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妄想令嬢モニカの華麗なる重婚  作者: 真岡鮫


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2.二人の旦那様

 

 わざと大きな音を立て思いきりドアを閉めた。

 恨みの一つでも言われるかと思ったけれど、意外にも両親はあっさりと去っていった。

 閉したドアに叫ぶこともなく、足音も立てずただ静かに私の前からいなくなった。


 やっと見限ってくれた。

 思わず出た安堵のため息。それでも胸は擦り傷のようにわずかに血が滲んでいる気がした。

 息をすれば痛い。

 体を動かせば染みる。

 そのくらいまだ両親への愛情が残っていたことに一番驚いたのは、自分自身だった。


「……モニカ、お疲れ様」

「フィリップ……」


 彼は振り向いた私を静かに見つめていた。

 差し込む夕日が艶やかな彼の銀髪を徐々に染め上げていく。

 窓の外に広がる景色と同じ——冷静と情熱が混ざり合う瞬間。

 それはまさに私の旦那様であるフィリップを象徴する色だ。


「モニカ、この景色を一人で見るなんてずるくない? どんな時も一緒って言ったのに……」


 そう言った彼があざとく首を傾げると、虹色に輝く星の耳飾りがキラリと揺れた。


「ごめんなさい。でも、見ていたんでしょう」

「しっかり見てたよ。勇ましいモニカの背中を」

「やめて……恥ずかしいわ」


 耳元でクスリと笑った彼の吐息が耳をくすぐる。


「でも、君はちゃんと言えた。とてもかっこよかったよ」

「フィリップ、ありがとう」

 

 見上げた先には、吸い込まれてしまいそうなほど深く沈んだ青。

 その瞳に身をまかせ自然と目を閉じたその時だった。

 

「ちょっと待った! なんで二人きりの世界に入り込んでるわけ」

「ベルナルド!」


 そこにいたのは、クセのある茶色い前髪の間から覗くガラス玉のように丸い瞳。


「僕だってここにいるんだけど?」

「……邪魔だよ。僕が見えない?」


 フィリップは唇をスッと引き上げ私の首に手を回すと、子供のように頬を膨らませるベルナルドを見据えた。


「見えてるよ、だから邪魔してるんでしょ」


 不機嫌に唇を引き攣らせ、ベルナルドが私に近付いてくる。


「モニカだってひどいよ。僕も君の旦那様なんだよ。なのに、二人だけで……」

「ごめんなさい、そんなつもりはなかったの」

「わざとなんて思ってないよ……でも、寂しかったんだ」


 ベルナルドはフィリップの手を軽く払いほんの一瞬窓の外を見つめた後、思いきり私に抱きついた。


「ねぇ、どうしたら機嫌を直してくれるのかしら?」


 子供をあやすようにベルナルドの背中をトントンと優しく叩く。


「だったらさ、一つお願い聞いて」

「お願い?」

「うん……あのさ」


 瞳を潤ませ私を見上げるその顔はきっと確信犯。

 それでも、次の一言に期待する胸がざわつき始めた。


「今日、一緒に寝てくれる?」


 キュンと痛む心臓。

 でもその瞬間、背後で盛大なため息が落ちた。


「ベルナルド、それこそお前ばかり毎日ずるいんじゃないのか」


 不機嫌に眉を寄せ、フィリップがベルナルドを見据える。


「抜け駆けした人に言われたくないんだよな〜」


 ベルナルドも負けじと意地悪く笑いながら、フィリップを睨みつける。


「二人ともちょっと待って。一旦落ち着きましょう」


 私の言葉が耳に入らないのか、フィリップもベルナルドも私を挟み静かに視線を交える。


 髪を揺らすフィリップの呼吸。

 手の平に感じるベルナルドの体温。


 確かに感じる二人の熱に、不謹慎にも頬が染まるのを感じていた——。


「おい、モニカ! 開けろ」

「……」


 突然、不躾に頭を揺り動かした耳障りな破裂音。

 視界の端で、ゴツゴツした大きな拳が何度も部屋の窓ガラスを叩いている。


「ちょっと……今じゃないでしょ」


 絶妙なタイミングで割り込んできたその気配からあえて視線をずらし、改めて二人に向き直った。


「ねぇ、フィリップもベルナルドも少しだけ私の話を……」

「こら、無視するな。一人だろ?」

「ごめんなさい。アレは無視して大丈夫よ。それでね……」

「いいのか? 手を振り回しておかしな動きしてんの、しっかり見えてるからな」

「……もう!」


 カンッと靴の踵を鳴らし、その勢いで大きくターン。

 振り向きざま窓越しに見えたニヤけた顔が本当に不愉快で、文句を言わずにはいられなかった。


「リアム……ここは玄関ではなくてよ。我が家にご用事なら、どうぞあちらからお越しくださいませ」


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