日本人の語らい
二章開幕です。
同日にもう1話投稿していますので、ご注意ください。
お陰様でWEB小説大賞、並びにESN大賞2への応募規定文字数に到達しましたが、とりあえず暫くはこのまま連日投稿しようと思います。
ですがストックの関係上、隔日投稿になる可能性もあります。
物語の質を落としたくはないのでw
ですので続きが気になる方はこの機会に是非ブックマークをして頂けるとありがたいです。
また、もっと沢山の読者様に読んで頂きたいので、宜しければ★を押して評価をお願いします。
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これからも楽しい作品を作り続けていきますので、応援の程よろしくお願いします。
シュウ達が洞窟を脱出して既に半日が経っていた。
その間シュウ達は断崖絶壁の縁にある山道を唯唯下っていた。
最初は崖からスキルの飛行で降りようかと思っていたが、洞窟の出口が山岳部の高所付近にあり雲海が眼下に広がっていて見晴らしが悪かった事、そして何よりも翼が無くなった状態で飛行のスキルが無事に発動するのか不明だった事もあって素直に山道を下る事にしたのだ。
洞窟から脱出した時刻はよく分からないが、既に数時間は歩いているだろう。
緑の葉を付ける木々が徐々に増え始め、道幅が少し広くなった。
流石に幼児達は歩き疲れを隠せず、それに気付いたシュウが焚き火が起こせる程度の少し開けた場所で早めの休息をとる事を提案した。
蜘蛛の身体があった頃は背中に乗せて移動も可能だったが、既に蜘蛛の身体は失っている。そのため幼児達にも山道を歩いて下って貰っている。
それ故に身体に疲れを残さない様にする必要があったのだ。
今ある食料は光る森で手に入れた果実しか無いため、水分補給を兼ねた食事として果実を食べて貰い、疲れ果てていた幼児達は早々に焚き火の側で眠りについている。
シュウはその焚き火の側に腰掛け、尻尾から出した糸を紡いで簡易的な衣服を作っていた。
クムトは薪拾い兼食料の調達に行って貰っている。
シュウは会話が出来るようになってから、今迄クムトと詳しい情報交換はしていない。
クムトの事は信用しているが、やはりどこかで感じる違和感を拭いさる事は出来ないでいた。
その為体のいい言い訳として調達に行って貰ったのだった。
その事は勘の鋭いクムトの事である、確りと理解しているだろう。
つまり戻って来た時が話し合いのタイミングとなるのだ。
(さてどう切り出すべきか?)
シュウが確認したい事は大きく分けて3つある。
一つ目は転生者又は転移者ではないのか?
恐らくこれは間違いないだろう。なにせこの世界に疎く、それでいて言葉の端々で日本語特有の言い回しがあった。
二つ目はどの様な経緯でこの世界に来たのか?
これに関しては一つ目の回答次第だろう。
三つ目はこれからどうしたいのか?
これは単純に元の世界に帰りたいのか帰りたくないのか。
そしてこの世界で何をしたいのかである。
(まあ変な事を考えてる可能性は低いだろうな)
そのくらいはクムトを信用してる。
問題はそれを聞くために、どのように話を持っていくかだ。
(うーん。遠回しに話を振るより……クムトなら直球勝負の方がいいだろ)
シュウは直接糸を操作しチクチクと服を縫いながら、余計な策を講じず単純に言おうと結論ずけた。
考えが纏まった丁度その時、クムトが戻って来る。
「すみません、遅くなりました。けど見てください。食べられそうな食材も見つけましたよ」
クムトが満面の笑みで取って来たのは果実と緑色の物…恐らくは何らかの葉なのだろう、それに野菜っぽいのまで見つけたのか、大きな木のお椀一杯に食材を入れて持ってきた。
ちなみにこのお椀だが、洞窟から脱出する前に光る森で出てきた似せ樹木の幹からシュウが作ったお手製である。
まぁ今は鎌がないので作れないのだが。
「おおっ。野菜かよスゲエなぁ。この葉っぱはどう食べるんだ?」
シュウは素直に感心した様子で、大葉の様な葉を手に取りながら問いかける。
「そうですね野菜と和えてサラダとかどうですか?」
持っていた木のお椀を焚き火から離れた所に置き、クムトが少し考える様に小首を傾げながら答える。
「おぉサラダか? いいねぇ。ワインが欲しくなるな。和風ドレッシングなら日本酒か?」
シュウがおどけて酒を飲む真似をすると、クムトが苦笑しながら答える。
「流石にドレッシングは無理ですよ」
(隠す気ねぇな……なら)
「そっかぁ……なぁクムト。お前さぁ……何処から来たんだ?」
シュウは声のトーンを変えずに話の序に聞いたといった感じで問いかけた。
「はい。恐らくシュウさんと同じ“日本”からです」
「ほう……最初から隠す気無しかよ」
クムトの答えにシュウは漸く真面目な雰囲気を醸し出した。
「ええ、シュウさん“も”否定はしないんですね…やっぱり」
「まぁな」
シュウも呆気なくそう答える。
