第6話 出会い
配属されて1ヶ月。浅見とバディなのは変わらないが、二手に分かれて巡回するようになった。
俺は柵を時計回り。浅見は反時計回り。
そんなある日。
バサバサ
大きな音を立てて、真っ白なタオルが舞い上がり、柵を越えてこちらに飛んでくる。そのタオルを、少女が柵の内側から困ったように眺めている。
俺は特に考えることもなく、魔法を使ってタオルを引き寄せた。
ふと、柵の向こう側の彼女と目が合う。吸血鬼特有の、透き通るほど白い肌。黒い髪は肩で切りそろえられ、細い首筋が目を引く。
俺はタオルを浮かせる。ふよふよと頼りなく柵を越え、彼女の手元に向かっていく。彼女は戸惑っていたが、手元までやってきたタオルを手に取る。その瞬間、かけていた魔法を解き、タオルは彼女の手にくたりと収まった。
(よかった、思い通りにタオルを動かせた)
攻撃魔法は得意だが、こういう緻密な魔法は苦手だ。狙った場所を外すことはもちろん、動かしているうちに対象物を破壊してしまうことだってある。
俺が一息ついていると、
「あ、ありがとう、ございました……」
黒々とした目を瞬かせていた彼女が、意を決したようにそう言った。俺がタオルを返したことも、彼女が礼を言ったことも、規則に触れる。そのことにいまさらながら気が付いた。
「あぁ……もう、飛ばすなよ」
一瞬、返事をするか迷ったが、規則を破ってまで礼を言ってくれた彼女にそう答えた。
「おーい、ちづー?どうした?」
反対側から巡回してきた浅見が、いつもより柵に近づいている俺を見つけたらしく、駆け寄ってくる。俺は浅見に見えないよう、人差し指を口元に立てた。彼女はかすかに頷いて、取り込んでいた洗濯物と一緒に家へと入っていった。
その背中から視線を外し、近づいてくる浅見に向き直る。
「何でもない。これで見回りは終わりか?」
「うん、見張り台の奴と交代してあげよう」
浅見は去りゆく彼女の背中を見ながらそう答えた。




