指示×作戦=司令塔がいることの重要性
~side晴翔 ~
琉惺君が主審の笛と同時に思い切り走り込んでいき、ゴールキーパーのように身体を捻る。(あの動きは!)。僕はすぐに気づく。そして、己斐の左サイドの選手に向かって、必殺の無回転アタックを叩き込む。
無回転の球は本当に不規則に動く。構えていた選手も、キャッチできそうな場所に来ていたはずの球が、突如、予想もしない方向に動くのだ。投げられる方はたまったものではない。不規則に動いたボールは、己斐の選手の右手に当たり、そのままコートに落ちる。「8番、アウト!」と主審のコールが響く。
その声と同時に、美桜が「守備ライン!」と大きな声を出す。その声に、琉惺君以外のみんなはすぐに守備体形に戻り、次のアタックに備える。琉惺君は、アタックを打った反対側へ向かって移動していく。そして、もっ君が「みんな、来るよ!構えてね!」と美桜の作戦を補足する。
己斐の選手は落ちたボールを取ろうと必死に拾いに走り、なんとかボールを取った。これでようやく6-6。さあ、また守備の仕事だ。僕は気合を入れ直し、しっかりと構える。そして、己斐の選手は虎太郎君にパスを出した。
しかし、そのボールは虎太郎君に届くことなく、琉惺君にカットされた。美桜の「守備ライン!」の掛け声は、パスカットチャレンジの合図だ。僕が教えてもらった二つのうちの一つで、琉惺君が失敗した場合はすぐに拾えるように、普段よりも守備のラインを下げる。そのため、ラインを早く作る必要があるので、みんなでいっぱい練習したことの一つだ。今回はうまく決まった。
さあ、また庚午の攻撃だ。僕はカウントを数える準備を始めた。
~side山本監督~
(これは想像以上だな)
私は顔には出さないが、美桜さんの指示に驚いていた。顔に出さないようにしていたが、隣にいた鈴木コーチが「彼女、すごいでしょ?」と聞いてきた。私は素直に「正直、想像以上でした」と言う。鈴木コーチは「ですよね」と言いつつ、「彼女は確かに基礎能力は、一緒に入部した二人に及ばないかもしれません」と続けた。
「けれども、彼女はそれを持って有り余る司令塔としての素質がありますからね」
鈴木コーチは嬉しそうに言っていた。実際、美桜さんが的確に指示を出しているからだろう。琉惺は普段よりも全力で動けている。考えることを少しでも減らしてもらえているからだろう。(勉強させられていた時は悲壮感がすごかったけどね)。
実際、先ほどのパスカットも、普段ならチャレンジするか微妙な速さのボールだった。だが、指示を聞いて実行するだけであれば、取れるように動くことができる。見事にカットしてみせた。琉惺は「シャア!」と声を出しているが、美桜さんは「ナイスキャッチ!」と言った後、すぐに試合の状況に集中し始める。
そんな光景を見て、私は彼らを六年生の時、カラーコートに立たせてあげないとな、と改めて思うのだった。
~side晴翔~
再び始まった攻撃。琉惺君はまずは健太にパスを出す。いいコースのパスだ。しっかりと繋がり、健太が守備ラインを動かして乱す。そして、決めるためにもっ君にパスを出した。もっ君もしっかりと受け取り、アタックを打つ。ボールは3番の選手に当たったが、龍太郎君がアシストキャッチを成功させ、相手ボールになってしまった。
僕たちは即座に守備に戻る。投げたもっ君もすでに構えていた。だが、龍太郎君はそのまま強烈なアタックを打ってきた。必死にもっ君もキャッチしようとしたが、アウトになってしまった。スコアは5-6。再びリードを許してしまった。
さらに悪いことに、ボールが相手コート側に転がっていっていた。僕は慌ててボールを取りに行こうと走り出す。(間に合うか?)。そんな風に思いながら必死で走る。山本監督が「晴翔、間に合わない!戻れ!」と叫んでいたが、時すでに遅し。目の前にはボールを持った龍太郎君が、僕目掛けてアタックを打とうとしていた。
そして、アタックは放たれた。
(逃げない!正面で、少し後ろに下がって、体全体で包み込む!)。時間にして一秒未満だっただろう。凄まじい衝撃が僕のお腹に伝わる。(朝ごはん軽めにしておいて良かった……)。もし普通に食べていたら、吐いていただろう。しかし、そんな衝撃を感じたお腹には、しっかりとボールが収まっていた。
試合を書くのが結構大変です、恐ろしい事にまだ1試合目と言う事、俺たちの戦いはこれからだENDにならないよう精進します。




