決着×勝敗=結果が全てでは無い
~side晴翔~
主審の笛と共に内野人数の確認をするため、僕たちはその場に座る。(勝てなかったか〜)。そんなことを思いながら座っていた。人数の確認も終わり、主審からのコールを聞く。「庚午4人」「己斐5人」。
「それでは立ちましょう、お互いに礼!」と主審が言い、僕たちは大きな声で「ありがとうございました!」と言って、コートに一礼してすぐに出た。そのまま自分たちの荷物などを置いている場所に移動して、ミーティングを行うため、山本監督の元に向かっていった。
~side山本監督~
(負けたか)。結果だけで見ればそうだろう。しかし、自チームのD2メンバーだけで初めての試合。そしてわずか一人差。さらに最初の人数にもハンデがあってのこの結果だ。
私は心底、この子たちのポテンシャルと可能性にワクワクしている。さらに、反省すべき点や課題も見えた。そんな価値のある一戦だった。少し思考しすぎたなと思いながら、待機場所に移動する。選手たちはすでに集まり、私を待ってくれていた。すぐに向かい、みんなに「みんな、お疲れ様」と声をかける。
そして続けて「今日初めて庚午のD2の選手だけでの試合だったけど、どうだった?」と問いかける。
「勝てなくて悔しいです。けど、やるべきことはできたと思います」と琉惺。
「楽しかったです。ただ、攻め急ぎすぎました。もう少しパスを回して、外野からアタックの展開の方が良かったかもと思います。そこが悔しいです」と美桜。
「ん〜、どうすればカットの龍太郎君を釣る以外でかわしつつアウトを取ればいいかが分かりませんでした。けど、すごく楽しかったです!」と健太。
「朝ごはんを少なくしてて良かったと思いました」
ん?は?晴翔?少し毛色の違う回答に、思わず晴翔の方に向き直る。続けて「己斐の選手、龍太郎君も虎太郎君も、もう一人のアタッカーの子も含めてみんなすごいボールでした」と言い、最後に「すんっっごく楽しかったです」とにっこりと笑った。
その笑顔を見て、みんな頷いた。「ああ、楽しかったな。次も頑張ろう」と、勝利至上主義だったはずの琉惺が言ったことに、私を含めコーチ陣は少し驚く。本当にこうやって成長する場面は、いつ見たって最高だ。彼らと一緒にカラーコートに立ちたい。いや、立たせてみせる。先ほどの試合で思ったことを固く決意して、良かったこと、直した方がいいところをみんなと共有するため、私は話を続けるのだった。
~side琉惺~
不思議な気分だ。俺は自分の気持ちに戸惑っていた。負けた悔しさは確かにある。けれども、今までのようにイライラするような感覚ではなく、次は絶対負けない。そのために頑張ろう。そんな風に思える。
そこでハッと気づく。そうか、これが勝ち負けよりも大事なことなのか。俺は今まで、目先の勝ち負けだけにこだわりすぎていたことに改めて気づく。目の前の勝利に溺れ、負けたらイライラして周りのせいにする。そりゃあ開成には勝てないはずだ。
彼は負けても先を見ていた。次はどうしようか、あんなことをやってみようか、と。才能の塊のような奴が、無我夢中で楽しみながら成長するのだ。そりゃあ、目先のことに囚われているようじゃ一生勝てない。けど、今日、本当の意味で気づけた。
開成、お前のいるステージに俺は、いや、俺達は必ずたどり着く。楽しみにしておけよ。俺は一人、心の中でそう固く決意するのだった。
晴翔 side
ミーティングが終わり、僕たちは水分補給に水筒を取り、僕は美桜と健太のところへ向かう。二人とも、少し疲れたような顔をしていた。
「健太、美桜、お疲れ様!」
そう声をかけると、美桜は「お疲れ様、晴翔」と優しく微笑んでくれた。健太も「お疲れ」と返してくれる。
「あのさ、最後のパス、ごめん。力んじゃって…」
僕は正直に謝る。健太は気にすることない、というように首を横に振った。
「あれは俺がなんとかするべきだった。美桜も言ってたけど、俺がもう少し早く動けば、もっといいパスコースが作れたはずだから」
そう言って、健太は悔しそうな顔をした。
美桜はそんな健太に、「健太は十分頑張ったよ。それに、次の作戦の課題が見つかったから、むしろ収穫だよ」と慰める。
美桜の言葉に、僕は驚いて彼女を見る。「収穫って、負けたのに?」
美桜は頷き、「そう。龍太郎君が最後にアシストキャッチしたでしょ?あれは予想外だった。でも、逆に言えば、ああいうアシストキャッチもできるってことが分かったから、次の試合ではそれを逆手に取った作戦を考えられる」と真剣な目で語る。
「晴翔のキャッチもすごかったよ。あのアタックは普通取れない。おかげで、私たちにもまだチャンスがあるって、みんな思えたんだから」
美桜の言葉に、僕は少し恥ずかしくなる。健太も「美桜の言う通りだぜ。お前のおかげだよ。ありがとな」と、少し照れくさそうに頭をかいた。
「どういたしまして。僕、ドッジボール、本当に楽しい」
僕がそう言うと、二人は顔を見合わせて、にっこりと笑ってくれた。この仲間と一緒なら、どこまでも頑張れそうだ。僕たちは水分補給を終え、次の試合の準備を始めた。
今週土曜日が仕事の関係上もしかしたら投稿が出来ないかもしれません、何とか仕上げられればいいのですが、頑張ります、文字の乱れはご容赦ください。




