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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~探索編~
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第45話 無明の層、探索前会議①




 翌日の朝、午前9時……


 静まり返ったセイドウの冒険者ギルド本部の大きな門の前には、朝の冷たい陽光を浴びて、3人の影がまっすぐに長く並んでいた。



 リーダーのアロン。

 その隣に気だるげにぴったりと寄り添う、副リーダーのリンカ。

 そして────二人の後ろにミカ。



 朝特有の肌を刺すような冷たい空気の中、三人はそれ以上無駄な言葉を交わすことなく、無言のまま重厚なギルドの木製扉を押し開けた。



「お待ちしておりました。ギルド長が奥で待っておりますので、どうぞこちらへ」



 手続き窓口にいた受付嬢は三人の姿を見るなり、深く頭を下げ、迷いのない迅速な足取りで本部のバックヤードの奥へと三人を行儀よく案内する。


 だが、今回通されたのは、昨日の小さな応接室とは違う部屋。

 室内は異様なほどに広く、冷たい。



 長机の上には、夜を徹して集められた形跡のある大量の羊皮紙の極秘資料。

 そして部屋の中央には───魔力の残熱を放つ、未知の大穴の構造を精密に再現した、巨大な模型のような魔導立体物が不気味に置かれている。



 ここは情報管理の最深部、ギルド本部最高会議室だった。



「ついに来たな、この無鉄砲な大馬鹿共が……よーし、よくぞ逃げずに来やがったな!」



 三人が足を踏み入れた瞬間、長机の奥に座っていたオルテが、椅子を激しく鳴らして勢いよく上体を立ち上げる。

 徹夜の割には昨日よりも血色はいくらか良さそうに見えたが、その精悍な目の奥底には、まだ重苦しい組織の疲労の残熱が濃く残されていた。



「……一応、組織の最高責任者として念のために聞くが、お前ら昨日の夜……ダンジョンに勝手に突入してないよな?」


「当然だ。そんな勝手な真似をして、許可が無効になってしまっては台無しだからね」


「よーし! よし! 約束を守ったか、ならそれで良い!! お前らがここに立っているだけで、まずは及第点だ!」



 オルテは心底ホッとしたように胸を撫で下ろし────

 次の瞬間、アロンの背後ろに立っていたミカの顔を真っ正面から捉えた瞬間、その全身の筋肉を硬直させてピタリと固まった。



「……おい、なんだ、その見慣れない小娘は? 一般人は立ち入り禁止だぞ」


「彼女か? 紹介してやろう、彼女の名前はミカだ。昨日、パーティーに入った新メンバーだ」









































「は?…………はぁぁぁぁぁ!? お前ッ……この状況で、何事かと思えば勝手に死人を増やすような最悪な真似をしてるんじゃねぇよ!!!」


「死人だなんて、なぜ最初から俺たちが全滅する前提で話を進めるんだ。俺たちが潜るんだ、一人として死ぬわけがないだろう」


「そうやって自分の強さを見誤った連中を、この俺は一年間で何十も目の前で見届けてきたんだって言ってんだろーが!!! おい、君! ミカと言ったか! 悪いことは言わないから、自分の命が惜しいなら今すぐコイツの狂ったパーティーを抜けろ!!」



 オルテは激しい怒りのままバンバンと音を立てて木製の長机を叩き、ミカに向かって喉を震わせて叫んだ。

 だが、その彼の大きな怒鳴り声の輪郭には、昨日のような取り乱した感情の爆発ではなく────

 目の前の一人の若い命を、本気で心の底から救おうとする“本物の心配”の熱量が、痛いほどに滲み出ていた。



「いや、オルテさん。せっかく言ってくださって申し訳ありませんが、私は絶対にこのパーティーを抜けません」



 ミカは、ギルド長の凄まじい威圧の前でも、今度は一歩も後ろへ引くことはしなかった。

 アロンを真っ正面から見つめるその琥珀色の瞳は、昨日のディナーの時よりもさらに強く、何者にも折られないガチガチの決意の揺らぎが宿っていた。



「私の身の上のことをそこまで真剣に心配してくれるのは、冒険者として本当にありがたいのですが……私には、どんな死線があろうと、あの闇の奥へ行かなくちゃいけない絶対の理由があるんです」



 オルテは静まり返った会議室の中で、しばらくの間……言葉を失ってミカのその執念の顔をじっと見つめ────

 やがて、自分の負けを認めるように、深く、長いため息を吐き出した。



「…………そうか、お前もあのダンジョンの呪縛に囚われた哀れな人間の一人か。なら、俺はもうこれ以上は何も言わん……はぁ、本当にどいつもこいつも馬鹿ばかりだ……」



 そのポツリと漏れ出た声は、彼女を突き放す冷たい諦めなどでは決してなく、一人の人間の命懸けの覚悟を、同じ冒険者として正面から受け入れた男の、重い声音だった。



 そして────オルテは長机の前にどっしりと立ち直り、並ぶ三人へと冷徹な視線を見渡す。



 その深く皺の刻まれた表情は、先ほどまでアロンたちの理不尽さに怒鳴り散らしていた顔では、もう断じてなかった。

 セイドウの街のすべての治安と命を預かる、最高権力者(ギルド長)としての冷徹な鉄の顔だった。


 窓から差し込む朝の陽光すらも遮るように、会議室の全体が静かにギチギチと音を立てて張り詰めていく。




 そして───オルテは組んでいた腕を離した。




「……では、お喋りはここまでにして、改めて──」



 オルテは長机の中央に置かれた、魔力を放つ巨大な立体模型の上に無骨な手を置き、低く冷たい言葉を告げた。









































「『無明の層』ついて話そう」



 会議室の凍りついた空気を激変させた。





第46話は、【 17時10分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、次の更新でお会いしましょう。

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