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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~終幕編~
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第118話 大歓喜!!!!




 私は、狂乱する同僚たちの怒濤の問いかけを必死に宥めながら、ひたすらにその時を待った。



 ギルド本部に充満する、肌を刺すような熱い沈黙。


 冷暖房が効いているはずの執務室は、数百人もの職員が発する熱気と脂汗の臭いで、呼吸をするのも苦しいほどに張り詰めていた。


 誰もが口を真一文字に結び、奇跡を祈るように拳を握りしめている。



 そして───通信が切れてから、約束の10分が経過しようとする、その少しばかり前のことだった。




 ピピッ、ピピッ、と私の手元にある通信魔導具が、鋭く鳴り響いた。




 その高音の駆動音が静寂を切り裂いた瞬間、周囲を取り囲む群衆の肩が一斉にビクッと跳ね上がる。

 

 私は心臓が口から飛び出しそうなほどの動悸を抑え、ガタガタと震える指先で受話器を耳へと押し当てた。



「は、はい…!こちらセイドウギルド、ミーシャでございます!!」



『ミーシャ君、さっきはすまない……そして、話だが……いや、待て? ミーシャ君? 君、今一人か? なんかそっち、妙に騒がしいんだけど?』



 受話器の向こうから響いてきたのは…オルテ様の、どこか困惑の混じった低い声だった。



「あ……あの……それなんですが……その……」



 私は、顔を引きつらせながら受話器を両手で痛いほどに握りしめ、言葉を濁すことしかできなかった。



 無理もなかった。



 10分後にギルド長から直々にセイドウの未来に関わる重大発表がある────そんな噂を聞きつけた、セイドウギルドに勤務する全職員が、今まさに、私の小さなデスクの周囲を何重にも、隙間なく取り囲んでいたのだから。


 普段はそれぞれの席で整然と書類に向かっているエリートたちが、私の手元へ殺到している。


 私の耳元にある小さな受話器から、わずかに漏れ出るであろうオルテ様の声の、その一音たりとも聞き逃すまいと、誰もが限界まで上体を前のめりにし、息を殺し、狂ったような期待の目を剥き出しにしていた。



『……まぁ、感づかれたってことだろう? 他の職員に』



「は、はい……」



 すべてを見透かしたようなオルテ様の言葉に、私は自分の独断を責められるのではないかと恐怖し、少しだけ声を暗くしてうつむいた。



 規約違反。


 口止めされているのに関わらず……



 一介の受付嬢の身でありながら、組織全体を揺るがす大パニックの引き金を引いてしまったという、重い罪悪感が胸を締め付ける。



 冷たい受話器を握る指先が白く強張り、じっとりとした嫌な汗が手のひらに滲んでいた。私の頭上を何重にも取り囲む同僚たちの息遣いすら、今は私を断罪する重圧のように感じられて、ただただ縮こまることしかできない。



「あ、…あ、あのう……その……」



 だが────オルテ様は、そんな私の怯えを吹き飛ばすように、どこか照れくさそうに、晴れやかに笑った。



『あ、いや、そんなに申し訳なさそうな声をするな……別に君を責めてるわけじゃない───それに、もう隠さず話しても、何の問題もあるまい』



「それって、つまり……?」



 私の震える問いかけ。


 受話器の奥のオルテ様は、フッ、と低く、しかし最高に晴れやかな笑みを漏らすと、どっしりとした威厳に満ちた声でこう告げた。



『そっちの通信……周りにいる奴にも、聞こえるようにしてやれ』



「は、はい……」



 私は溢れそうになる涙を必死に堪えながら、デスクの魔導通信機器のボタンを押し、音声を全体へ響かせるスピーカー設定へと切り替えた。


 張り詰めた空気の中で、私の指先がカチリと冷たいスイッチを押し込む。


 刹那、ザザッという荒野の強風が吹き荒れるノイズとともに、オルテの声音が、オフィス全体へと重厚に響き渡る。



『聞こえるか? 職員諸君』



「は、はい!!」


「オルテ様……これは、まさか!!!」


「まさか、まさか!?」



 スピーカーから流れる長の声を聞いた瞬間、デスクを何重にも取り囲んでいた職員たちのテンションは、さらに狂ったように跳ね上がった。



 息を荒くして、見つめる同僚たち。


 彼らの剥き出しの興奮が狭いバックヤードに充満し、全員の網膜が手元の通信魔導具だけを穴が開くほど見つめている。


 受話器を中継している私自身の耳元にまで、すぐ後ろに立つ同僚たちの荒い鼻息が直接吹きかかるほど、室内の密度は限界に達していた。


 その、誰もが奇跡を渇望する魂の叫びが、部屋の空気を完全に沸騰させていく。



『察している者も、不安に駆られている者もいるだろう……すまなかったな、極秘任務だったのだ────だが、単刀直入に伝える!!』



 その瞬間……



 ダムが決壊する直前のような不気味なほどの『静寂』が、辺りをシンと包み込んだ。


 それまで弾けたように騒いでいた職員たちが、一瞬にして呼吸をすることすら忘れて受話器の奥の言葉を待つ。


 耳を刺すような電子着信音の嵐すらも、今は誰も耳に入っていない。ただ静まり返ったオフィスの壁が、パチパチと痛いほどの緊張感に支配されていく。



 そして───全ての不条理な地獄の日々に終止符を打つ、真実の弾丸を力強く撃ち放った。


 















































『無明の層は……完全に攻略された!!!!』


 
















































 ギルドが、音を立てて完全に大爆発した。





第119話は、【 17時10分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、次の更新でお会いしましょう。

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