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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~逆オファー編~
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第34話 プライドと副リーダー




 温かい出来立ての料理が、テーブルの上へと手際よく運ばれてくる。



  前菜スープ『残照の琥珀スープ(サンセット・アンバー・スープ)』。



 セイドウの肥沃なオアシスで収穫される高糖度の“黄金タマネギ”を、形がなくなるまでじっくりと丸一日煮込んだ極上のコンソメスープだ。


 味の決め手は、西の荒野で採れる希少な“陽だまり香草ソーラ・ハーブ”。

 これを仕上げにひと煮立ちさせることで、スープ全体が夕暮れの陽光のような美しい琥珀色へと変化する。


 器が運ばれてきた瞬間、焦がしバターの濃厚なコクと、香草のどこか鼻をくすぐる爽やかな香りが立ち上り、一瞬で食欲を支配する。


 スプーンを口に運べば、とろけるようなタマネギの圧倒的な甘みが広がり、

 じわじわと体の中から温まる、旅の疲れを優しく癒すような優しい味わい。

 湯気と共に立ち上る香ばしい特製スープの芳醇な香りが、冒険者の鋭い思考を心地よく停止させる一品だ。

 


「……で、アロン。さっきお前が言いかけた、考えうる可能性のもう一つというのはいったい何だ?」



 リンカが手元の銀のスプーンをスープの中で軽く回し、気だるげに問いかける。

 アロンは琥珀色の酒の入ったグラスを指先でゆったりと揺らしながら、暗闇を睨むような目で静かに言った。



「根本的に問題があるのは、実は“無明の層というダンジョンそのものではない”ということだ」


「ほう? その言葉の意図は?」


「仮に、ギルド側の敷いた何度も及ぶ念入りな調査報告がすべて正しいのだとしたら───中に入った者が消息不明になっている真の原因は、ダンジョンにあるのではなく、潜入している“冒険者側”の側にある可能性が極めて高い」



 アロンの鋭い目が、獲物を捉えるようにさらに細くなる。



「つまり、あの光の届かない闇の層の奥で、“冒険者同士が互いに騙し合い、殺し合っている”ということか……それなら、ギルド調査チームが誰の手にもかからず無事で地上へ帰還している理由も、すべて完璧に説明がつくな」


 

 リンカはアロンの冷徹な指摘を聞き、ワイングラスを置いて静かに頷く。



「だが、その仮説を肯定したとしても、次に問題になるのは犯行の“動機”だ。ただの無差別快楽殺人者と言えばそれまでだが……」 


「犯行の動機なんてものは、他人が頭の中で考え始めたらそれこそキリがないさ……この世にいる人間の数だけ、歪んだ理由は存在する……時間の無駄というものだぞ、アロン」


「……まぁな。お前の言う通りだ」



 アロンは肩をひとつ小さくすくめて、言葉を続ける。



「とはいえ、この程度の予測の仮説は、ギルド長のオルテも裏ですでに百も承知で考えているはずだ。その詳しい裏の事情の話は、明日の朝になれば、彼らの口から直接聞けるだろう」



 リンカはアロンの顔へちらりと皮肉交じりな笑みを浮かべながら目線を向ける。



「なんだ? さっきギルドでは、『事前に答えを見るようなカンニング紛いの卑怯なことはしたくないな』とか言ってなかったか?」



 それを聞いてアロンも口角を上げる……そしてリンカの瞳を真っ正面から見据えて言った。



「あぁ、俺一人で潜るだけの冒険なら、まぁプライドを優先してそう言って手ぶらで飛び出していただろうな……だが、お前がいるからな」


「…………?」




「俺のちっぽけなプライドと、俺の副リーダーであるお前の絶対的な身の安全───そのどちらかを天秤にかけるべきかと言われれば……俺は、迷わずお前を最優先する」









































「…………な、なかなか良い心がけじゃないか」



 アロンのそのあまりにも無自覚で真っ直ぐな言葉に対して、リンカの口から出た聲音には、いつもの相変わらず冷淡で感情の起伏はない。


 だが───組まれた細い膝の震え、かすかに朱に染まる白磁の耳たぶ、そしてアロンを見つめる潤んだ熱い瞳は、その雰囲気は、その表情のすべては、完全に恋する乙女のソレそのものへと激変していた。





第35話は、明日の【 12時40分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、明日の更新でお会いしましょう。

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