第5話 柵
翌日。
浅見と一緒に隔離地区の巡回に出る。
部屋から見た柵は、近づくとより高く見えた。しかも、吸血鬼が柵を越えられないように魔法がかかっているのが分かった。
「こんなに、厳重に管理されてるのか」
俺がつぶやくと、浅見はため息をついた。
「昔の話だけど、この辺の住人は吸血鬼に襲われたり、攫われたりしたんだよ。当時はまだ強い純血種がいたから、種族問わず相当な被害が出たらしい」
「被害……。でも、昔の話なんだろ?」
「純血種がいなくなったのは50年以上前だってさ。その後も、家畜が襲われることがあったって。そういう記憶は語り継がれるからね。この柵ができたって、村の人たちは近づきもしないよ。」
「……純血種がいるかどうかでそんなに違うものか?」
疑問を口にする。浅見はうーん、と言葉を選ぶように話を続ける。
「俺も当時のことはよく分からないけど、純血種は魔法使いや人間の血を好んだらしいよ。純血種と一緒に住民を襲った混血の吸血鬼も一部はいただろうし」
「……そうか」
「もちろん、中の奴ら全員がそうじゃないのは俺もわかっているよ」
浅見は小さく眉尻を下げた。
「でも、見分けられない。だから、この柵や俺たちが、村の人たちの安心なんだ」
「へぇ……」
俺は歩きながら、柵の向こう側を見つめる。
そこには青白い顔で歩いている男性。一瞬、こちらを見たが、そのまま建物へと入っていった。
「日中はあんまり出歩かないんだけどなぁ。珍しいな」
俺が見つめているのに気付いたのか、浅見がそう付け足した。
柵越しに見る吸血鬼は、肌が白い以外は、特に自分とそう変わらないように見えた。




