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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~探索編~
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第50話 第1層

ついに50話!!




「……中々ひんやりとした、普通の薄暗いダンジョンだな。もっと四方に血の匂いや死体の破片がそこら中に漂っている、殺伐とした最悪のダンジョンだと思って楽しみ───ゴホン、警戒していたんだが」


「何が楽しみだ、さっきギルド長室でオルテも、大真面目な顔して言っていただろう? これまでに消息不明になった何十もの連中の血痕はおろか、魔術的な魔力の残滓すら床に一つも残っていないと……ならば、現場にそんな物騒な生臭い匂いすら一滴も残っていないのも至極妥当な話だ」


「それもそうか。さすがは俺の優秀な副リーダーだな、お前の言う通りだ」



 アロンの頭の上に浮かんだ純粋な疑問を、隣を歩くリンカが、いつもの気だるげな声で淡々とその場ですんなりと解消していく。



「……でも、アロンさん、リンカさん。それにしても、いくら何でもこの地下通路の全体、あまりにも綺麗に片付き過ぎていませんか? なんというか……ここに入った瞬間から、ダンジョン特有のあの嫌な生物臭が全くしないというか……」



 後ろを付いてくるミカが口にしたその素直な疑問の言葉は鋭い着眼点だった。


 そもそも『ダンジョン』という場所は、血に飢えた狂暴な魔物たちが日々を過ごす生々しい棲家なのだ。


 武器を携えた冒険者たちはその縄張りに足を踏み込めば、当然のように暗闇から猛烈な襲撃をされ、冒険者たちはそれに対して血を飛ばして激しく反撃し、結果として魔物はその場で無惨に討伐される。


 討伐された魔物の巨大な死体というものは、高く売れる希少な一部の魔導素材だけを毟り取られた後、残りの不純物の肉塊はその場に生温かくそのまま放置されるのが鉄則だ。



 月に一度の周期で、冒険者ギルドが直属の汚れ仕事専門の『掃除屋』を内部へ大量に送り込んで大がかりな清掃を行うが───

 それでも、何百年もの間に染み付いた腐肉や体液のドス黒い臭いだけは、ダンジョン全体の岩肌に深くこびりつき、完全には取れることはない。



 それこそが、冒険者が等しく顔をしかめる“ダンジョン特有の不快な臭い”となる。

 この生理的にどうしても受け付けない最悪な悪臭のせいで、才能の芽を咲かせる前に冒険者の道を無念に諦める者が、毎年それこそいるほどなのだ。




 だが────




 いま三人が歩いているこの『無明の層』の内部には、その冒険者の鼻を破壊するはずの生活臭が、どこを探しても一微塵も存在していなかった。


 だからと言って、内部が無人の空き家というわけでは決してない。

 魔物は確かに出現している。

 現に、今この瞬間も、アロンたちの新鮮な人間の肉の匂いに釣られて、暗闇の奥から一直線に奇声を上げて襲いかかってくる多脚の魔物たちがいる。


 だが、アロンはそれらの眼前へと迫る嫌悪の群れを、進む歩く速度すら一ミリも落とすことなく、ただ指先をパチンと軽く鳴らす、ただそれだけで消滅していく。



 不可視の斬撃によって、どれも悲鳴を上げる間すら与えられず、一瞬にして爆ぜて跡形もなく虚空へ消し飛ぶ。

 その直後の瑞々しい魔物の死体からは、確かに生々しい“魔物本来の獣臭”が周囲の空気に微かに漂う。




 だが────




 何十年、何百年と床に放置され、岩肌の奥底までドス黒く熟成されて染みついたはずの、あの歴史ある“ダンジョン固有の蓄積臭”だけが、不自然なほど綺麗に存在しないのだ。



「……やはり変だな」



 アロンが、周囲の乾いた岩肌を訝しげに見つめながら、ぼそりと低く呟く。

 リンカもアロンの少し後ろを静かに続き、周囲のガランとした空間をじっくりと見渡しながら、静かに、けれど冷徹に言った。



「ああ、お前が刻んだ魔物の臭いはするが、この迷宮の全体に、歴史として“積み重なったはずの暗い生活臭”がどこにも残されていない。これじゃあまるで──私たちの先回りをして、誰かが毎日掃除しているみたいじゃないか」



 そのリンカの冷酷なプロファイルの言葉を聞いた瞬間、ミカは疑問に思う。



「……毎日掃除をして回る魔物なんて……そんなの、これまでの古い魔導書の歴史でも一度も聞いたことないです……けど」


「深く考える必要もないんじゃないか?単純に、私たちが潜る直前のタイミングで、ギルドの掃除屋の部隊が最近ここへ来ただけってこともある」


「いや、もしそんな大規模な清掃部隊を直前に中へ送り込んでいるなら、あのギルド長が事前に俺たちへ言わない筈がない……にも関わらず、極秘資料にその記載が一切無かったということは……この清潔さこそが、この『無明の層』というダンジョンが最初から持っている、異常である可能性が極めて高いな」



 アロンは淡々と分析しながら歩を進める。

 目の前にどこまでも続く地下通路は不気味なほどに広く、足を乗せる土の足場も驚くほどに完全安定している。


 左右の岩壁にはジメジメとした不快な苔の緑もなく、鼻の奥を刺すような湿気の水分も決定的に少ない。



 それはダンジョンなどとは到底思えない、まるで“昨日の夜に、誰かの手によって出来たばかり”のような、歪なまでの完璧な清潔さに満ち溢れていた。





第51話は、明日の【 12時40分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、明日の更新でお会いしましょう。

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