練習×メンバー集め=数は力
~side晴翔~
土曜日。今日も午前中は練習だ。
僕は目覚ましが鳴る前に目を覚まし、顔を洗って、軽くストレッチをする。朝から重たい体を動かすのは少し億劫だけど、体育館でみんなとドッジボールができると思うと、疲れもどこかへ飛んでいってしまうようだった。
手早くいつものルーティンを済ませて食卓に向かうと、珍しくお父さんが料理をしていた。
「お父さん、おはよう。お母さんは?」
「おお、晴翔、おはよう。母さんはまだ寝てるよ。普段から頑張ってくれているから、今日はゆっくり休ませてあげようと思ってね」
お父さんは、フライパンで香ばしい匂いを立てながら言った。僕は頷いて食卓に着く。今日の朝食は、焼肉ライスバーガーだった。
朝から重いと思うかもしれない。確かに一般的な朝食ではないだろう。でも、お父さんの作るライスバーガーなら関係ない。特製の甘辛いタレで炒めた焼肉と、醤油味のライスを組み合わせたバーガーは、食欲のない朝でもペロリと食べられる。むしろ、朝からこんな美味しいものが食べられるなんて、最高に幸せだ。普段なら三つは固い。
僕は「いただきます」と言って、ライスバーガーにかぶりついた。外はカリッと、中はもちっとしたライスと、ジューシーな焼肉の組み合わせが口の中で広がる。最高だ。
流石に今から練習なので、今日は二つと、バナナやヨーグルトなどのいつものセットだけにした。本当は三つ食べたい気持ちをぐっとこらえる。ドッジボールは運動量がすごいから、食べ過ぎて動けなくなったら困る。
あっという間に食べ終わり、僕は「ごちそうさま」と言って食器を片付けた。お父さんはテレビを見ながら、ゆっくりと朝食を食べている。
食器を洗い終わり、片付けていると、お父さんが僕の方を見て言った。
「ドッジボール、楽しいかい?」
その言葉に、僕は洗い物をしていた手を止めた。
「うん!めっちゃ面白いよ!!」
僕の声は、少し上ずっていたかもしれない。でも、本当に楽しかったから、言葉が次から次へと溢れてきた。
「僕にも出来る事がたくさんあるんだ!前は運動神経が悪くて、スポーツは全部苦手だって思ってたけど、ドッジボールは違うんだ。僕のキャッチが、チームの役に立てるんだよ!」
僕は、大町の怪物と言われる、開成君の凄まじいボールをキャッチした時の興奮や、美桜の立てる作戦の中で自分のキャッチがどう活かされるのかを、身振り手振りで説明した。僕があれこれ言っているのを、お父さんは相槌を打ちつつ、ニコニコしながら聞いてくれていた。
話し終わった頃、お父さんは優しい笑顔で言った。
「そうか、そうか。晴翔がそんなに夢中になって、楽しんでいるのならいいんだ。これからも怪我に気をつけて、思いっきり楽しみなさい」
「うん!」
僕は力いっぱい頷いた。お父さんの「楽しんでいるのならいい」という言葉が、胸に染みた。
僕は練習に行く準備を始めるのだった。
準備も終わり、玄関を出ると、もう美桜と健太が待っていた。
「おはよう!」
「おはよー、晴翔!」
「おう」
僕たちはみんなで喋りながら練習に向かう。今朝の話題は、もちろん昨日の二人のことだ。
「今日も来てくれるかな?」と美桜。その声は、期待と不安が半分ずつ混じっているようだった。
「来るだろ!アッキーもユッキーも身体動かすのは好きだから、ドッジボールの楽しさが分かれば、きっと入ってくれるさ」と健太が自信満々に言う。
そうだよね。健太の言葉に、僕たちも頷く。(入ってくれるといいな〜)。
もし二人とも入部してくれたら、チームは一気に十人になる。あと少しでフルメンバー。そうなれば、練習の内容も、試合の戦略も、もっと広がるはずだ。
「昨日、健太の年下の子たちを誘うって話、監督に話してみる?」と美桜が尋ねる。
「ああ。今日も来なかったら、監督に相談してみるつもりだ。俺が仲のいい奴らをリストアップするから、美桜に確認してもらって、晴翔に一緒に誘ってもらう」と健太は既に作戦を立てているようだった。
「なんで僕も?」
「お前のキャッチの話は、ドッジボールの面白さを伝えるのに一番インパクトがあるだろ」
「そうかな〜?」
僕はいまいちピンと来ないがドッジボールの面白さを語れば、みんなドッジボールに興味を持ってくれるかもしれない。そう考えると、少し自信が持てそうな気がした。
そんな他愛のない話をしつつ、僕たちは体育館までの道程を歩いて行くのだった。
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