22話
前書きと活動報告に好き放題書くのが癖に好きになってきました。好き放題と言っても嘘は言いませんが。
夏弥様(フリックが上手くいかなくてこうなったけど好きだからこのまま)が終わって数日経ちましたが学生の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。真面目にゲームばっかりやってた人は「早く冬休み来い」とか思っているでしょう、来ませんよ。
ヒメは優しいけど意地悪とドッキリが大好き
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湖を復活させた後、ついでにヒメのブラッシングとクルウの鱗掃除をした。どちらもツヤツヤで見ていて気分が良い。
「よし、こんなものか」
満足して出発しようとしたが、そこでふと気付いた。
「さっきみたいに足元を高くすれば遠くまで見えるじゃん」
盲点だった。早速地面を隆起させて確認する。
「あー、北に行かないとダメなのに北東に進んでる」
このまま進むと港湾都市ミナルデに着いてしまう。意外と勇者がいたりするか?
「戻るのも面倒だし先にミナルデに行くか」
地面を戻してじゃれ合うヒメたちを呼ぶ。また汚れてるじゃないか。
「まぁいいか。元気ならそれでいいよ」
クルウが巻き付いたのを確認してヒメに跨る。前にクルウが俺ごと巻き付いて酷い目にあったのでしっかりと待つ。
「あっちに進んでね。ヒメ聞いてる?」
反応しないヒメに不穏な気配を感じるか信じよう。既に進路がズレてるけど信じよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
結果、港湾都市ミナルデに着いた、1週間かけて。ヒメの走るスピードなら3日で着いたはずだが、ヒメの好きに走らせた結果1週間かかった。
飛び降りてヒメの前に立つ。
「ヒメ……」
注意しようと名前を呼ぶと、褒めれ撫でれ、と頭を押し付けられる……可愛い!!鬼可愛い!!
「よーしよし、いい子だ」
頭や首を撫で回す、引くぐらい撫で回す。30分程してさすがにヒメも飽きたのか嫌そうな顔をしている。押しつけの愛はいらないという事ですか。クルウは寝たのか微動だにしない。
「あの〜」
はぁ、クルウはマイペースで照れ屋でさみしがり屋で……可愛いなぁもう。
「すみませ〜ん」
ヒメに巻き付いてない時は尻尾だけでも俺に巻き付けるからな。いじらしいわ。
「すみません!」
「あ?さっきからうるさいんだけど」
これ以上無視すると泣きそうな感じだったので仕方なく返事してやる。
「ひ、ひどいです」
話しかけてきたのは、肩まで伸ばしたブラウンの髪に垂れ目が可愛らしい"男"だ。
「男のくせに可愛い見た目してんじゃねぇよ」
「更にひどい!でも僕が男だってよく分かりましたね。初対面の人はみんな間違えましたよ」
また一人称が僕かよ。
「話すときに喉仏があったし、その服装もミナルデ警邏部隊の正式採用服だろ」
前に資料で見たことがある。ラナの部下が調べたものだが。
「よく見てるんですね。僕はミナルデ警邏部隊の副部隊長のミレイユです」
「女みたいな名前だな」
「親に付けられた名前ですが腹立ちますよ。服も女の子が着そうな物ばかりですし」
超似合うだろうな。
「だから制服を着てるのか」
「だってワンピースとかスカートが有るんですよ!?服を買えない人からしたら贅沢かも知れないですけど僕は嫌なんです!」
力説されても困るんだが……
「その話は後で聞くから何で俺に声をかけたのか歩きながらでもいいから離してくれ?」
「すみません、つい熱くなってしまいました。声をかけた理由ですよね」
門の方に歩きながらでも話す。
「外から来た人が、『外でモンスターを撫で回している危ない人がいる』って言ってたので」
危ない人とは不愉快だな。
「ミレイユは俺を見てどう思った?」
「え、その〜格好いい人だなと」
赤くなるな、男同士だぞ。
「そういう話じゃないだろ。俺が危ない奴に見えたかって聞いてるんだ」
「見えました」
即答かよ。それにさっきまでの赤面はどうしたんだよ。
「お前性格悪いって言われない?」
「えぇ、ミナルデでは有名ですよ。よろしくお願いしますね」
ニコッと擬音が聞こえてきそうな笑顔で言う。あいつの快活な笑顔とは似ても似つかないな。
「その有名人さんは俺にどうして欲しいんだ。俺は街に入りたいんだが」
「ギルドのカードを確認させてもらえれば大丈夫です」
結局やるのは普通の門番と一緒かよ。わざと怒らせようとしてるのか?
