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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~真相編~
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第97話 乗っかる相棒




「お前と俺同郷だよな? そんな話聞いた事ないだろ」



 アロンは、リンカの細い手のひらで頭を遠慮なくわしゃわしゃと撫で回されながらも、間髪入れずに鋭いツッコミを入れた。


 何を一緒になって頭のおかしいおふざけ妄想に乗っかっているんだ、と。



 目の前で頑なに話を聞かずに涙ぐんでいる女を前にして、助けを求める眼差しを向けたというのに、この相棒は助けるどころかここぞとばかりに弄びにかかってくる。



「悪いな、私はあの日までお前の事は知らなかったんだ……なんだ? 典型的に家族でも殺されたのか?」



 リンカは、彼から向けられたその至極真っ当な正論のツッコミをパッと楽しそうに受け流すと、おかしさを堪えきれないといった風に声を弾ませて、アロンをさらに嬉々として煽り立てた。


 いつもはつんとクールに澄ましている彼女の横顔は、今やアロンを正面からからかえるお祭りのような状況が嬉しくてたまらないといった様子で、その美しい瞳をご機嫌きらきらと輝かせている。


 偉そうにしているアロンが、脳内フィルターの狂った女を前にして本気で困り果て、自分に助けを求めてきているという珍しい弱み。


 それが彼女にとってはたまらなく愉快なごちそうであり、心が躍って内心でのニヤニヤがどうしても止まらないのだ。


 表情にはアロンへの情と、いたずらっぽい優越感をいっぱいに浮かべながら、楽しそうに首を傾げて彼の困惑顔を覗き込み、ご機嫌な笑顔で彼をさらに楽しげに追い詰めるのだった。



「当日見送りに来てたよな? なんならつい最近も会ってるよな? 特にお前、なんか母と仲良いし」



 家族を惨殺された復讐劇の男だなどと、震えている女が勝手に妄想を爆発させているその真ん中で、アロンは心底めんどくさそう顔をしながら、至極真っ当な現実の正論をそう淡々と言い返した。


 家族が皆殺しにされたどころか、彼が故郷を発つ日の当日、リンカは思いっきりその出発の場所に見送りに来ていたのだ。

 しかも、母親とは、故郷にいる時だけでなく、親しげに談笑していた姿を彼はバッチリと目の前で目撃している。



「『お義母様』にお前をしっかり見ていろと言われてるからな……私はお前より年上のお姉さんだからな」



 リンカは、ふん、とその美しい鼻を小さく鳴らすと、アロンの頭を撫でるその楽しげな手つきはそのままに、あえて『お義母様』という単語を、ねっとりと、強調するように自らの端正な唇から滑らせた。


 普段は誰をも寄せ付けない冷徹な氷の仮面を被っている彼女であるが、今ばかりはその底に潜む、アロンに対する絶対的な独占欲と優越感を、その声色の細部にまで深く、染み込ませている。



 その言葉の裏にある、アロンの実家公認……自分が実家から確実なお墨付きをもらい、なんなら彼の実の母親と完全に裏で結託して『身内』としての絶対的なポジションをガチガチに固めているという、これ以上ないほどの揺るぎない圧倒的な確固たる現実。



 お姉さんぶって彼を翻弄し、その感情を手のひらの上で優雅に転がして楽しむ彼女の横顔には、普段の硬質な姿からは想像もつかないほど、彼への特別な親愛の情を全力で満喫する、最高に甘やかで愉しげな素顔が覗いていた。


 自分のすぐ隣という、世界のどこよりも安全で、自分だけに許された絶対的な特等席の優位性をその全身から放ちながら、男を都合よく弄んでからかい倒せるこの至上の日常を、彼女は内心でこの上なく静かに、そして心底嬉しそうに満喫しているのだった。



「2歳程度の差でお姉さんと言われてもな」



 アロンは、心底やれやれというようにその強固な肩をすくめた。


 普段からつんと澄ました顔で年上ぶってくる相棒に対する、彼なりの当然の抗議だった。



「されど2歳だ…分かるか?お前が生まれたときには、すでに私は2年この世界で過ごしているんだ」



 アロンの言葉にさらに口角を上げて、目に見えて饒舌になるリンカ。


 そう、リンカという女は、フィジカルな戦闘の場においては戦力にもならないが……こと口論となれば、他者の追随を一切許さないほどに厄介極まりない性質を持っていた。


 普段の冷徹な氷の仮面はどこへやら、アロンより先にこの世界に生を受け、2年分の時間を多く積み重ねてきたというその事実だけを盾にして、彼女は独自の理屈をどこまでも優雅に展開し始める。



「仮に私がお前と幼馴染であったなら、お前が生まれ、産声を上げたときに…『ようこそ世界へ』と言える立場だったんだぞ?」



 リンカは、あえてその突飛な暴論をその端正な唇から滑らせた。


 2年早く生まれてきたというだけの話をここまで極限まで拡大解釈できる者が果たしているだろうか…?


 もしも過去が出会いの場所であったなら、彼の人生の最初の瞬間に自分が『お姉さん』として君臨し、歓迎の言葉を投げかける権利を持っていたのだという、リンカ独自の発想。



「なにそれ怖い」



 アロンは、リンカの放ったそのあまりにも独創的で度を越した暴論に対して、若干だが、引いてしまっていた。





第98話は、土曜日の【 12時40分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、明日の更新でお会いしましょう。

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