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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~逆オファー編~
50/100

閑話④ 至近距離の間接キス ~リンカ視点~

レストランでのリンカの行動…それは終わったかに見えたが…?




 セイドウの宿屋の一室。

 窓の外はすっかり帳が下り、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っている。

 テーブルの上には、宿屋のルームサービスの特製ケーキが置かれていた。

 

 それを食べるため、アロンが椅子に腰を下ろした瞬間……

 私は音もなくその膝の上へと滑り込んだ。



「……リンカ、お前。なにをやってるんだ?」


「椅子を持ってくるのが面倒だったんだ。ここに座るのが一番効率がいい……文句があるか?」


「いや、別にないが……お前がそう言うなら、まあいいだろう」



 呆気なく許可が出る……相変わらず、私の行動原理を疑わない男だ。

 レストランではあの女────ミカのせいで台無しになったが、今は二人きり。

 私は右手でフォークを手に取った。



「ほれ、口を開けろ……あーん」



 左腕をアロンの首に回し、バランスを取るという名目でしっかりと引き寄せる。

 身体を捻ってアロンの方を向く際、わざとらしく、それでいて自然に、自慢の胸をアロンに押し付けた。



「……ん、あーん」



 アロンは疑いもせず、差し出されたケーキを一口で食べた。



「どうだ?」


「あぁ、中々美味いな」



 返ってきたのは、純粋なケーキの感想だけ。

 あれだけ密着し、体温を感じさせているというのに、こいつの脳内はどうなっているんだ。


 やはり、これくらいでは動じないか…

 少しだけムッとした私は、次の作戦に移ることにした。



「……今度は、お前が食べさせてくれ……ほら」



 私はそう告げると、アロンの目の前でゆっくりと口を開いた。

 ただ待つのではない…紅を差したかのような舌先を、艶めかしく、誘うように動かしてみせる。



「お前のフォークはどうした?」


「……あいにく、一本しか持ってきていないんだ。私はこれで構わないぞ」



 そう言ってアロンにフォークを預け、私はアロンの正面に向き直った。両腕をその首に回し、逃げ場を塞ぐようにがっちりとホールドする。

 だが、アロンは相変わらずの無表情でケーキを一口サイズに切り分け、私の口元へと運んできた。



「ほら、食え」


「いただこう」



 私はケーキを受け取ると同時に、確信犯的にそのフォークを舌先で艶めかしく舐めとった。


 金属の冷たさと、アロンが先ほどまで使っていたという背徳感。

 じっと熱い視線を送り、アロンの反応を待つ……

 流石の変物でも、今の行為の意味くらいは理解するはずだ。



「リンカ……お前……」



 重々しく開かれたアロンの口。私は勝ち誇ったような笑みを浮かべ、その言葉を待った。



「……ふふふ。なんだ?」




 やっと、その気になったか────?




「フォークを舐める行為は『卑しい』『品がない』とされる典型的なNG行動だから、辞めておいた方がいいぞ? マナーとして」




 ……絶句。




 顔が引きつるのが自分でも分かった。

 羞恥よりも先に、この男の情緒の欠落っぷりに、一周回って眩暈すら覚える。


 ああ、そうだった…これがアロンという男だった…

 私が内心で毒づいた、その直後。



「いや、よくよく考えたら、この態勢でマナーもクソもないな……なら、俺も一度やってみるか」


「……は? 何言って――」



 言葉が続く前に、アロンは自分の口にケーキを運んだ、そして………


 私と同じように、いや、それ以上に無造作に。

 私の唾液が残っているはずの、そのフォークを。

 アロンは、ゆっくりと舐めとった。



「……ん。……うん、悪くないな」


「な、……なな……お、お、お、お前っ!!!」



 さっき自分がやった行為…

 しかし、それをこの至近距離で、あんなに淡々と、当たり前のように返されるなんて。

 一気に顔から火が出た…心臓がうるさすぎて、もうこの場に留まっていられない。



 私は弾かれたようにアロンの膝から飛び降りると、そのままベッドへダイブした。



「もう寝る! 話しかけるな!」



 布団を頭から被り、猛烈に熱い顔を隠す。

 暗闇の中で、自分の鼓動だけが、さっきの金属の触感と共に激しく響き続けていた。





次回更新は【 17時10分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、次の更新でお会いしましょう。

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