「で、何で隠さないのかは……シュウさんの様な人に隠し事をした方が、変に疑われて後々自分が困る事になりそうだからですよ。それに……隠したら信用されないだろうし。得にシュウさんには……でしょ?」
「まぁ……違いねぇな」
シュウが参ったと言う風に肩を竦めた。
クムトの言ったようにここで誤魔化しを入れられたら、その後の会話は険悪までにはいかなくとも、懐疑的なやり取りになっていただろう。
「と言う訳で僕は日本から……うーんと転生? したっぽいです」
言葉を選ぶ様にクムトが言う。
「で?」
「はい。何でかは僕もよく分かりませんが、神様らしき声を聞いたんです」
「…ほう…神様…ねぇ……」
呆れを孕んだ口調で答えるシュウ。
(出てきたな……ファンタジーの王道が……)
シュウは元の世界なら兎も角、この世界に神が存在していてもおかしくないと思っている。
何せスキルなんてモノが実際に存在して、自身がそれを使って今迄生き延びてきたのだ。
逆に神が存在しませんと言われた方が不自然にすら感じる。
「その感じだとシュウさんは違うんですか?」
「あぁ。俺は恐らく死んだ後、サコィ……この世界の子供に…何故か意識だけ同居したようなもんだな」
「子供……実験……ですか?」
思わず想像したのだろう。クムトの顔が渋く歪む。
何を想像したのか語るまでもないだろう。クムトの表情が物語っている。
だからシュウは端的に答えた。
「あぁ」
意識はしていなかったが、シュウの声音には苛立ちが含まれていた。
クムトもシュウの無機質な返事に何かを感じたのだろう。話を本筋に戻すように言葉を続けた。
「すみません……話を戻しますね。僕は神様に十個の質問をされて、それに答えたらこの体になってました。」
「フム…」
「それからはシュウさんにも話したとおり、田舎の村で暮らして、シュウさんに出逢って、そして今此処にいます」
「なるほどな……なぁ幾つか質問しても構わんか?」
シュウが狼頭の下顎辺りを右手でしごきながら更に質問を重ねる。
「はい。…ふふっ」
「あん? どうした?」
突然含み笑いをしたクムトに怪訝そうな面持ちを向けるシュウ。
「いえ、今迄一緒にいたのに、シュウさんとこうやって話してるのが何か不思議で……あ、質問ですね。どうぞ」
苦笑混じりでクムトが答える。
「わりぃな。まず聞きたいんだが、お前幾つだ?」
「そうですね。今は十四歳です。前世って訳でもないんでしょうけど、合わせると…三十二歳?」
シュウは少し驚いた顔をするが、同時に何か納得した表情を浮かべる。
年齢にそぐわなかった今迄の行動の謎が氷解した様に感じたのだ。
(やっぱ見たままの歳じゃなかったか……ていうか、俺より年上じゃね?)
口調を敬語にした方がいいかと一瞬考えたが、そんな事はクムトも望んで無いだろうと今迄通りに話すことにする。
「何時気付いた?」
「この世界に来てからって事なら十四歳ですね。正確には、あの時にシュウさんと出会った部屋の中から…ですね。だから記憶的に言うと実際には十八の時のままなんですよ」
「今迄のクムトの記憶は?」
「あります」
「てこたぁ今迄聞いた話も……」
「まあ子供に本当の事を教えてたかは分かりませんが、概ね本当だと思います」
「なるほどなぁ」
シュウの何か考える様子にクムトが一瞬不思議そうな顔を浮かべたが、すぐに表情を元に戻した。
「他は無いですか?」
「いや、最後に……これからどうしたい?」
シュウは一拍置くと真剣な声音で問いかける。
クムトも真剣な表情で考え始める。
「うーん。そうですね帰りたいかと言われればそうですけど、シュウが聞きたいのはそんな事じゃないでしょ?」
「それも…だな」
「取り敢えずはシュウさんと一緒に行きます。そしてどうするか考えます」
「……分かった」
「なら、僕からも質問いいですか?」
シュウの質問が一通り終ったと感じたクムトは、逆にシュウに質問の許可を求める。
「あぁ」
「シュウさんはどうしますか?」
「サコィを元に戻す方法を探す」
シュウは迷い無く、簡潔に力強く答える。
「ならシュウさん自身の事は?」
「多分俺は一度死んでんだ。ああしたい、こうしたいってのはあったかもしれんが今更だ。このまま此処でこの身体で楽しく生きていくさ」
少しおどけた風に答える。
「戻りたいとか考えないんですか?」
「それこそ今更だろ。前世に悔いはないさ」
「……強い…ですね」
クムトの顔に何とも言えない表情が浮かぶ。
「そうでもないさ。俺も男の子なんだし……ちょっとこのファンタジーってのを楽しんでる」
一つ肩を竦め、その後冗談めかして言葉を続ける。
「それは……何となく分かります。僕も男の子なんで。ファンタジーを楽しんでます」
クムトも同じ様に冗談めかして返した。
「そっか……クックック……はあっはっはっはっ……」
「そうですよ……フフフ……あははは……」
二人の笑い声が焚き火の爆ぜる音と共に周囲に響いていた。




