表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仕事なので勇者探します  作者: 新町新
23/23

23話

ついに2つ目の街に来ましたね。レイナントなんて無かった(いずれ出します)。

港湾都市ミナルデはタウンズビルの下らへんですかね。ちなみに、大陸は他にも有って、変更が無ければ物語終盤に登場します。




 従魔達は森の湖に待機させて街に入る。どうやら面白い魔道具を発明した奴がこの街にいるらしいので、会って話を聞いてみたいが中々上手くいかない。試験も3日後らしいしベッドはチクチクだしもう嫌。



▲△▲△▲△▲△▲


 朝目覚めて宿を出る。1週間の滞在予定だが途中で宿を変えるかもしれない。


「まだチクチクする、ような気がする」


 着替えたのでチクチクから解放されたはずなのにまだ感覚が残っている。まだ床で寝る方が精神衛生上よろしい。


 気を取り直して、広場に出て勇者について聞き込みをしてみる。アンセム王国の王城で召喚されたらしいが、もしかしたら噂とか聞いてるかもしれないからな。



「ゆうしゃ?あぁ最近召喚されたとか言う話だけど、どうだかねぇ〜。今の王様はあまり良い噂を聞かないから信用出来ないね」


「勇者なら俺らがターベットの街にいた時見かけたぜ。どうやら騎士連中と一緒にダンジョンでレベル上げらしいぜ」


「勇者?それよりミレイユちゃんだよ。名前を呼ぶとゴミを見るような目で見てくれるんだ。ほんとミレイユちゃん最高だよ。この前も……」


「勇者じゃないけどこの街にも恩人はいるよ。本人が嫌がるから秘密にしてるんだけどね」


 1人おかしいのが混ざっていたが役に立つ話があった。勇者はターベットの街にいて、レベル上げをしていたらしい。今もいるかは分からないが行ってみる価値はあるな。試験が終わったらターベットに急ぐとしよう。魔道具は後回しでもいいだろう。これに関しては数年もしくは数十年単位が必要だと考えている。


 というわけでやって来ましたミナルデ港。大陸間の貿易を一手に担う重要な拠点だ。今も一隻の帆船が出港した。


「どうも、観光ですか?」


 男に話しかけられた。ローブを深くかぶっていて顔はよく見えない。だがそこそこの魔力はあるようだ。少なくともギルドにいた連中よりは強い。


「いや、ランクアップ試験まで暇でね。何となく海を見に来たんだ」


「そうですか」


 沈黙が続くが特に気まずいことはないな。2人並んで海を眺める。


 お、さっきの船がモンスターに襲われている。船体に沢山のサハギンが張り付いていて振り切るのは難しそうだ。


「見えますか」


「あの船か?」


「はい」


 よく見えるな。人間にしては良い目をしている……俺も人間だったな。


「サハギンに襲われて沈没寸前といったところか。それがどうかしたか?」


「俺は、ああいった被害を無くすために研究をしています」


 こいつか?クーラーボックスを作ったのは。


「あなたは高位の魔道士だとお見受けしました。どうか知恵をお貸しください」


 まさか見破られるとは思わなかった。もしかすると鑑定のスキルを持っているのかもしれない。なら下手に偽るより普通に接した方が良さそうだ。


「確かに魔道士だが、貸せるほどの知恵は無い。俺の名はクライス、偽名だが訳は話せない」


「俺はショウヘイ。ショウヘイ・ナカタです。名前に関しては何も聞きません」


 姓があるということは貴族か?ナカタなんて聞いたことないな。新貴族かもしれない。


「クーラーボックスはショウヘイが作ったのか?」


「アイテムボックスは一握りの人が持つ希少スキル。魔道具もいくつか見つかっていますが、どれも高い値段で取引されています」


 アイテムボックスの魔道具はオークションに出品されても落札出来るのは大貴族か大商人に限られる。裏取引の場合もあるが、普通に価値が高いのもその要因だ。俺はスキル持ちだからラナやザールによく羨ましがられた。


「だから魚を比較的長期保存できる魔道具を作りました。旅先や依頼中も食べられるように」


 こいつまさか……


「俺は魚が大好きです。そして彼らを食し1つになるんです」


 怖い。


「だからクーラーボックスを発明した。アイテムボックスなんて買うお金がないから」


 普通は初めから持ってるだろ、と明らかに普通では無いことを呟く。


「ふーん、前に焼き魚食ったけどそんなにだったぞ」


 一度王宮でこっそり摘み食いしたことがあるが俺は他の豚肉とかの方が断然好きだ。


「それは貴方が魚を食べ慣れていないからです」


 ほう。


「もっと魚を食べましょう」


 ほう!


