くて、並んで歩きたくて、ただ見栄を張って嘘を重ねていただけなんだ────そんな醜い言い訳の言葉は、パニックで白くなった頭の奥に張り付いたまま、どうしても喉の奥から外へと出てきてはくれない。
「あら、違うの? つまり貴女のその魔法は本当に特別に遠隔で発動できると、まだそう言い張りたいわけね……いいわ、じゃあこうしましょう」
松明の橙色の不気味な炎を掲げたあの女は、私の必死の言い訳を冷酷な笑みで遮ると、アミとノルンの身体の上に跨っている男二人に、顎でクイと冷たい合図を送った。
そのすべてを見下すような、あまりにも軽々しい合図。
すると、その指示を受けた男たちは何のためらいもなく、ボロボロに引き裂かれて剥き出しになっていたアミとノルンの白肌へ、さらに乱暴にその汚い手を伸ばした。
「「きゃあああああ!!!」」
闇の中に、二人の喉をかきむしるような悲鳴が激しく響き渡る。
逃げ場のない状態で、アミもノルンも、涙と汗で顔を汚しながら必死に身を捩って暴れるけれど、男たちの分厚い大人の怪力に完全に上から抑え込まれて、びくともしない。
男たちの汗ばんだ手が、拒絶する二人の生肌を強引に弄り回す不快な皮膚の擦れる音が、生々しく、そして悍ましく暗闇に木霊する。
「アミ!! ノルン!!」
私も、親友たちに迫る最悪の地獄を目の前にして、頭が真っ白になりながら無我夢中で暴れた。
馬乗りになった男の嫌な体温と圧倒的な圧迫感に押さえつけられているこの自分の身体を、死に物狂いで動かそうとする。
男の荒い息が顔に直にかかり、その拒絶感に吐き気がせり上がってくるのを必死に堪えながら、指先で掻き毟る。
けれど、私の両手首を床の土へギリギリと強く押し潰し、背中に重厚にのしかかっている男の身体は、ピクリとも動かない。
爪が割れて、土の中にじわりと血が滲んでいくのを感じることしか、今の私にはできなかった。
どれだけ必死に身をよじっても、大人の男の圧倒的な怪力の前には、私の抵抗など無意味だった。
自分の無力さが、世界の不条理な現実となって、冷たくのしかかってくる。
「ゲームよ……貴女の言っているその特別な力が本物なら、今すぐそこからお友達が犯されるのを防ぐことができるはずだわ……貴女の、その『特別な力』が、本物ならね」
「え……?」
女から放たれたその言葉の意味を、私の脳は一瞬、理解することを拒絶した。
心理魔法は、心を読み取るだけの魔法だ。肌を直接触らなければ、発動することすらできない、戦う力なんて何一つない、ただの非戦闘魔法。
そんな私に、この状況をどうにかしろと、女は歪んだ愉樹の笑みを浮かべて言い放っているのだ。
「はい、ゲームスタート」
女が感情を排した声で冷酷に開始を告げた、まさにその最悪な瞬間だった。
馬乗りになっていた男二人は、下卑た笑みを浮かべながら、獣のような粗暴な手つきでアミとノルンの無防備な身体を、容赦なく激しく弄び始めた。
「いや、いやああかっ! やめてっ、さわらないで……っ! ノイン! 誰か、誰か助けてえぇぇぇっ!!!」
アミの防具の金属が床に擦れる嫌な音と共に、彼女の張り裂けるような絶叫が闇を震わせる。
男の手が自分の肌を汚していくその恐怖に、アミは顔をグシャグシャに濡らして激しく暴れた。
「嘘、嘘でしょ……メレナっ、お願い、お願いだから何とかして……っ! 痛いっ、嫌だよぉ……メレナァッ!!!」
ノルンの喉をかきむしるような悲痛な悲鳴が、私の耳元に容赦なく突き刺さる。
私を完璧な強者だと、自分たちを窮地から救ってくれる万能な心理魔法の使い手だと信じ切っている、その必死な、けれど同時に激しい不信へと変わりかけている瞳の熱。
「アミ!! ノルン!!」
私は狂ったように親友たちの名前を叫びながら、何度も何度も自分の身体を動かそうと床に爪を立てた。
今すぐその場へ駆け寄って、親友たちの生肌を弄るその汚い手を力任せに引き剥がしたい、その身体を抱きしめて守りたい。
けれど、男に背中を押さえつけられている私は、指先一つ、髪の毛一根すら動かすことさえ許されない。
ただ、自分の手の届くほどのすぐ間近で……
自分が今まで二人に置いていかれたくなくてついてきた、あの最低で惨めな嘘の代償として。
大切な親友たちが無惨に陵辱されていく最悪の光景を、私は冷たい床に顔を擦り付けられたまま────
ただ涙を流して、その地獄のすべてを、網膜に生々しく焼き付けながら見ていることしかできなかった。
第69話は、【 17時10分 】に投稿いたします。
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それでは、次の更新でお会いしましょう。




