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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~許可編~
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第25話 仲間を募ろう③




 ◆





 セイドウの冒険者ギルド本部は、静まり返った街の中央にどっしりと佇む、重厚な石造りの巨大な建物だった。


 最先端の魔力制御の機構と、大陸全土から集まる膨大な情報管理の集積所────

 ここは、理不尽なダンジョンに命を懸けて挑むすべての者にとって、文字通り生死を分ける絶対の“生命線”だった。


 

 冒険者はダンジョン攻略、または公式のクエスト依頼によって未知の領域へと潜入する際、事前にこの窓口に対して申請を行う。

 そうすることで、ギルドからいくつかの絶対的な権利を得ることが認められていた。




• 攻略記録の正式登録

 勿論、ギルドに対して非申請のままで勝手に潜入することもシステム上は可能であるが、その場合はどれだけ偉大なダンジョン攻略を成し遂げようとも公式の記録には一切残らず、歴史の実績とはならない。当然、莫大な名声にも報酬にも繋がることはない。


• 保険の適用

 事前に申請済の探索者がダンジョン内部で万が一負傷、あるいは深刻な呪いを受けた場合、その莫大な治療費や装備の復旧費がギルドの財源から全額支払われる。逆に未申請の者には、四肢が失われようとも一切の補償がない。


• 法的保護と訴訟権利

 もしダンジョンの暗闇で他の冒険者に故意に背中から攻撃、または物資を略奪された場合、申請者はギルドの強大な権力を通じて加害者を法的告訴し、暗黒街まで追い詰めることができる。未申請者の被害はすべて“自己責任の不純物”として冷酷に処理され、法的には何も保護されない。



 

 この厳格に定められた制度は、単なる形だけの手続きなどでは決してない。

 いつ誰が死んでもおかしくない過酷なダンジョン探索において、人間が「生存」し、傷から「回復」し、裏切りに対して「正義」を執行するための、唯一の強固な土台なのだった。





 ◆




 

 ギルドの巨大な魔導式の自動扉が、独特の風圧を吐き出しながらゆっくりと左右に開いた。

 セイドウのギルド本部は、以前に滞在していたあの『エンバリ』ほど、荒くれ者たちの剥き出しの殺気がそこら中に散っているような野蛮な空間ではなかった。


 いつどこで喧嘩が始まり、誰が誰を裏切るかのにおいが常に漂っていたあのスラムのような街とは違う……

 

 ここは少しだけ上品な、客層の良い騒がしいバーにでもいるような落ち着いた空気────

 周囲にはそれなりのざわつきはあるが、抜けば血が飛ぶような剥き出しの刃物の気配はどこにもない。


 それでも、今この場所に満ちている空気は、どこか鉛のように重苦しかった。

 街のすぐ近くに、入った者が誰一人として帰ってこない『無明の層』が出現してからというもの、集まる冒険者たちは皆、一様につまらないことで眉をひそめるようになっていた。


 自分がこれから、ただの小遣い稼ぎではなく、本当の冷たい戦場を前にしているのだという事実を、本能的に、無意識のうちに自覚させられているのだ。

 そんな張り詰めた沈黙の空気の中を、アロンとリンカの二人がいつも通りの足取りで静かに歩を進めていく。



 アロンの鋭い視線が、ギルド内に設置されたお馴染みの掲示板や並ぶ受付窓口ではなく、壁際でどんよりと雑談を交わしている数人の冒険者たちの姿へと、まっすぐに向けられる。



「……あれ?ここもしかして葬儀場だった?これから葬式にでも向かうみたいな辛気臭い顔をしてる人しかいないんだけど」



 アロンが困惑した顔を見せながらぼそりと呟いた声に、隣にぴったりと並ぶリンカが、冷淡な口調で言葉を返す。



「まぁ街の近隣に入ったら二度と帰ってこない本物の絶望ダンジョンがあるんだぞ……そんな最悪の状況の中で、いつものように酒を飲んで“はっちゃけて”いる奴がいたら、それこそ正気を疑うだろう」


「確かに……それもそう、俺みたいな輝きを持つ人間じゃないとね」


「はいはい」


「………」



 リンカの呆れ声に一瞬細い目を向けるが、そのままギルドの喧騒の隅々へと獲物を探すようにじっくりと移り変わっていく。

 受付のカウンターで、ダンジョンに立ち入るための最低限の申請手続きを淡々とこなしながらも、アロンの頭の中にある本音(目的)は完全に別の場所にあった。




 “懲りずに、また新しい仲間をパーティーに増やす”────




 それこそが、今回アロンたちがこの重苦しいギルドにわざわざ足を運んだ最大の目的だった。

 アロンが探しているのは、世界に名を馳せるような一騎当千の強者ではない。自分の必殺技よりも目立つような、優秀すぎる頭脳の持ち主でも決してない。



 “誰が見ても、適度に見栄えが冴えない”


 “どこのクソパーティーからも、何か理由をつけてゴミのように切り捨てられてそうな”


 “最悪の場合、リンカの身代わりの盾にすらならないかもしれない、でも一応荷物持ちくらいには使える”



 一言で表現するならば“ザ・無能と呼ぶに相応しい完璧な人材”を、アロンたちは今日も大真面目な目で探し回るのだった。





アロンのお眼鏡に叶う人材はいるのだろうか?


第26話は、本日夕方【 17時10分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、夕方の更新でお会いしましょう。


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