「もっと魚を信じるのです」


 ほう!?


 何だ魚を信じるって新しい宗教かよ。怖えよ魚信者。俺は魚を信じて食べるから美味しい。は?意味わからん。


「ちょっと何言ってるか分かんないです」


「今は醤油を作れないか試しているので、成功したら是非食べて見てください」


 しょうゆが何かは知らないが、「俺は、ああいった被害を無くすために研究をしています」とか言ってなかったか?人間怖っ!その変わり身というかすり替えというか、自分の言い訳を本気で信じてる所が本当に怖い。


「時間があれば……お願いするよ」


 こんなのが街の恩人とか戦慄を覚えるわ。街の住民はこいつの本音を知っても自分に都合の良いように受け取るんだろうなぁ。


「その時は警邏部隊のミレイユさんに話をしてください。取り次いでもらえるので」


 そんなことはしません。社交辞令ですので。


「あぁ!そうだ、この後大事な用事があったんだ。これで失礼」


 早いとこ離れよう。こいつ大人しいようで押しが強いタイプだ。


「お気をつけてー」


 後ろから聞こえる声に手を振って足早に離れる。


 生理的に受け付けない奴だった。あいつが言ってた被害ってサハギン側の被害じゃないだろうな。


「優秀な変態ほど厄介なものはない」


 実際にあの変態はこの街の恩人になってるしな。まぁ人を貶めたり不幸にさせるようには見えなかったからいいか。


「今日はもう適当に依頼受けて暇つぶしするか」


 海に関係する以外の依頼を受けよう。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ギルドの掲示板の前で腕を組み依頼を眺める。面白そうなのあるかな……


 商戦の護衛、マッドクロコの革の納品、ウルフの毛皮の納品、森トウガラシの採取、炸裂シードの採取……


 森トウガラシや炸裂シードは見たこと無いな、面白そうだ。


「これにするか」


 森トウガラシの依頼書と炸裂シードの依頼書を取って登録をしてもらう。受付嬢から森トウガラシが10本で1P、炸裂シードが3房で1Pだということを教えてもらった。


「森トウガラシはいいとして、炸裂シードは名前からして危なそうだな」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「暑い……ヒメがいないと熱気ダイレクトだな」


 森を目前にして熱気に参ってしまう。


 ヒメは体温が高い割に、近くにいるとヒヤッとする。あの子は水属性の派生である氷の魔法を使うからな。


「昼過ぎたらもっと熱くなんのか……」


 森の中は熱気がこもるのか日影で涼しくなるのか……


「いや、余計なことは考えないで探そう」


 炸裂シードはえんどう豆に似ていて1m以上の大きさを採取するらしい。アイテムボックス持ちじゃないと持って帰るのキツイんじゃないか?


「ふぅ、歩きづらいな」


 足元は木の根が張っていて、油断するとこけそうになる。しかもゴブリンの罠らしきものも見かける。またあの蔓の罠だろうか。


「くそ、さっきから感知に反応してるんだよな」


 小さい反応がいくつか、付かず離れずの距離でついて来る。俺が弱るのを待っているんだろう……1回引き寄せるか。


「よっこらしょ」


 木の根に腰を下ろして、周りに魔力の種を埋め込む。オークの時にも使った設置型のオリジナル魔法だ。踏んだら死ぬ。


「……あっち」


 ガサガサ


 来るか。


『ガウッ』


 草むらから5匹のウルフが飛び出して来る。やべっ、種を飛び越えられた。


「ふっ」


『ギャン!』

 立ち上がりながら正面から来るウルフの顎をサマーソルトで蹴り砕く。背にしていた木に足をつき、蔓を伸ばして体を支える。


 俺がいたところに残りのウルフが飛び込んできて、仲間同士でぶつかっている。


石飛礫(ストーンエッジ)


 発動が早い初級魔法を、まだ立ち上がれていないウルフに撃つ。


『キャイン!』


『キャン!』


 残り2匹。


 蔓を解き木を蹴って地面に降り立ち、ウルフの生き残りを睨みつける。


 まだ向かってくるか?


 魔力に指向性を持たせて解放する。


『……』


 ザザザッ!


