どっかの海賊志望はただその思想を否定する
始の時代の魂であるエンブリオ少年がそんなことを考えながら、馬車で静かに眠っている間。
それとほんとうに遠く離れている国……いや、厳密に言うと船を乗る必要はなく、歩いてなんとなくいける地域のどっかの国に、少女はいた。
白い髪をしてボロボロの服を着てる……存在そのものが灰色の少女は静かに否定した。
「いや、それはぜんぜん終わってない」
なんのことか?
「きみのことであり、わたしのことだ」
わたしのことであり、きみのこと?
「きみの記憶に接触するものがいる」
ううん?それはおかしくないか。つまり、灰色の呪いにかかったまま、自分の自我を保っている人がいるということか?それはありえないんじゃないか。
「いや、違う。別に疫病にかかってはいないだろう。ただ触れる気がするから気持ちが悪いだけだ」
そんなことができるのか?いや、クララよ。それはありえないじゃあないか。原理、仕組みも目的も方向もぜんぜんわからないけれど、わたしの一部である、もしかするとわたしが一部である非凡の奇病、灰色の呪いは……
「前がながい。尺をかせぎすぎ。ミ=ゴは自分の話が長すぎる」
話が長すぎるのはくららも同じだ。
「わたしは御伽噺の権威者だからいいの。きみはただ無数の人に感染しただけで、別にその物語を知っても聞いても見ても考えてもないじゃない」
いや、知ってるよ?いっぱい見てて、言ってる。きみのわからない異国の人にだって、わたしはそこそこ移ってるよ。その証拠に、きみも普通にはじめて見るものなのに、勝手に知るのが多いじゃないか。それはきみがわたしを通して灰色の呪いに移っている人、そして移ったことがある人の考え……残留思念に接することができるからだ。だからきみがオーソリティとして言っているそのとぎ話さえ、わたしと繋がっている語彙で考える事ができるのだよ。
「それは正しいね。なら、わたしたちはお喋りが好きすぎる。なんの話だった?」
我は灰色の呪いの仕組みの話だったと思うけど。それなんだ?神話生物か?
「あ、そうだ。だから灰色の呪いは人に感染した場合は、死者も生きた人もいったん触れて動くようにするけれど。それは呪いが完全にそのものを支配している状態だと言ってもいいから、今の変な感覚はそれではない。ただ、『繋がってる、その対象である記憶』に直接に触れるものがいるのが感じる」
わたしはそんな感覚ぜんぜんないけど。
そしてクララと呼ばれた少女は持っている枝で、地面をこんこんと打った。
「この地上のようなものがきみでありわたし、『灰色の呪い』。そして、その記憶のようなものはこれに地下に埋められてるの。どうぜんその誰かさんは地上という段階と関わってないから、すり抜けて記憶だけを触ってるから灰色の呪いはその感覚がわからないのだよ」
ならなんでくららは知るのか。
「わたしはわたし自体が『ずっとそんな状態の死者』だから。10才になるまえに風邪でいなくなって、痛みも眩暈も吐き気もぜんぜんない、灰色の呪いが動かしているくららが夢を見ているのと同じ状態だから。だからわたしはなんか同じ夢を見ている人がいるな、という感覚はあるということ」
理解した。いぜんかかった奴が何かの秘術で自分に「灰色の呪いになった時の記憶」を触らせているのだ。
「そうだと思う。物好きだね」
もともと、苺参ちゃんの記憶と白紙くんの記憶が混在している、我が言うにもなんだがまさにカオス過ぎるファンタジアが、なにがそんなに好きで何回も見ているのかわからないな。
「うん……だから辞めて欲しいけど、いったん近づいてしまったから仕方がないらしい」
少女はその存在自体が灰色。ずっと死者と生者の境界を彷徨い、ただ自分の「森の姫様」という理想を貫くために日々を頑張っている亡霊だ。属性は幽霊ゆえの霊と、我が強制的に持つようになってる水だ。クロマはたぶんまだ決めてない。
「そう、森の姫様。いったんわたしの亡霊の状態のまま、わたしは最大限幸せに生きたいからその理想郷を目指してやっていきたいけど、いつも覗かれる気持ち悪い感覚がすると困る事だよ」
その原因を探して「こいつ、見るのをやめんか!」と裁くのはどうだ?
「考え方が物騒過ぎる。そして感覚がするだけで、それがどっちのどいつなのを知る方法もないでしょう」
それはそうか。
「それは別にいいんだよ。いいけど、ただその『灰色の呪いの記憶』にね、過去の後悔がもう終わったことだという意見が挟まれてね、ただそれはわたしでありわたしがこう地表を歩いている以上、ぜったい終わっていないことだということを思っただけ」
うん、それはそう。何もかもを失って、実はなんでも変わったことなどない。ただあるのは薄い期待と失望と後悔の休戦だ。わたしはただ散り散りになっている非凡のものなんだけど、それは確実に感じている。
灰色の呪いが存在する以上、その意図と意思は残っているのと同じだから。
「そう。終わっていません。それが今のわたしの答えでいいよ」
作家が今日『ゾンビランドサガ劇場版』を見たからクララ・ミリネが急に出ました。めっちゃ久しぶりだな。




