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Untillusion~合成獣の効率的な運用法~  作者: 鳥野29音
第二章 狼を連れた少女と新たな仲間
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お手製のシャツとお食事と


 翌朝。幼児達が目覚めるとシュウがお手製のシャツを手渡した。


「おお? すっげー! すっげーよシュウ兄ちゃん!」


「うるさいパル! でも、凄く軽くて綺麗……」


 アーチェが言う様に光を受けたシャツは布や麻と違い、微かに光を反射して輝いていた。

 輝くとはいっても目が痛くなる様な光の反射ではなく、シルクの様な上品な光沢といった感じだ。

 シュウが自ら吐き出した糸を紡いで作ったインナーシャツ擬きを手にはしゃぐ幼児達。


「あぁ、今着てる服の下に着ておけよ。多少は受けるダメージは減るだろ。頑丈に作ったつもりだ」


 昨夜から…日が沈まないので一日経っているかは分からないが、シュウが魔力的なモノを込めながらせっせと作ったお手製である。

 針がないのにと思うだろうが、そこは魔力で糸弾の時の様に尖らせて使ったのだ。

 幼児達が喜んでいるのを見て、シュウも満更ではなかった。


「後…ほれっ!」


 シュウはアーチェにカバンのような物も投げ渡す。


「えっ?」


 フワリと手元に落ちてきた物を受け止め、困惑した表情を見せる。

 それは肩から下げられる少し大きめのポーチだった。


「アーチェは女の子だからな。少しくらいのお洒落もしたいだろ? それに果実や水晶も、ずっと抱えてると大変だろ?」


 ぶっきらぼうにそう言ってはいるが、何処と無く照れている様にアーチェは感じられた。


「あ、有難う……シュウお兄ちゃん」


 宝物を貰った様にいそいそとポーチを身につける。

 身体を右に左にと動かして、動きに追従する様に揺れるポーチの様子を見ては嬉しそうに顔を綻ばせる。


「よかったね。こっちももうすぐ出来るよ」


 クムトが木の枝を削って作った大匙の様な物で大きめのお椀に入っているスープをかき回しながら言う。

 材料はクムトが昨日の探索で見つけた野菜と葉っぱ、それに以前の焼いた狼肉の残りを煮たものだ。

 ちなみにこの大匙もお椀もシュウの手製だ。他にも個別用の小さめのお椀と匙も作っている。

 何気にシュウは手先が器用なのだ。

 野獣の樹木はかなり燃えにくい事に気付いたシュウがこれは使えると踏んで拵えたのだった。

 水に関しても、シュウが昨夜先行偵察を行った際に少し先で……と言っても幼児の足では数時間は掛かるだろうが……偶然発見した湧き水をクムトが飲料水として使えるかを確認した後に、再度大きめのお椀で掬って持って来た物である。

 それ故におかわりは無い。

 今日の予定ではその湧き水地点の更に倍位の距離を移動しようとシュウは考えている。

 湧き水辺りで休憩すれば丁度いいだろうと思い移動距離を予定したのだ。

 と、お椀からスープのいい香りが周囲に漂ってくる。

 その匂いに釣られたのかパルが急いでインナーシャツを纏ってクムトの方へ近寄っていく。


「やったー! ご飯だーーっ!」


「あはは。熱いから気を付けてね。でも皆が揃うまで食べちゃダメだよ」


 しょうがないなぁと言った感じで大きめのお椀から取り皿様の小さめのお椀にスープを入れてパルに渡す。


「うん分かってるよクムト兄ちゃん!」


 早く食べたいと添えられていた匙を手にパルが答える。


「シュウさんもどうぞ」


「あぁサンキュな」


 シュウもクムトからスープの入ったお椀を受け取る。

 シュウも久方振りの汁物である。恐らく味は淡白だろうが楽しみにしていた。

 アーチェも皆に見えない場所でこそこそと着替えを終え、焚火の傍に戻って来て腰を下ろす。


「ごめんなさい。遅くなっちゃった」


「あはは。気にしなくてもいいよ」


 申し訳なさそうな顔で頭を下げるアーチェに、クムトは何でもないと言う感じで答えお椀のスープを渡す。


「なあ、もう食べていいか? クムト兄ちゃん!」


「うん。どうぞ、召し上がれ」


 その言葉と同時にパルはスープを掬って口に運ぶ。


「うっめー! クムト兄ちゃん! うめーよこれ!」


 パルが大袈裟に美味しいを連呼する。


「パル、汚い!」


「あっ、アーチェごめん」


 パルが美味しいを連呼しながら匙を振り回した事でアーチェに被害が出たらしい。

 ちょっと冷めた目線でパルを睨みつける。

 アーチェを怒らせると怖い事を知っているパルは即座に謝った。

 それでもスープを飲む手を止めないのはパルだからだろう。


「そんなにがっつかなくても誰も取らないから。」


 苦笑気味にクムトが注意するも全く変わらず食べ進める。


「まだあるから、ゆっくりと食べなよ。アーチェも果物もあるからね」


「…うん」


 別のお椀に装ってあるちょっと赤い果実も昨夜クムトが見つけた物だ。

 三センチ位の小さな果実で、少し硬い外皮の中に白色のプルンとした果肉が入っている。

 シュウも昨夜食べてみたが、桃というか無花果のように果肉は柔らかく、甘さが目立つ果実だった。

 その為、果実は食後のデザートのような位置付けだ。

 取り敢えずは今日も沢山歩く事になるため、幼児達にも確りと食事を取って貰おうと、昨夜二人が話し合った結果であった。


(ふむ。肉も入ってるな。これは狼の肉か? 出汁もこの肉からとってるんだろうな。淡白だが美味い)


 シュウもスープを飲んで満足げな様子を見せる。

 その表情を見て嬉しそうにしながらクムトもスープを啜ると満足げに頬を緩めた。中々上手く出来たと納得したのだろう。

 ふとそんなクムトの視界に果実に齧り付こうとするパルの様子が目に留まった。


「パル。その果実は中身を食べるんだよ。皮は食べられないからね」


「お、おう。剥くのがめんどいなぁ」


 クムトの言葉に齧ろうとした手を止め、皮の除去作業にとりかかる。が、細かい作業は苦手なのか上手く皮を剥ぐ事が出来ずにいた。


「パルはしょうがないなぁ。貸して、剥いてあげる」


「うっ、頼むよアーチェ」


 苦笑しながらも甲斐甲斐しくパルの世話を焼くアーチェにシュウとクムトの二人は優しい眼差しを送る。

 こうやって過ごす時間が何か尊いものに感じられているのだ。

 ごく普通のやり取りがごく普通に出来る。

 ダンジョンの中ではそんな事をやる余裕などなかった。

 唯只管に前へと進み続け、出口を模索していくだけだった。


「何かいいですね……こういうの」


「あぁそうだな」


 シュウ達はこうして束の間の休息を満足げに過ごすのだった。


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