「……逃げたか」


 2匹とも草むらに消えていった。3匹のウルフの死体はどうしようか。錬金素材にはならないしGPにもならない……クルウにやるか。


 ウルフの死体をアイテムボックスに収納する。


 さて、森トウガラシと炸裂シードを探すか。



「はぁ、ふぅ……川探すか」


 あれから2回ウルフを撃退して5回ゴブリンを撃退した。ちょっと多くないですかね。さすがに汗を流したいし、もしかしたら森トウガラシも炸裂シードも水場に成っているかもしれない。


 暫く歩くと水の流れる音が聞こえてきた。音から察するにそれほど勢いがある川じゃないな。


「見えたっ。軽く水浴びして依頼に戻るか」


 服を脱ぎながら川辺に出る。


「……っ!!」


「ん?」


「あっ、あっ……!」


 先に人がいたのか。女の人がこんな開放的なところで脱ぐもんじゃないよ。それとも誰かに見て欲しかったとか?普通はモンスターくらいしか……


「し、死ねぇ!!そして死ね!」


 川から出たと思ったら、右手で剣を拾って意味分からないことを叫びながら斬りかかってきた。


 ブォン!


 本気じゃないか、全くの迷いが感じられるない。顔は赤いし胸を左手で隠しているし羞恥心は残っているようだ。


「せい!はあ!」


 体をずらして突きを躱すと間髪入れずに切り払ってくるがしゃがんで避ける。


「あ、まずい」


「でやぁ!」


 女が剣を頭に振り下ろしてくる。仕方ない、あまり攻撃したくはなかったが……


「フッ!」


「ぐっ……うぅ」


 女の腹に掌底を打ち込む。


「おいおい、今のを防ぐのか」


 が、立派な胸を隠していた左手を挟まれ気絶まで至らなかった。だが、その左手はダランとしているし恐らく折れたか痛めたかはしているだろう。長い赤い髪を揺らしながら肩で息をしている。


「はぁはぁ、ただの変質者ではないようだな」


「俺はただの冒険者だぞ。お前こそ変質者だろ、こんなところで女が裸になるなんてどうかしてるぜ」


 今は剣を川底に刺して大事なところは見えていないが、さっきの一連の動きでチラチラ見えてたんだよ。決して見ようと思ったわけじゃないぞ?払われたらしゃがむしか無いだろ。


「う、うるさい!名を名乗れ!」


 こいつ騎士か何かか?川辺の石の上に鎧と兜があるし剣術も中々のものだった。


「聞いているのか!な・ま・え!」


「うるっさいな!お前から名乗れ!」


「良いだろう。私はアンセム王国騎士団員シェルビー・フォン・ニッカだ。さぁ貴様も名を名乗れ!」


 騎士団なら勇者の情報を持っていそうだな。


「俺はCランク冒険者のクライスだ。とりあえず休戦して服を着てくれないか!」


 名乗りの決まりなのか、剣を体の前に掲げているので大事なところが丸見えなんだ。


「……!この痴れ者!」


 いや、ガン見してたわけじゃ無いんだけど。


 体が濡れたままギャンベゾンを着始めた。ギャンベゾンは体のラインが分かるほどぴったりだから濡れたままだとかなり着辛いだろう。


 する事もないのでボーッと眺める。


 まさかあの女フルで鎧を着るつもりか?というか1人で着れるもんなんだな鎧って。あっ、あの紋知ってる。たしかアンセム王国の伯爵家か公爵家の紋だぞ。


「いつまで見ている!そこで待っていろ、今度こそ叩き斬ってやる!」


 重そうなキュイラスを着ても動けるのか?俺が川から出なければ完封できる気がする。女はヘルムも被って準備万端か?


「川から出てこい、尋常に勝負だ!」


「……」


 少し見つめあった後、川に寝転んで目を瞑る。


 なんか面白いから煽ろう。


「き、きさっ、出てこい!」


 出て行ってもいいけど、あの重装備で石の上を動けるのか?今も俺に向けていた腕を下ろしたな。


「お姉さんそんな格好して暑くないの?無理しない方が良いよ」


 実際蒸し風呂のようになっているはずだ。関節も保護しているなら熱の逃げ場が殆ど無くなるからな。


「くっ、ぬぅ」


 着慣れているけど実戦経験は浅いようだな。川というか水場が戦場の時は鎧なんて枷にしかならない。ギャンベゾンと鎖帷子だけならまだ戦えるだろう。


「そうだ!」


 川底に魔力を浸透させて、あの女の方に傾けて地面を隆起させる。


「ふぅ……へ?キャア!」


 頭の上から川の水をぶっかける。あらら、鎧の重さに水圧が加わって立ってられなくなったのか座り込んでしまった。


「ふぅ、だいぶ体を冷やせたな」


 張り付く髪をかきあげながらニッカ?の方に歩いていく。早く鎧を拭かないと錆びるし、気絶していたら結局蒸されて死ぬしな。


「生きてるか?」


 腰を守るフォールドの横を蹴ってみる。


「う、うーん」


 気を失ってるのか。


 プレートアーマーの装備に触れてアイテムボックスに収納していく。ギャンベゾンだけはそのままにしておく……ちょうど昼過ぎだから日差しが強いな、木陰に寄せよう。


「いーよいしょ」


 俗にいうお姫様抱っこで運び、ローブの上に寝かせる。こういう時はタオル濡らして腋とかに挟むんだっけ?


