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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~許可編~
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第29話 通則第2条:ギルド及びそれに属する組織は例外を除き、全ての冒険者の不利益の回避あるいは軽減に最大限努めなければならない

この通則はギルドおよび属する組織に課せられる最も基本的かつ最も裁量が問われるモノである…

しばしば第1条との折り合いで揉めることがある。




 しばらくの間、新しく淹れられた菓子の甘い香りが閉ざされた室内を静かに満たしていたが、三人のうち、誰一人としてその器へ手を伸ばす者はいない。


 応接室に逃げ道のない決定的な沈黙が広く染み渡る中、ギルド長のオルテは対面の椅子に深く腰を下ろし、指を強固に組んだままアロンの瞳を真っ正面から据え置いた。



「……で、この俺に直接話があるらしいな」



 オルテの声は、一切の動揺を見せない低く変わらぬ調子だった。

 その精悍な顔立ちに刻まれた深く鋭い皺の奥には、アロンたちの実力を冷徹に見極めるような、わずかな緩みさえあった。



「おおかた、お前たちが何を言い出すかなど予想はできているが……一体なんの用だ?」


「無論、『無明の層』の攻略許可についてだ…なぜ許可を出さない? ギルドが掲げる世界規約の第一条では、“冒険者の未知への探究を最大限サポートする”のが絶対の原則だろう?」



 アロンの真っ直ぐな言葉に対して、オルテはふっと鋭い目を伏せたまま、組んだ指先をすり合わせる。

 その指先の筋肉の張り一つを取っても、いつでも獲物の首をへし折れるだけの現役のキレが、そこには確かに残されていた。



「確かに……規約の文面通りに解釈するならば、我が組織は冒険者の探究を促すためのものだ」


「なら、話は早いね…早く俺の申請書にサインをして、攻略許可を出してくれ」


「……だがな、青年。俺たちギルドという組織は“目の前で無謀に死ににいく冒険者の不利益を、事前に回避あるいは軽減する”という、絶対的な人道的義務も背負っているんだよ」


 

 空間を物理的に圧し潰すような、隙のない重い一言だった。

 応接室を満たしていた菓子の甘い空気が、ほんの少しだけ重く沈み込んでいく。


 それを聞いたアロンは組んでいた指先を、テーブルの上でトントンと静かに動かす。



「……随分と煽るじゃないか。街の偉いさんの一人のギルド長がそんな公の場で挑発的な態度を取っていいのか?」


「最初に言ったろ? ここまでハッキリと言葉に出してやらないと、自分の身の程が分からない大馬鹿が、この世にはそれこそ掃いて捨てるほど山ほどいるんでな」


「全くだ。その手の本物の馬鹿は、直接言葉で言ってやらんと自分の愚かさを一生理解できないからな」



 アロンの背後で、リンカが壁に背を預けたまま、冷ややかな声で淡々とその言葉を重ねる。

 すると、オルテの口元に、勝ち誇ったような皮肉な笑みが不気味に浮かび上がった。



「お、そっちの線の細い美人さんは、俺の言いたい本質をしっかり分かっているみたいだな…そういうことだ……えーと、リンカさんと言ったか、さっさとその馬鹿のリーダーの袖を引っ張って、大人しく身の丈に合ったダンジョンでも攻略するんだな」



 オルテがこれ以上の対話は無駄だと判断し、強固に組んでいた指を離して、椅子からゆっくりと立ち上がろうとした………









































 まさにその瞬間だった。









































「くくく……はは、よく言うな」



 アロンの口元から、押し殺したような低い笑い声が不穏に漏れ出た。

 その声の音量自体はひどく低かったが、閉ざされた部屋の空気を一瞬で沸点へと導くような、確かに“最悪な挑発”の温度を孕んでいた。



「お前自身も……いや、このセイドウのギルド全体が、今まさに正式な“その身の程知らずの馬鹿で愚かな一員”であるというのに」





第30話は、【 17時10分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、明日の更新でお会いしましょう。

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