追加料金
なにか人ではないのだ、あの人は。砂漠を渡って持っている知識をなんとか隠しながら、適切に普通の人の様に身分を作って生きている設計者、アルベルト・レグノ。もちろん本当の年など知る術がなくて、ただここトスカーナ地方で活動を始めていて、様々な地方の建築に関わっていることを、そしてフィレンツェやピサ、それ以外も様々なアルティとの鳩を送ったり行商人との連携をして情報収集を確実にしていると言うが……別に彼自身が何かの大きい勢力を作り出そうとする様子がない。
ただコツコツ働いているのだ。それが彼なりの「魔法生物としての生き方」みたいなものなのかもしれないけれど、いったん今回の「大魔術」の日程は彼や彼を含める他の「ラファエル・ムジカが実は容認している知り合い」の人脈で成立ができるくらいの頭おかしいことだったので(何日で村一つだ)ぼくも彼の仕事ぶりに普通に助けられた。はあ。
「平凡の技術者たちの仕事の報酬もちょっと大変でしたよ。この大魔術の後始末は『物語としても』別に表に出ないものなんですよ。ぼくたちが風の刃だ、よくわからんぼくの『特大級の土煙』だをして怪物を倒した、までは普通に非凡使いたちの話には乗れる話なんだけど、その次はなるべく『ないものに』『すばやく』済ませる必要があったから、そのための追加料金がかかったのです。結局、一部は欲しい人に土の堂の物流を少し流通することで解決できましたが、それもそれで大変でしたね」
「そうですね。穀物や、蝋燭・紙・宝石・金属。有料道路の利用契約を貰ったアルティもありましたね」
「どうしても値段を合わせないといけなかったから」
「はは」
もちろんその「人の好きにしてくれる」アルベルト氏だって追加料金には変わりがなく、彼はその中で「宝石の方がいい」と言い出した。彼は人の非凡使いでもないから逆の逆に他の非凡使いの組織に魔力素材の情報が漏洩される心配はないかも知れないけれど、これもぼくが彼に恩を着て気が緩くなっただけで、ちゃんとしないと。水の堂に頼んで、洗えるようなものは大体魔力素材としての痕跡を消して渡す必要がある。そうしないと魔術ギルドのコツや技術が売られて、それが使える黒魔術師などが手に入れると大変なことになるのだから。
それは、モルテ家に破門された人がいっぱいいるぼくの場合、もっとも避けたいところだった。
「土の堂はほぼワインと酢を除いてはギルドで一番、富そのものを扱う堂だから、ちょっとは都合がいい方なんです。他の堂はそのちょっとの柔軟性も出せません」
年上として、中央堂の教授はちゃんと今回の「ものでの支払い」を指摘する。
「まあ、それはそうです」
「中央堂、風の堂はその人力がそのもの資源のようなものですから。水の堂はちょっと似たような立場だけど水の堂のずっと回る水の魔力で容易くディミティスができるし、ワインは年度が決められるので、一部の商品を先に使って後で注ぐなどのことが容易くできません。火の堂はそれ自体がアルティの軍事作戦のようなものだから売り物とはちょっと違いますね」
「はい、デュラはその分扱う素材の数が多彩だから平凡のアルティの立場でちょっと取引がしやすい」
「そうなんです。そうかな。ウリエル学長が代表なのはその理由もあるのかな」
「ギルド長の考えを誰が掴めるのでしょうか」
「はは」
僕は司令部に近づく人影を感じた。
「あ、終わったようだ」
「ほんとう」
「お待たせしました学長!村の再建の検討も終わりましたので報告に来ました」
「ご苦労様。
アルベルト・レグノチーム長も来ましたか」
「はい」
今までずっと思ったのがこの人だ。背は高い方。髪は黑い。いつも眼鏡を付けていて姿勢が堂々だ。属性はなんなのかぜんぜんわからんけど、確実にエーテルを「見て聞く」だけではなくて扱うことができる。
「チーム長のおかげで今回の工事は見えるところ、そしてすぐわからない微妙なところに至るまで円滑に進めたと思います」
「そんな大げさな」
「さすがにここの図面の『完璧な写本』を何枚も書いてくださったのは否定できませんよ」
彼はなんか「あ、それ言います?」といった眉毛でぼくを見た。別にいいでしょう。
「ちょっとの特技です。マギアの皆さんのような素晴らしいものごとができるわけでもない」
「はい、でもそんな平凡の技術のおかげで、今回の大魔術は無事に終わる事ができた。確認は終わったんだな?」
「はい、この人も含め、平凡のアルティの格チームの確認が終わって、僕たちの仕事も終了です。地力がとてもよくて気持ちいい」
「それは確かに。はい、それでは、野営地のガブリエル学長のところにみんな移動しましょう。お疲れ様でした」
「はい」
どんなに険しくて大変な土地だって、こんなに整地をして適切に畑や壁、水路と橋を作って置くとその地形にいちばん合う良い里と変わる。
そう、それは本当に気持ちがいいことで、ぼくたちは成功したんだ。




