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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~探索編~
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第46話 無明の層、探索前会議②




「無明の層について話そう」



 オルテの口から放たれたその重厚な言葉は、会議室を変える。



「……話を聞く前に、さっきから長机の中央にある、その精巧な立体模型は一体何なんだ?」


「ん? これか……わざわざ説明されずともだいたい察しがつくだろう?」


「内部構造か」



 リンカが温かい紅茶のカップを弄びながら、抑揚のない声で淡々と呟く。


 広い机の中央に置かれたその巨大な模型は、冷たい灰色の石を幾重にも積み上げたような、全八段の不気味な塔の形状をしていた。


 階層ごとに微妙に部屋の広さや形が異なり、ところどころの岩壁には、肉眼では見落とすような小さな隠し穴や複雑な迷路の通路が精巧に彫り込まれている。


 それはまるで、荒野の底にある“本物の奈落の迷宫”を、ギルドの魔導技術でそのまま寸分の狂いもなく縮小したかのような、圧倒的な完成度の精巧さだった。



「これを見れば、だいたい構造が分かる通り、無明の層は地下全8階層の深さで構成されている。我がギルドの調査チームが命懸けで各階層毎に出現する魔物の生態をまとめた極秘資料がこちらだ」



 オルテは長机の上を滑らせるように、ずっしりと重い紙の資料の束をアロンたちの手元へと渡す。


 配られた古い羊皮紙には、出現する凶悪な魔物の正確な座標場所・時間帯・特殊な天候条件に至るまで、驚くほど細かくびっしりと記されていた。



 ────以下、ギルド極秘資料の内容を一部抜粋。




 オクトスパイダー

 (通常の蜘蛛の魔物と異なり、蠢く脚が8本ではなく、8対=計16本という異常な多脚で構成される嫌悪の魔物)

 出現階層:地下第2階層

 出現場所:第2階層へ下りる階段を降りた直後の道を、左に真っ直ぐ進んだ先の暗い広場

 出現時間:陽の昇る朝から、西に沈む夕方にかけての活動期

 追加事項:ダンジョン内部に雨水が染み込む、特殊な雨天時のみ限定で出現

 こういう、死線に挑む冒険者たちが泣いて喜ぶ貴重な生態情報を隅々まで集めて売っているのが、いわゆるダンジョンマップという代物だ。


 ちなみに、このようなダンジョンマップはギルド本館横の売店コーナーにて絶賛販売中で!!




「見たところ、出現する魔物の種類自体は普通の他のダンジョンと大差ないように見えるが……不審な階層とかは無いのか?」


「そんな便利な怪しい場所が最初から分かっているなら、この俺がとっくに組織の総力を挙げて対処している……どこを調べても何の変化も無いから、俺たちギルドの手が完全に止まって手詰まり状態なんだよ」



 アロンの質問に対して、オルテは心底呆れ果てたように広い肩をがっくりと落とす。



「じゃあ、これまでに消息不明になった何十ものパーティーの痕跡はどうなんだ? 床に飛び散った血痕とか、噛み砕かれた肉片とか、冒険者たちが愛用していたはずの金属の所持品とかが、暗闇に落ちているだろう?」


「それが、床の埃一つに至るまで、全くの無し(ゼロ)だ……念のために残留魔力の痕跡も総がかりで確認したが、既にダンジョン自体の持つ膨大な魔力と完全に一体化してしまっていて、現代の技術では解析不可能な状況だ」


「なるほど、つまり完全な手がかりなしか」


「情報無しか……わざわざ呼ぶ意味無かったんじゃないか?」



 リンカの容赦のない冷淡な言葉にオルテはムッと額に青筋を立てて、鋭い眉を吊り上げた。



「一応、睨んでいる場所の検討はすでについてあるんだ」



 オルテはそう吐き捨てながら、長机の真ん中にあるダンジョン模型の、下から数えて“第七階層”の岩壁の部分を無骨な指先で真っ直ぐに指差す。



 指を置いた、まさにその瞬間だった───



 模型の上部の虚空へと、青白い魔力のホログラム映像が鮮烈に出現し、オルテが指差したその壁の箇所だけが、拡大されて三人の眼前に立体的に映し出された。


 しかし光の中に立体投影されたその怪しい場所は、しかし、誰がどう見てもただの何の変化もない頑固な岩壁だった。

 不自然な凹凸もなく、経年劣化のひび割れもなく、何の変哲もないただの灰色の石の壁。



「……ただの壁だな。これがどうしたんだ?」


「この映像からは素人には判断できんだろうが……実は、この壁の周囲だけ、一日のうちで魔力の流れるベクトルがおかしくなる、奇妙なタイミングが確かに存在するのだよ」


「ほーう、魔力のベクトルのバグか」



 オルテが長机の魔導スイッチをパチンと叩くと、そのホログラムの映像のなかに、分かりやすく魔力の複雑な流れを模した赤と青の矢印の光が現れて蠢きだす。



「並の経験と凡百の観察力を持つそこらの有能な冒険者じゃあ、生涯をかけてもまず見つけることすらできないほどの、極めて僅かな違和感の隙間だ」


「なるほど……セイドウのトップであるお前自身はあれだが、中々に優秀な眼を持つ部下がお前の下には揃っているのだな」


「その僅かな違和感を見つけ出したのは、部下じゃなくてこの俺だ!!!」



 リンカのどこまでも淡々とした上から目線の言葉に、オルテはガシャンと激しく長机を叩いて手柄を主張する。



「お前が見つけたのか、それは失礼したな。で……実際のところ、どうなんだ?」


「うん? どうなんだとは、何がだ?」


「いや……そこまで明確に怪しい場所の目星がついているのなら、当然何かしらの突入アクションをしたんだろう? その壁の奥を調べて、一体何があったんだ?」



 リンカの放ったその言葉は至って常識的、かつ当然すぎる質問だった。









































「…………」



 しかし────質問を真っ正面から喰らったオルテは、なぜか急に気まずそうに視線を泳がせ、ピタリと口を閉ざして黙り込んだ。





第47話は、明日の【 12時40分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、明日の更新でお会いしましょう。

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