18話
日も昇り二年四組の教室は喧騒に包まれていた。ただ様子がいつもと違うのだ
無いのだ。いつもは頼りなく三組と四組を隔てるベニヤ板の壁が……
「どういうことだよこれ」
「なに、風で飛ばされちゃったの? 」
「薄すぎて削れてついには消えちゃったか」
冗談を言えるのは生徒のみ、先生たちはあわてふためいている。だが時間は待ってくれない。ホームルームの時間になりいつものように渡部先生が教室へ顔を出す。
「号令、って……恥ずかしいなこれ」
教室向きは互いに背を向けるようになっているため壁がないせいで恐らく向こうの伊藤先生とバッチリ顔が合ってしまうのだろう。
そしてこの瞬間、長く抱えていた二年三組の問題も一時的ではあるが解決を迎える。
二年四組には生徒のうち渡辺三十五名で田辺が一名。
隣の三組には生徒のうち渡辺が一名で佐藤が三十六名。教室を隔てる壁が取りさらわれた今それは合計され、渡辺三十六名佐藤が三十六名——ワタナベーションは発生しているものの別姓の比率は同数な為ワタナベーションによって発生する嫌悪感はゼロである。そして——
「先生、壁の件ですけど僕がやりました」
「お前か、よしわかった……職員室、行くか」
恐らく見当を付けていたのだろう。さして驚きもせずに先生はホームルームを終え、裕太を引き連れ教室を後にする。
「田辺君、その……どういうことかわからないけどうちのクラスの問題は解決できたみたい、兼也君みんなと話してる……ありがとう——ごめんね」
ホームルームを終えた伊藤先生が裕太に話し掛けてくる。それはよかった。これで解決だ。
教室を見ると弥生と愛が心配そうにこちらを見ている。二人には何をするか言ってなかったから驚いただろうな……。
目線を三組に移すと伊藤先生が言ったように仲良さそうにクラスメイトと話す兼也の姿がある。楽しそうで何よりだ。裕太はありえないことではあるが兼也のことを心のどこかで許してしまっているのだろう。
あんなことをされたというのに自分はお人よしなのかもしれない。
こんなことをしてしまったのだ、ドライバーでベニヤの端のネジを抜くところまでだったらどうかわからないが流石にトンカチで破壊したのはお咎めなしにはならないだろう。




