六枚の花、赤く赫く蓮、天からの雷鎚
「取引…だと?どういうことだ。雪矢。」
「ああ。お互いを利用し合おうじゃないか。颯真。」
「その前に、隠れてる奴等について説明して貰おうか。」
「まぁそうだな。おーい、もう隠れなくていいぞ。」
木の影、建物の裏、茂みの中。黒いスーツの男たちがぞろぞろと出てくる。レーダーで感知したのと同じ、20人。
「いろいろ順を追って話さなきゃならないことがある。入れよ。」
そう言って雪矢は本殿の中へと入って行った。
たとえ怪しい動きがあったとして、自衛くらいは出来る。ここは付いていくのが無難か。
「これは…地下室か?」
「戦時中、陸軍の火薬庫として造られたのを、六花組が使ってる。」
「オイオイ、ここ北海道だぞ…
って、ちょっと待て。今お前何つった?六花組って言ったか?」
「ああ。言った。」
雪矢が部屋の奥、壁を背にしたイスに座る。
「俺は六花組組長の息子だ。」
壁には、雪の結晶が描かれた旗が掲げられていた。
「なっ…え…はぁ!?」
「まぁそう構えんなって。あの首輪は持ってないから安心しろ。」
「…もう何が何だか分からん。俺を殺すために呼びつけたんじゃないだろ?」
「ああ、誓って。」
「なら、いろいろ話して貰おうか。取引って何だ?俺に何をさせるつもりだ?」
「簡潔に話そう。
──六花組ってのは、ここ道央の一部と道南に勢力圏を持ってる北海道三大指定暴力団の一つだ。それは知ってるな?
今、うちの組は色々不安定でな。今のカシラ、俺の親父の高石厳冬が病気でぶっ倒れ、伯父貴…高石凍河が実権を握った。
奴は狡猾で性根の腐った男で、親父が積み上げてきた地域の人達の信頼関係に傷をつけやがった。
そのせいで組は衰退、他二つの組と対等に渡り合う力を失った。
この状況を打開するため、伯父貴は敵対する道東の暴力団、赫蓮組との和平のために、俺の姉貴、吹雪姉さんを嫁に出そうとしてる。俺はそれを止めたい。」
──へぇ…。
「…なるほどね。悲劇的だが、俺が首を突っ込む意味は?吹雪さんには悪いが、俺は暴力団のモメ事に関与する気は無いぞ。」
「もし吹雪姉さんが赫蓮組に嫁入りしたら、お前達の組織はかなりマズイことになるぞ。」
「はぁ?」
「今のここ、北海道の裏社会は六花組、赫蓮組、天雷組の三大暴力団が睨み合って均衡を保ってる。
六花組と赫蓮組が同盟関係になれば、真っ先に天雷組を潰しに行くだろう。
そしたら、北海道の勢力図は一色に塗り潰される。裏社会がまとまってお前達に牙を剥くぞ。」
「…して、お前はどうする。俺を使って何をする?」
「──六花組を乗っ取る。」
六花組
道南、道央の一部を勢力圏とする。厳冬が頭だった時代は市民を陰ながら守る自警団の側面が強かったが、凍河の台頭により変わってしまった。
赫蓮組
道東を勢力圏とする。薬物の密売や売り子の斡旋で力をつけた。公的組織に最も危険としてマークされている。本州の暴力団との繋がりも強い。「蓮」の名を持つが高潔とは程遠い。
天雷組
道北と道央の一部を勢力圏とする。闇バイトの斡旋や詐偽など、テクノロジーを用いて近年急速に力をつけた新興団体。暴対法により弱体化している六花組、赫蓮組にとっては驚異的なことであり、異質。