「ほら」
「おや、Cランクだったんですね」
試験にさえ受かればBランクになるぜ。
「もうすぐ大多数の冒険者はターベットに行ってしまいますから歓迎しますよ。でも問題は起こさないでくださいね」
ターベットの街はアンセム王国の領土の中で一番ダンジョンの恩恵を受けていて、レイラントの街で情報収集をしたら行く予定だった街だ。
「そうだな、冬季に入る前に長期滞在の準備をしたいんだろう。冬季に動きが活発になるモンスターは悉くが強力だからな」
冬季から春季までの間は、一部を除きほぼ全てモンスターが住処から出ることは無くなる。故に向上心があったり懐に余裕が無い冒険者達はターベットの街に集まり、それらと商売をするために商人達も集まる。
他の大陸との貿易をしているミナルデも例に違わずこの時期は冒険者が減ってしまうのだろう、冬季は船を出せる日が他の3季より少なくなるからな。
「一応滞在目的を聞いてもいいですか」
「ランクアップの試験と人探しだ」
ミレイユも何だかんだ言ってかなり疑っているようだな。
「分かりました、時間を取らせてごめんなさい。僕も街の警邏に戻りますから一緒に行きましょうか」
ミレイユはそう言って街の方に歩き出す。このまま詰所に連れて行かれるとか無いよな。他の街ではトラブルに見舞われたから疑心暗鬼だ。レイラントなんて街に入る前だぞ。
「身分を隠さないといけないのに、何でこうも注目される羽目になるんだ」
俺は従魔達と戯れていただけだぞ。そうだ、忘れてた。ヒメを街に入れると大惨事になるな。
「ヒメ……クルウを連れて湖で待機していてくれないか」
心苦しいがこれも任務の為だ。あの湖は森の深い所にあったし他の冒険者と会う可能性は低いだろう。
『クゥーン』
ヒメはわがままを言うことなくクルウと共に森に消えて行った。
「うわ、既に寂しい。俺が耐えられないかも」
街の中からこちらを見ていたミレイユの所に行く。
「従魔達も一緒で良かったんですが」
「あの子達は人混みに慣れてないから森で待機させる。ギルドには俺が伝える」
そうですかと、ミレイユが前に向き直したタイミングで街を見る。
今いる広場には木造の大きな時計台があり、潮風に吹かれても腐っていないのを見ると何か魔法で保護しているのだろう。時計台の周りで魚を売っているようだが、時間は関係なく漁をしているのだろうか?
「どうしました。ボーッとして」
「昼を過ぎてもまだ魚を食べ売っているのが不思議でな。昔は朝だけだったと聞いていたが」
おぼろげな記憶だがビンセント様に教えてもらった気がする。
「最近新しい魔道具が発明されたんですよ。クーラーボックスと言って、中に入れた物を冷やし続ける魔道具です」
「ほぉ〜」
その発想は無かった。アイテムボックスに入れてしまえば関係無いからな。だがその魔道具の発明者は気になるな。俺が求める魔道具のヒントが得られるかもしれない。
「その魔道具を作ったのが誰か聞いてもいいか」
「うーん、ダメです。本人が有名になるのは望んでないみたいですから」
一瞬悩んだ様子を見せたが答えはノーだった。こんな魔道具を作れるのに欲が無いのは珍しいな、人間ってのはみんな強欲なんだと思っていた。
「そうか、自分で探すからいいや」
「もし彼に何かするつもりならこの街が敵になりますよ」
驚いて顔を見たが嘘では無さそうだ。街全体がその発明者を匿うとは面白い現象だ。いや、魚の鮮度を保つ方法を提供したのだから当然か?
俄然その彼に会いたくなってきた。魔道具を作れる男で街の住民に敬われる存在。
「すぐに見つけられそうだな」
訓練を受けていなければ自分の心を全て隠すなど無理だ。俺は適当に話していれば情報を手に入れられるだろう。
「本当に危害とかは加えないでくださいね。でもクライスさん程度なら返り討ちか」
俺を返り討ちだと?あぁそうか、今は力を隠しているんだったな。そりゃ弱くも見えるか。
「もしかするとCランクにしては弱過ぎるか?」
そういえば全ての力を隠しっぱなしだった。他のCランクを見て調整しよう。
「何をブツブツ言っているんですか?危険人物として拘束しちゃいますよ」
こいつの方がよっぽど危険人物だろ。俺は善良な四魔だぞこの野郎。
「気にするな。お別れする前にギルドの場所を教えてくれ」
「ギルドへの道は〜……あの道ですね。あの道を真っ直ぐ行けばギルドがありますよ。ギルドを通り過ぎれば海に出るので興味があったら行ってみてください。それじゃ僕は警邏に戻るので」
ちょうど時計台に隠れていた道を進めばいいらしい。それにしても、海か……思い出そうとしたが特に思い出は無かったな。
「あぁ頑張ってくれ」
ミレイユに手を振って別れる。初めて会ったのに必要以上に話してしまったな。きっと一人称のせいだ。
ミレイユに教えてもらった道を進むとすぐにギルドを見つけられた。扉には魚の絵が彫ってあって港湾都市らしさを出している。それ以外は他のギルドと特に変わらない……か?
