東方地底秘話12話
芝の上でなければとんでもないことになっていただろう。
「随分と優しくなったものね」
俺を見下ろす覚無を横目で見る。
瞳が赤くなっている…。さっきまでは黒だったのに…。
「その瞳は……どういうことだ…?」
シュウウウウ…。黒色に戻った。
「ごめんね…ごめんね……本当にごめんね………」
覚無が涙目で言う。
「ただ……ただ……解ってほしかっただけなの…」
「そのためだけに…さとりたちまで…」
「何がそのためだけよ!!」
覚無が大声で叫ぶ。
「あなたがいろんなことを忘れるからでしょ!それで…それでやっと思い出そうとしているところを邪魔されて……
ねえ!?ねえ!?解るでしょ!?ねえ!?」
「今まで何があったのか覚えてないんだ。
だから…」
「そうだ……そうよね……あなたの意識を私で埋めればいいんだ……」
それはさとりたちのことも……消えるのか?
駄目だ。それは……そんなことは!
「2人だけ2人だけ2人だけ2人だけ2人だけ、
一緒一緒一緒一緒一緒、離れない離せない離れられない離れない離せない離れられない」
抗うことすらできない……。
「埋める、埋める、全部埋める、埋める!」
意識が……薄れてゆく。
なぜだ。なぜ誰もかも悲しんでいるんだ。
キーーーー!
急に…頭痛が…。
でも、意識がはっきりしてきた。なぜだ…?
「そんなこと……させない!」
こいし!?
「無意識を意識に転換できるなら無意識を操ってしまえば大丈夫……」
「無駄よ!私は無意識だって創れる。
諦めなさい!」
「いやだ…いやだよ…これぐらい…役に立たなくちゃ。一生返すことができないよ!」
「最後の最後まで…。じゃあ、先に殺ってしまえばいいのね?邪魔を消すには殺すしかないものね!?」
「…………待て!」
ありったけの力を込めて叫ぶ。
「殺るなら…俺を先に殺れ!
さとりたちの前に…俺を殺ってからにしろ!」
「だめえええええええええええええ!」
覚無がこちらに歩み寄ってくる。
これでいい。さとりたちの死後なんて見たくない。
ごめんな………最後まで悲しませて………。
また会えたら……絶対に喜ばせてやるから……。
覚無が俺の背中に銃口を向ける。
終わりか……これで……ここでお前達と出会えただけでも……嬉しかった……。
もうすぐで生涯を終えようとしているにも関わらず、不思議と焦りもなかった。
なぜなら……
「なんで……なんでよ……なんでそこだけは変わらないのよ……。いつだって私が邪魔者を跳ね除けようとしても庇って……まるで自分より大事だと言うように……」
解っていた。もちろん、過去の出来事ではない。
でも、この短い間で解っていた。
「何も知らないまま、俺を殺すことはできない……」
スパアアアアアアン!
乾いた銃声が地底の夜空に響き渡った。