「はぁーめんど、何で初対面の女騎士を世話してるんだよ」


 シェルビーこと女騎士が目覚めるまで、一応左腕に添え木をしたり、ギャンベゾンを濡らしたり、鎧の水を拭き取って時間を潰す。本人は比較的ポンコツだったが鎧自体は良いものだ、硬さの割には軽いし音が立たないように何かの革が挟まれている。さらに、薄くではあるが魔力を感じられる。ミスリルじゃないからさほど効果を発揮していないな。


「うーん……む、夜か?」


 こいつど天然かよ。自分に何が起こったか覚えてないのか?


「……おはようございます(ボソッ)」


「ひいぃぃー!なな、何だ!」


 耳元で囁くと飛び上がった。その拍子に腋や股に挟んだタオルや目にかけたタオルがポトポトと落ちた。寝かせていたローブも背中にひっついている。


「変質者の顔を忘れたか?」


「あ!貴様っ……はっ、脱がされてる!」


 綺麗に拭いてやったんだろうがよ。


「!濡れてる?私の純潔が……」


 いや、それタオル挟んだだけたから。お前の純潔になんか興味ないから。ていうか川に入ってたんだからそれで濡れたままという考えにはならないのか?


「き、貴様が……ヤッたのか?」


「ヤッてねぇよ。今度同僚に確認してもらえよ」


「せ、責任を取れ!うぅ、初めては旦那様のためにと……うっうっ」


 聞いちゃいねぇ。


「落ち着けアホ」


 正面に回り込んで頭の上に手刀をかます。


「いたっ!何をするんだ……だ、旦那様」


 何で受け入れてんだよこいつ。顔も赤らめてるし、こいつもしかしてイジメられて喜ぶタイプか。


「俺は旦那様じゃない。お前が気絶したから介抱してただけだ」


「ほ、ほんとか?まだ純潔は保たれているのか?」


「嘘はついてない。勝者の言葉を疑うのか?」


「あ、あれは負けてない!魔法なんて卑怯だぞ」


「いやいや体術でも負けてただろ。ぼろ負け」


 片手で振っていたとはいえ、丸腰のやつに負けたんだ。ぼろ負けだろう。しかも川の攻防の中では魔法は使ってない。


「リ、リベンジだ。模擬戦を申し込む」


 面倒だな。適当にごまかして逃げよう。


「それより腕は大丈夫か?結構強めに打ち込んだからな」


「え……あ、添え木してくれてたのか。だが折れてはいないようだ。心配してくれてありがとう」


 今の笑顔はクラっと来た。普通の男なら一発でいけるぞ。


「そうか、ならもう行くわ。まだ依頼の途中だし」


「依頼とはギルドの依頼か?」


「そうだけど」


 嬉しくない展開だ。


「なら私も手伝おう。迷惑をかけた詫びだ」


 はい最悪な展開です。あまり積極的に人と関わりたくないんだが。


「結構です。さようなら」


 早いとこ立ち去ろう。


「ま、待ってくれ。実は……迷子なんだ」


「は?まさか演習中にはぐれたのか?」


 俺の言葉にコクンと首肯する。迷子になったことに気付いて本体を探し回ったけど暑さにやられて、川で休んでいたところに俺が来たと。


「お前バカだな」


「うぐぅ、暴言を吐かれるなんて新鮮だ」


 少し罵るだけで興奮したのか?とんだ変態だな。


「もう終わりか?もっと言ってくれないか」


 催促してきただと!?真性だなこいつ。


「は、離れろ!付いてくるなよ!」


 枝垂れかかってきたシェルビーを押し退けて森に走る。あんな面倒な荷物お断りだ。後ろをチラ見すると潤んだ目でこちらを見ていた。


「ニッカ家の人ごめんなさい。変な性癖に目覚めさせたかもっ」

この前書きと後書きで用語の説明とかした方が楽そうですね。読者も私も^^

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