本番×人数不足=待ち続けた男
コートに入ると、僕たちは審判が数を数えやすくするため、その場に座って待機した。健太は外野へ移動し、線審さんに「お願いします」と言って座っていた。
僕たちは12人よりも少ないため、その分を他のチームから来てもらうのかなと思っていた。練習試合ではよくある光景らしい。しかし、山本監督は無理を言って、僕たち8人だけで試合をさせてほしい、その代わり相手は11人で構わないからとお願いしていたようだ。人数に差があるはずだったのだが、己斐も4年生以下となるとフルメンバーとはいかず、内野には9人しかいなかった。先ほどの試合では内野にいた虎太郎君が外野にいる。(おそらく龍太郎君と、さっきしていた高速アタックを仕掛けてくるのかな?)そんなことを思いながら、僕は審判の合図を待っていた。
side 琉惺
(俺は、待っていた!D2、ひいては4年生以下だけで試合ができる日を!)
顔には出さないが、心の中は喜びで溢れていた。それは、半年以上くすぶり続けていた、強い願いが叶う瞬間だったからだ。
3年生の途中からドッジボール部に入部し、わずか半年ほどで試合に出られるようになった。練習試合の時は、人数が足りないD2のために、他のチームから選手を借りて4年生以下だけで試合をさせてもらうこともあった。それはそれで楽しかった。だけど、心の奥底では、ずっと燻っていた気持ちがあった。「いつか、自分たち庚午D2のメンバーだけで、正々堂々と試合をしたい」。その強い想いが、今日ついに叶うのだ。ワクワクしない方が無理な話だ。
しかし、山本監督から集合がかかった時、みんなの顔はガチガチだった。初めてのちゃんとした試合。その緊張は、痛いほどわかる。(俺も初めての試合はあんな感じだったな……)誰もがプレッシャーを感じているのが伝わってきた。
だけど、監督の「全力で楽しんで」という言葉に、全員が「楽しむ!」と声を揃えた瞬間、みんなの表情は一気に明るくなった。固くこわばっていた顔から、期待と希望に満ちた、あのワクワクした顔に変わっていくのがわかった。
そうだよ。初めての試合かもしれないけど、楽しもうぜ!
みんなの表情から固さが取れた頃合いで、俺たちはコートに入っていった。
すると、己斐の龍太郎がこちらを見ながら、にやりと笑ってアイコンタクトを送ってくる。(負けないぞ)と。
俺も負けじと、力強くアイコンタクトを返しておく。
(龍太郎、君は、いや、大町の選手も、そして己斐の他の選手も驚くはずだ)
そう思いながら、俺は隣に座っている晴翔を見た。
ドッジボールを始めて、たった10数回の練習で今日を迎えている。彼のキャッチは、紛れもなく本物だ。その才能は、まだ誰にも知られていない。だけど今日、それが庚午の仲間以外に知れ渡ることになる。おそらく、今日の練習試合の後には、対戦相手の己斐や大町で「すごいキャッチをするやつがいる」と噂になるだろう。そして、来月行われるペイサーズ杯の時には、隣県のドッジボーラーたちにも「キャッチの凄いやつ」として知れ渡るはずだ。
大袈裟かもしれないが、俺は確信にも似た何かを感じていた。
当の本人は、隣にいる美桜と「楽しみだね」なんて言いながら待っている。
(そうだ、そのくらい肩の力を抜いた方が、君らしいよ)
俺は安心して、ジャンプボールのイメージトレーニングをし始めた。おそらく己斐のジャンパーは龍太郎。彼もまた、己斐のツインエースの一人だ。あの二人のパスワークとクイックアタックは、D1の試合を見ていても驚かされた。だけど、俺だって、負けるつもりはない。
(さあ、最高の試合にしようぜ)
俺は心の中で静かに闘志を燃やしていた。
ソフトボールの話も書きたいけど、まずはコチラの物語を終わらせてからにします、
文字の乱れはご容赦ください。




