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カラーコート  作者: 真紗
40/77

食×ゲン担ぎ=触れてはならない深淵

気がつけば40話、練習試合すら始まってないと言う体たらく、申し訳ございません、精進します。文字の乱れはご容赦ください。

その後、健太は琉惺と組んで木村コーチから連携の確認練習を受けていた。その間、僕たちは別のメニューをこなした。気づけばもう練習の終わりを告げるブザーが鳴っており、みんなで挨拶をして解散となる。

帰り道、僕たち3人は並んで歩いていた。太陽はちょうど真上にきて、ジリジリと僕たちを照らしていた。

「しかし、次の日曜日に練習試合とは言え試合ってなると、やっぱり緊張するけどワクワクするな!」

健太がはしゃいだ様子で言う。隣の美桜は、そんな健太の言葉を聞きながら、僕の顔を覗き込むようにして言った。

「晴翔、今週中にある程度ルールを把握しておこうね。ぶっつけ本番で混乱しないように」

「二人ともやる気がすごいね」

僕は素直に感心した。ドッジボールは大好きだけど、試合となるとやっぱりまだ少し不安がある。

「なんだ?晴翔は楽しみじゃないのか?」

健太が少し不思議そうな顔で僕に聞いてきた。

「もちろん楽しみだよ!でも、それ以上にどんな雰囲気なのか気になって、少し不安が勝ってるかな」

僕がそう答えると、美桜も小さく頷いた。

「私も楽しみだけど、不安が少しあるかな」

すると、健太がからかうように笑いながら言った。

「そんなの、土曜日に晴翔のおばあちゃんの店でお好み焼き食べればいいだけじゃないか!」

そうだ、その手があったんだ!僕たちは不安になれば、おばあちゃんの作るお好み焼きを食べればいい。それは僕たちにとって、いつだって最高の特効薬だ。

僕は天啓を得たかのように目をキラキラと輝かせていた。美桜は隣で、「そうだね、晴翔は今から目をキラキラさせないの」と、少し呆れ気味に、でも笑顔で言った。

その時、僕たちの後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「お好み焼き?」

振り返ると、そこにいたのは琉惺君だった。

「僕のおばあちゃん、お好み焼き屋さんなんだ。僕たち3人のおまじないみたいなものなんだよ」

僕がそう説明すると、琉惺君は納得したように言った。

「なるほど、3人にとってそれが勝負飯なんだな」

琉惺君はよく分かっている。僕は大きく頷いた。

すると琉惺君は、僕の全身を上から下までじっと見つめ、続けて言った。

「だけど晴翔君、君は少し食べ過ぎなんじゃないかな?豚玉Wって、相当の量だと思うんだけど……」

その言葉を聞いた瞬間、僕と美桜、そして健太の3人の間に、一瞬の静寂が訪れた。

「ばっ!琉惺!なんてことを言いやがるんだ!」

「琉惺くん、それは言ったらダメ!」

健太と美桜が慌てた様子で、声を揃えて琉惺をたしなめる。その様子は、まるで二人が示し合わせたかのように息がぴったりだった。

しかし、僕の耳にはその声は届いていなかった。

「おい、琉惺、豚玉Wで食いすぎだって?何を訳の分からないことを言っているんだ?」

僕は信じられないという顔で琉惺を睨みつける。豚玉Wは、僕の人生において欠かせない、言わばソウルフードだ。それを「食べ過ぎ」と言われるなんて、僕の全てを否定されたような気分だった。

「えっ?えっ?は、晴翔くん?」

琉惺は僕の剣幕に戸惑っているが、豚玉Wの素晴らしさを、今すぐ彼に伝えないといけない。僕にはその使命がある。

「よく聞け、琉惺。豚玉Wというものは、ただの食事じゃない。そこには、お好み焼きという完全食の真髄が凝縮されているんだ」

僕は早速、熱弁を始めた。まず、卵と生地そしてそばが2玉入ることで生まれる、圧倒的なボリューム感と満足感。そして、その間に挟まれた豚バラ肉のジューシーな旨味と、キャベツの甘みが、口の中で完璧なハーモニーを奏でる。さらに、香ばしいソースとマヨネーズが、その全てを一つにまとめ上げる。

「これは、人間が生きる上で必要な栄養素、炭水化物、タンパク質、ビタミン、ミネラルの全てを、この一枚で摂取できる、まさに奇跡の食べ物なんだ。だからこそ、豚玉Wは『完全食』なんだよ!」

僕が熱く語っている間、僕の幼なじみ二人は、遠い目をして諦めた表情を浮かべている。

「だからさ、豚玉Wは、麺と豚肉を倍にすることで、一玉だけでは味わえない、重厚で深みのある旨味が生まれて……」

僕が延々と豚玉Wの素晴らしさを語り終える頃には、とっくの昔に他のチームメイトは全員帰ってしまっていた。最後に残ったのは、僕と、呆然と立ち尽くす琉惺、そして当番の保護者だけだ。

「あら、晴翔くん。もう帰る時間よ。そんなに熱心にお話しているところ悪いけど、そろそろ外に出なくちゃ」

保護者の方に注意されるまで、僕は豚玉Wという完全食の説明を琉惺にし続けるのだった。

琉惺は、僕の熱弁に圧倒され、ただただ茫然としていた。彼の表情は、「ドッジボールの勝負飯が、なぜそこまで熱く語られるのか」という困惑と、「豚玉Wの魅力」という新たな知識を得た衝撃が入り混じったものだった。

その日から、琉惺は僕を見るたびに、少しだけ複雑な表情を浮かべるようになる。そして、練習中、僕がボールをキャッチするたびに、「豚玉Wのおかげか」と、小さく呟くようになった。

この日から、僕たちの友情は、ドッジボールだけでなく、お好み焼きという新たな絆によって、さらに深まったのだった。


久しぶりに熱中症になってしまい倒れかけました、皆様はこまめに水分補給しましょう。

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