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鋼鉄英雄譚  作者: Negi
裏社会編
10/15

酒は飲んでも飲まれるな

「オイ琴葉ー。しっかりしろー。帰るぞー。せめて自分で立てー。」

「ちょっとむりぃ…」

「ちょっ吐くなよ!?絶対吐くなよ!?」


あー、うん。やらかしたなぁ…ははは。


どうして俺がへべれけの琴葉を担いでいるのか。というかなんで高校生の俺達が酒飲んでるのか。順を追って説明することにしよう。あっ待てオイオイオイ!


☆☆☆☆三日前☆☆☆☆


「六花組に潜入するぅ!?」

「そんな驚くこと無いじゃないですか、一晴さん。」

「まぁいい、どうやって?」

「六花組が犯罪の根城にしているクラブがあるらしいので、俺達の情報をどこから聞いたのか辿ります。どうやらもう闇サイトで賞金首になっているようなので。」

「私の能力で一時的に身体を大人にするのでバレません。変装も完璧ですよ。」

「…()()()とやらはどうした?」

「あれでは情報元までは教えてくれなかったのでね。」

「君たちが行く必要は?」

「どこに裏切り者がいるか、わからないのでね。伝えているのは今のところ貴方だけです。」

「何故俺に。」

「クラブなんて行ったこと無いので、自然に溶け込めるよう軽くレクチャーを…」

「琴葉さん?君は俺を何だと思ってるのかな?」


次の日。


「あの店はカップルが多い。よって、ガラの悪いカップルっぽい服を考えたぞ。」

「おお~いかにもですねぇ。ファーコートにミニスカってのがそれっぽい。」

「颯真も、その悪趣味な色眼鏡とネックレスがお似合いで。」

「それにしても不思議なもんだなぁ。どこからどう見ても成人に見える。」

「私の『エスクラップ』で一発ですよ。練習と勉強は必要ですけれどね。」


『エスクラップ』。ボーダー・ガーディアンズに登場する「ドイツ」のオーラ。

下半身は蛇、上半身は人間の形をしていて、人体を弄って治癒や変装を行うことができる。

こいつで俺達の肉体を25歳くらいまで引き上げた。


「どうもあの肉体が描き換わる感じは嫌だな。ムズムズする。」

「他人の体だからイマイチ感覚が掴みづらいの。我慢して?」


次の日の夜。つまり今日。


「紹介状は?」

「これで。」


もちろん偽造だ。


「楽しんで。」


「…話にゃ聞いてたが、うるせぇな」

「ダンスホールとバー、低いテーブルとイス。こんなベタベタなクラブまだあるのね…。」


「やぁ、見ねぇ顔だな。今日が初めてか?」

「はい。」

「そんじゃ一つここでのルールを教えてやる。自分の女とは手ぇ繋ぐなり腕組むなりしとけ。」

「ありがとうございます。だとよ。」


これも溶け込むためだ。

琴葉の手を握る。…恋人繋ぎの方が良いのか?

…大人のカップルならそっちの方が良いかもな。そうしよう。


「とりあえずどっかに座ろう。あそこなんてどうだ?」

「しょれが良いね。」

「今噛んだろ。もしや照れてる?なぁ照れてるのか?」

「うっさい!照れてないわよ!」


「初めてお酒飲むわ…。」

「そこまで強い酒ではないが、チビチビ飲みつつ聞き耳立てよう。」


体の仕組みを多少弄っているので、俺達はよほどガブ飲みしない限り酔わない。ただ、規定量を越えると一気に酔いが回るらしい。


「よう、新入り。ここに来たってことは、金が欲しいんだろ?」


さっそく来た。ワイン色のスーツを着崩したガタイのいい男。


「やっぱりバレてますか。ここなら良い仕事紹介して貰えるって聞いたんでね。」

「なら、丁度良いのがあるぞ。てめーらみてぇな若いのにお誂え向きのがな。」

「へぇ、それってどんな?」

「その前に、だ。一つ賭けをしようぜ。」

「賭け?」


そう言うと、その男はもう一人の男を呼んだ。

「コイツは俺のダチなんだが、ザルだ。コイツと飲み比べ勝負して勝ったら仕事をやるよ。」


ゴニョゴニョ...

「だとよ…どうする?」

「やるわよ。一般人よりキャパは大きいし、上振れはあっても下振れはしないもの。」


「どーするんだ?やるのか?」

「やってやるよ!」


これが失敗だったのは言うまでもない。


「ルールは簡単、同じタイミングで一杯づつ飲んで、最後まで立ってた奴の勝ちだ!そんじゃスタート!」


一杯目。ずいぶん強い酒を用意したものだ。喉が熱い。これテキーラってやつじゃないの?


五杯目。相手の顔が目に見えて真っ赤になっている。俺と琴葉はまだシラフと変わらない。


七杯目。周囲から歓声が上がり始める。もしこれがテキーラならこのオッサン相当酒強いぞ。


九杯目。あと一押しだろう。てかそろそろ常人は急性アルコール中毒でぶっ倒れてもおかしくないぞ。


十一杯目。まだ耐えるのかよ。もう目の焦点合ってねぇぞ。


「颯真…私そろそろマズいかも…」

「マジか。リタイアした方がいいんじゃないか?」

「いや。具体的な規定量を調べるのも兼ねて続けるわ。それに、ここまで来ればもう少しよ。」

「気が進まねぇなぁ…」


「さぁ十二杯目だ、耐えきれるかぁ?」


ショットグラスの中身を一気に飲み干す。アルコールの熱い感じにも慣れた。


バタッ。


「おおっ」

「あのザルが負けたぞ!」

「マジかよあの新入り…」


一際大きな歓声が上がる。


「さぁ、俺達の勝ちだ。仕事を紹介して貰うぞ。」

「気が早いぞ、ザル坊主。まだ決勝戦が残ってんだろ。」

「…それってまさか!」


十六杯目。体のバランスを取れなくなった琴葉がコケた。


「さぁ、今度こそ仕事を紹介して貰うぞ。」

「あんだけ飲んでまだピンピンしてるとは、最早底の抜けた枡だな、坊主。名前を聞こうじゃないか。」


こっちも割とギリギリだよ。


斉賀遥正(さいがはるま)です。」

「そうか。遥正、そんだけ飲んでたら仕事どころじゃないだろ。彼女もベロベロだし、また明日来い。今日の会計は手付金だと思え。」

「…ハァ。わかりました。」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆


こういうことだ。明日が土曜日で心底良かった。俺は止めたんだからな?


「やぁ、これまたしっかり酔ってるね。」

「一晴さん!車回してくれてありがとうございます。」

「いやいや。俺も高校生のときはやんちゃしてたからね。懐かしくなったよ。」

「高校生のときから飲んでたんですかぁ?」

「昭和ってのはそう言うもんさ。ほれ、乗った乗った。」



「ありがとうございました~。琴葉、宿舎着いたぞ。」

「…んにゃ…」


…起こすより抱えてベッドにポイした方が楽だなこりゃ。今回ばかりは部屋に入っても怒らんだろ。

今回颯真と琴葉は偽名で潜入しました。(当然)

颯真の偽名は名字「浅儀」のアナグラム「斉賀」と「颯真」の漢字を同じ意味に置き換えた「遥正」です。

琴葉の偽名はそのうち考えます。

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