幼なじみ×過保護=体験日和
~side晴翔~
土曜日。今日も午前中は練習だ。
僕たちが体育館に着くと、琉惺君と……米村さん? が何故か琉惺君の隣にいた。お母さんも一緒のようだ。
僕たちは琉惺君に近づいて三人に挨拶をする。
「琉惺君、おはよう。米村さんもおはよう」と挨拶を交わす。
「米村さん、もしかして……」と美桜が聞くと、米村さんは少し恥ずかしそうに顔を伏せて「体験に……来た」と言った。
それを聞いた僕と健太は、米村さんのお母さんや琉惺君には見えないように、すぐ後ろでガッツポーズをした。人数不足の悩みが一気に解決に向かうかもしれない!
でも、琉惺君は僕たちの喜びようとは裏腹に、珍しくオロオロしていた。彼は米村さんの方を見て、心配そうに声をかけている。
「いいか、詩穂。しんどくなったらすぐに言うんだぞ。約束だからな。俺じゃなくてもいいから、すぐにだぞ?」
おそらく癖なのだろう。琉惺君は、米村さんの頭を優しく撫でながら言っていた。
米村さんも「うん……大丈夫、琉ちゃんにすぐ言うよ」と目を細めながら、大人しく撫でられている。
又始まったよ、琉惺君の過保護が、その優しさを僕達にも分けて欲しいと思うが、僕も美桜に似たような事をしているので何も言えない為、隣に居た健太と顔を見合わせて肩を竦める。
隣にいた米村さんのお母さんは、その様子を見てクスッと笑いながら言った。
「琉惺君、もうその話、四回目よ」
すると、すぐに美桜が米村さんのお母さんに向かって挨拶をした。
「米村さんのお母さんですか? 私は稲村美桜といいます。よろしくお願いします」
慌てて僕たちも挨拶と名前を言う。僕は「山岡晴翔です!」、健太は「木下健太です!」と元気よく言った。
その後、当番の保護者の方と指導陣が来て体育館を開けてくれたので、僕たちは中に入って準備を始める。米村さんのお母さんは、当番の人に付いていき、米村さんは琉惺君が付き添って一緒に準備を始めていた。(シューズも用意してるんだ)。僕はそんなことを思いつつ、急いで自分の準備を済ませるのだった。
~side琉惺~
休日の朝。いつものように俺は練習に行くための準備を始める。詩穂に宿題も教えてもらって終わっているので、練習に集中することができる。(また詩穂にお礼を言わないとな)。
そんなことを思いつつ食卓に行くと、朝早くから母さんが誰かと電話していた。誰だろう?とは思ったが、気にせず朝食を食べ始めた。
食べ終わった頃、母さんの電話も終わったようでおはようと俺は挨拶をする。母さんは「おはよう」と返してくれる。
続けて、母さんは爆弾を落とした。「琉惺、今日、詩穂ちゃんドッジボールに行くらしいわよ。体験だって」。
その言葉に「は?」と間の抜けた返答をして、俺は固まってしまう。
が、すぐに我に返り、「はぁ!?詩穂が?体験だって!?」と慌てる。「身体は大丈夫なのか?だってあいつは……」。そう言ってオロオロしていると、「琉惺、落ち着きなさい」と母さんが言う。
その言葉に、何とか俺は深呼吸して落ち着いた。
俺が落ち着いたのを見て、母さんは続ける。「さっき詩穂ちゃんのお母さんからの連絡でね。私も行くけど、もし何かあったら詩穂のこと宜しくねって言われたのよ」と言う。続けて「お母さんも後から向かうから、今日は詩穂ちゃんと行っておいで」と言われた俺は「わかった」とだけ返した。
(詩穂がドッジボール……? 激しい運動は医者に止められてるはずなのに……)。
玄関を出ようとする俺に、母さんが声をかけた。「詩穂ちゃんのお母さんね、本当は心配だけど、琉惺君が居るなら入部させてもきっと大丈夫だと思うからって、信頼されてるんだからしっかりやっといで!」。
その言葉に、俺の背筋はピンと伸びた。そこまで言われて、できませんなんて絶対に言えない。詩穂のお母さんが、俺を信頼してくれている。その気持ちに応えなきゃならない。
俺は改めて気合を入れ直し、いつも詩穂と待ち合わせをする場所に向かうのだった。
待ち合わせ場所に着くと、詩穂が少し緊張した面持ちで立っていた。その隣には、詩穂のお母さん。
「詩穂、おはよう」
「琉ちゃん、おはよう」
「じゃあ、行きましょうか」と詩穂のお母さんが言う。
俺たちは並んで体育館に向かった。道中、俺は何度も詩穂に注意を促す。
「いいか、詩穂。しんどくなったらすぐに言うんだぞ。約束だからな。俺じゃなくてもいいから、すぐにだぞ?」
四回も繰り返してしまったのは、母さんが言った通り、俺がそれだけ心配している証拠だった。だが、詩穂は嫌がることもなく、ただ優しく微笑んで「うん、わかった」と答えてくれた。
(俺が、詩穂を絶対に守る)。
強く、心に誓いながら、俺たちは体育館の扉を開けた。
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