第4話 吸血鬼とは
寮の部屋は、二段ベッドと、簡易机、クローゼットだけの簡素な部屋だった。窓からは、隔離地区の柵も見える。
「俺は下のベッドを使ってるから、千鶴は上なー」
「あぁ」
「クローゼットも机も、廊下側が俺。窓側が千鶴」
「分かった」
俺は淡々と背負ってきたリュックを下ろし、荷解きする。浅見は不思議そうに荷物をのぞき込む。
「素直だねぇ?荷物もそんだけ?」
その言葉に、首を傾げる。
「戦場から引き上げて、すぐ来たんだ。こんなもんだろ。足りないものはそのうち買い足す」
「そっか……」
浅見は気まずそうに目を泳がしていた。
「ここは戦場に比べたら快適だな。悪くねぇ。…お前も少年兵だったんじゃねぇの?」
「まぁね。でもここ数年は内戦で壊れた地域の修繕に回ってたんだ。戦闘より魔法が得意だから」
「器用なんだな。俺は攻撃魔法だけだ」
「ま、ここでの仕事は、攻撃魔法の方が重宝されるよ。明日から、一緒に警備に回ろう!」
屈託のない浅見の言葉を聞きながら、窓から隔離地区を眺める。
警備兵が柵の周りを巡回している。目の前に広がるのは静寂なのに、緊張感がある。
鉄柵の向こう側に見えるのは、ただの生活の営みだけなのに。
「中の奴らは、本当に吸血鬼なのか?」
「純血種はいないみたいだけど、吸血鬼の血はちゃんと受け継いでる。普通の食事もするけど、血も摂取しないと死ぬみたいだね」
本当に吸血鬼の血を引いているのか。
「血はどうしてるんだ?」
「輸血用の血を渡したり、動物の血を渡してるよ。そういう取り決めさ」
「取り決め…?」
「そう。外から血や必要なものを提供する代わりに、吸血衝動のある吸血鬼は隔離地区内で暮らすって協定」
「ふーん……」
何となく分かった気になって相槌を打つ。
「提供される血はまずいから不評だって、タイラさんがぼやいてた。まぁ、共存するには仕方ないよね」
浅見は肩をすくめた。
「…停戦協定って、平和じゃないんだな」
俺のつぶやきは、浅見には聞こえなかったようだった。