「なんか違和感」
妙な違和感を感じたが、いちいち気にしてられないので中に入る。中も特に変わったところは無い、俺の気のせいか。
「……」
視線は感じるがホープの街でもあったし普通だろう。今はCランク冒険者の力を見極めるのと、魔道具を作った男を探すことが重要だ。
今のギルドの中にはCランクはいなさそうだ。どこを見てもゴミみたいな実力しかない。鑑定してみても……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ターブ
・Lv25
・人間
・危険度
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
や、
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ザント
・Lv15
・人間
・危険度
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
とかばかりだ。俺の鑑定は特殊で、詳細な能力は分からないが総合力を危険度で見る。その危険度に何も表示されないという事は、こいつらが何人集まろうと俺には勝てないという事だ。
「だとしたら今のままで調整はいらないな」
少し漏れ出すくらいがちょうど良いみたいだ、楽で助かる。
次は発明者を探すか?先にBランクに上がって信用を得るのもいいかもな。
「ランクアップの試験を受けたいんだが」
「どのランクでしょうか」
Bランクだと伝えると少し驚いた表情をする受付嬢。なんでしょうか、この街ではまだ何もしてませんよ?
「問題でも?」
「いえ、記録によると登録されてからひと月も経っていないようでしたので驚いてしまいました」
それもそうか、俺はホープの街のギルドマスター……フロッグ?ケロッグ?とお話したからな (強制)。普通はもっと時間がかかるのか。
「ホープの街で少しな、信用出来ないならギルドマスターに問い合わせてもいいぞ」
「大丈夫です。どうせ実力がなければBランクには上がれませんから」
さらっと俺には無理だと毒を吐きやがったな。この街は口が悪くないといけない規則があんのか?
「試験はいつ受けられる」
「早くて3日後ですね。他の希望者の方達と一緒に受けてもらいます」
他の希望者って誰だよ、さっさとターベットの街に行けよ。冬季の間ずっとこの街にいたらストレスで胃に穴開いちまうぞ。
「了解した。それと言っておくことがある、森の中の湖は知ってるか?今そこに俺の従魔がいるから近付かないように他の冒険者に伝えてくれ。近付いても攻撃しない限りは安全だ」
ヒメは近付いただけで危ないか……まぁ、密着しなければ少し疲れるだけだろう。
「分かりました。出来る範囲で周知しておきます」
いまいち信用できないが伝える事は伝えたのでギルドを出る。
「先に街で魔道具の発明者について聞き込みするか」
今考えたら、ギルドで聞き込みしたらすぐに身元がバレるので試験の話にして正解だったな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
宿を取った後、時計台の市場や道行く人と話して話題に出してみたがこれという情報は無かった。ミレイユの言っていたことが冗談だった説が出てきたが、どちらにせよ話を聞かなければ何も分からない。
宿に戻ってベッドに寝転ぶ。ベッドと言っても木枠に藁を敷き詰めてシーツを被せただけの簡易ベッドだ。王宮のフカフカベッドが恋しくなる。
「アイテムボックスに入れてくれば良かった」
チクチクするのでローブを敷いたがあまり改善しない。
「ヒメ達がいないと静かだな」
ラナは少しうるさいくらいが良いと言っていたが、俺にとっては静かな方が落ち着いて考えられる。だからあいつと一緒に勉強するのは嫌だっんだ。
今は大小の問題が山積みだ。
・勇者を探す
・ヒメと俺のための魔道具を作る
・魔道具に詳しそうな人物を探す
・地竜グラントの元住処を探す
ちょっと考えただけで4つもある。半分以上は魔道具のことについてか……そうだよ、勇者の情報も得なければいけないんだ。魔道具のことで頭がいっぱいだったな。
「明日は勇者のことを聞いてみよう」
出来ればミレイユに聞きたい。本当の事を言うとも限らないが何か発見があるかもしれない。
「背中がチクチクするけど今日はもう寝るかぁ」
考えていた事を頭の隅に追いやって無心になると、すぐに意識が落ちていく。




