19話
あれから一か月、裕太は数々の先生の怒声、反省文、草むしり地獄に耐え凌ぎついに解放された。
もちろん飛び級の話もなくなり、これからまたあの教室で過ごすことになるだろう。
壁の破壊された教室は弥生の提案で防音性のあるプラスチックの透明なプレートを新たな壁として迎え入れたらしい。
そうしていることで先生たちが緊張感を持って授業ができてなによりおもしろいということで今のところは評判のようだ。透明であることからワタナベーションは二つの教室で共有され、兼也も順調にクラスに馴染めているらしい。
裕太が教室へいっても以前と変わらない、ワタナベーションにより差別を受ける状態である。これをあと一年、と考えると中々しんどいが、まあ先生たちの説教を受けた後だからかそこまで苦に感じない。それに——
放課後になると裕太は部室へとゆったりと向かった。久し振りに歩く道に新鮮さを感じる。
寂れた階段を上がるとそこには元茶道部、元救済部の部室が見える。この前までとはまた違った緊張感を抱きながら勢いよくドアを開けると、
「いぇーい! 部長出所おめでとうございま~すお勤めご苦労様です! 」
「……お帰り」
「おつかれ」
パンパンッ! と勢いよくクラッカーが鳴り裕太を歓迎する弥生と愛……そして兼也の姿があった。兼也も愛と同様にワタナベーションの影響で目に明かりが灯っている。
「なんでお前いんだよ」
「まあまあ~あの後入ってくれたんだよ~」
「よろしくな部長」
「……お前、なめてるだろ! 」
兼也に突っかかる裕太に愛はオロオロした様子、弥生は諦めてなにやら用意してくれていたジュースを紙コップに注いでいる。
「ほら、まあこれでも飲んで落ち着いて」
「おう、ありがとう。てかこんなん持ってきていいのか? 」
「まあいいっしょ! 気にしない気にしない~」
兼也が増え、渡辺の比率が上がったがワタナベーションの影響はほとんど感じられない。やはり数人ならほとんど被害はないらしい。
教室には裕太の居場所はワタナベーションのせいで全くと言っていいほどないだろう。しかし、裕太にはこの部室がある。普段の様に取り繕った自分ではなくありのままの自分をさらけ出せる場所が……。それだけでも今は満足だ。
ドンドン! 四人のいる部室へと誰かが助けを求めに来たようだ。
「やばい、ジュース隠して」
「あっ、弥生ちゃんキャップ閉めて閉めて! 」
「裕太も見てないで手伝ってくれ! 」
「嫌だね、はい、入っていいですよ! 」
しかし裕太は決して諦めたわけではない。今は無理かもしれないが足を止めることはしない、きっとワタナベーションによる問題を解決し、いずれはスクールカーストの頂に上り詰めてやるのだ!
裕太の歩むスピードは遅いが、その歩んだ道をこれからも引き返すことはしないだろう。




