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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~許可編~
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第32話 許可の申請



「お前はただただ、俺たちの成功の知らせをこの安全なギルドの特等席で、ふんぞり返りながら優雅に待てばいい例え俺たちが失敗したとしても、お前たちギルドからすれば、ただ“言うことを聞かない生意気な冒険者が一組、世界から静かに消えただけ”……そうだろ?」



 アロンから放たれたそのあまりにも傲慢にして冷酷な啖呵に対して、ギルド長のオルテは、すぐには何も言葉を返すことができなかった。


 ただ、深く刻まれた皺をさらに深くするように静かに目を閉じたまま、対面に佇む二人の若き冒険者が放つ、底の割れない不気味な“気配”をじっと肌で感じ取っていた。



 オルテは、ただ黙り込んだ。



 アロンが最後に言い放った冷徹な言葉────

 “もし俺たちが失敗して全滅したとしても、生意気な冒険者が一組、世界から静かに消えただけ”



 ───そのあまりにも割り切った響きが、彼の脳内のすべての常識や苦悩の思考を、強引に押し流していた。









































 数秒の間、完全に息を止めて。

 そして、胸の奥に溜まっていた重苦しい塊をすべて吐き出すように、大きく一息を吐いた。



「……皮肉な話だが、確かにな」



 オルテはゆっくりと目を開けると、自嘲気味に静かにそう呟いた。



「お前のような、組織をナメ腐ったクソ生意気な輩が無様に死んだとしても、まぁ……正直なところ、この俺の心は1ミリも痛まんし、なんとも思わん。……そっちの隣にいる美人さんは色々と勿体ないがな」


「副リーダーも、もちろん同行するぞ」



 アロンが至極当然のように短く答えると、背後の壁から身を離したリンカが、涼しい気だるげな声でそれに言葉を続けた。



「……だ、そうだ、まぁ私は死ぬ気はないが」



 リンカのその全く緊張感のない言葉に、オルテは呆れ返ったように広い肩をすくめ、今日一番の深いため息を盛大に漏らす。



「はぁ……わかった、わかった。そこまで死に急ぎたいというなら、俺はもうこれ以上は止めん……それでもし、お前らが他の連中と同じように二度と戻らず消息不明になったら───その時は俺が、大笑いして盛大に葬式を挙げてやるよ」



 オルテの言葉の調子は、完全に呆れが半分、そして期待など爪の先ほどもしていないゼロの状態だった。



 それでも、セイドウの街で丸一年間、頑なに閉ざされていた絶対の“攻略許可”は、今ここに確かに下りたのだった。



 アロンは座っていたソファから、悠然と上体を立ち上げる。

 その力強い動きには、目の前に広がる伝説の地獄への恐れやためらいなど、やはり最初から一微塵も存在しなかった。



「安心しろ、必ずこの俺たちが誰も生きて帰れなかったダンジョンを完全攻略して暴いてやろうじゃないか」


「お前に期待などしない……が、まぁ、その傲慢なツラをもう一度拝めることくらいには、ほんの少しだけ期待しておいてやる」



 リンカもアロンの隣に並ぶように、静かに椅子を後ろへと押して立ち上がる。

 


「よし、交渉成立だな。じゃあ、さっさと行くぞ、副リーダー」


「ああ」



 ふたりはいつもの軽口を叩き合いながら、同時に前へ向けて歩き出す。

 背筋をまっすぐに伸ばして、重苦しかった応接室の大きな扉を開け、そのまま廊下の奥へと向かって。









































 だが、その二人の後ろ姿に向けて、背後からオルテの、ひどく素頓狂な動揺の声が慌ただしく追いかけてきた。



「……は? いやいや、ちょっと待て、お前らどこへ向かって歩いているんだ?」


「何を今更、寝ぼけたことを言っているんだ、ギルド長。申請の許可が下りたんだから、これから『無明の層』へ直行するに決まっているだろう」



 アロンの足取りは、まるでこれから近所の散歩にでも出かけるかのように軽やかで、リンカはそれにぴったりと並んで、無言のまま当然の権利のように歩いていく。


 そんな、あまりにも常識が通用しないふたりの無防備な背中へ向けて、突如、背後からギルド長オルテの、廊下の全体を激しく震わせるほどの魂の咆哮が強烈に突き刺さった。


 

「いやいやいやいや……いやいやいやいや!! 本物の大馬鹿か、テメーらは!!!!!」



 静まり返っていたギルドの長い廊下に、ワンワンと大きく響き渡るオルテの必死の絶叫。



「どうした?急に大声を出し始めて」


「いや、きっと彼は突然、大声を出すことで自己肯定感でも高めたくなったんじゃないか? 人は他人に怒鳴ることで自らの存在感を示し、精神的な心理的安定を得ようとする防衛行動原理があると、確か昔読んだことがあるな」


「流石は副リーダー、博識だな」


「違うわ、このド大馬鹿共!!! 今、この夕方の時間から、そのまま手ぶらでダンジョンへ向かおうとしただろ!? お前らを必死に止めてんだよ!!!」



 オルテは、ハァハァと激しく息を切らしながら、大慌てで廊下を猛ダッシュしてふたりの目の前へと必死に立ちふさがる。

 その顔は怒りと困惑で真っ赤に染まり、肩が上下に激しく揺れ、もはやセイドウの街を統べるギルド長としての威厳や重厚さは、どこへやら完全に霧散していた。



「いや、さっき公式な進入許可が下りたじゃないか。俺たちが今から潜るのを、組織がわざわざ止める合理的な理由は、もうどこにも無いはずだが?」

 アロンは歩みを止め、めんどくさそうに肩を軽く回しながら、不思議そうにそう返す。

 その横でリンカは、相変わらず涼しい表情のまま、先ほどの菓子の甘い匂いがほんのりと残る自らの黒い袖口を、パッパと無造作に払っている。



「何が“止める理由は無いはずだが”だ、馬鹿野郎!!! こっちはあの『無明の層』がどれだけ危険で理不尽な場所だって、さっきまでお前に散々説明しただろ!? それをなんだお前らは……! 『ちょっとその辺、散歩してくるわ』みたいな信じられない軽いノリで、死地へそのまま行こうとしてんじゃねぇ!!!!」


「ダンジョンに向かう時のノリなんて、俺たちの勝手だろ」


「勝手だな」


「勝手じゃねーよ、命がかかってんだよ!!!! いいか、お前ら。今日の突入は絶対に却下だ、明日の朝、もう一度きちんとここに顔を出しに来い!! “無明の層”に関する過去のすべての情報を綺麗に整理しておく!! 攻略のヒントもちゃんと伝える!! だから、今は行くのだけは絶対にやめろ!! 絶対に行くな!!!」


「そんな、事前に答えを見るようなカンニング紛いの卑怯なことはしたくないな。俺たちの攻略は、俺たちの力だけで十分だ」


「やめろおおお!!!! 本当に明日の朝、ちゃんと来いよ!! 今日は絶対に行くなよ!! もし言うことを聞かずに勝手に行ったらな……さっきの進入許可、今ここで本気で取り消すからな!! 本気でな!!!!」





第33話は、明日の【 12時40分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、明日の更新でお会いしましょう。

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