第20話 付き合う日
休日の日課になっていた買い出しの帰り道だった。カエと並んで歩いていると、
「あれぇ?千鶴?」
デカい声で呼び止められる。
振り向くと、同僚の澪が立っていた。
「おー。澪」
俺が軽く返事すると、澪はジロジロとカエを観察していた。裏表のない奴だが、少し無神経だ。
「やめろ。」
俺が澪の視界を遮るようにカエとの間に入る。
澪は驚いたようにまばたきを繰り返す。
「千鶴が、女の子と歩いてるなんて珍しいと思って。彼女?」
「そう。俺の彼女」
「へぇ?」
澪はそう言うと、楽しそうに俺の後ろのカエを覗き込む。
「同僚の澪です」
「あ、どうも……」
カエは動揺しながらも、ペコリと頭を下げた。
ニヤニヤしている澪に、余計なことは言われたくねぇな。
「もういいだろ。またな」
俺はカエの手を引き、澪を押しのけるようにして足早にその場をあとにした。
後ろから、
「今度ちゃんと紹介しろよー!」
澪が叫んでいるのが聞こえた。
◇◇◇
帰宅すると、おずおずとカエは口を開いた。
「ねぇ、私、千鶴の彼女なの?」
その言葉に、思考が停止する。
え、告白してなかったっけ?でもほぼ同棲と言っても過言では…いや、確かに、ちゃんと言ったことはなかったかもしれない…!
俺は焦って、思ったままを叫んでいた。
「え!?彼女だと思ってるよ!?カエはなんだと思ってたの!?」
「何って…?恋人…かなって思ったことはあるけど、言われたことなかったし……」
「はぁ?ずっとここにいるって言ってくれたし、キスだって……」
「…そっか、そうだね…。あ、でも!家族とは思ってたよ?」
カエは顔を隠すように俯いた。
「家族!?そっち!?え、もしかしてキスとか嫌だった!?」
俺が青ざめていく横で、カエの頬が少し赤みを帯びていくのが見えた。
「…いやじゃ、ない。」
「そう、か…なら良かった…」
ホッと胸をなでおろした。そして、絞り出すようにカエが言った言葉の意味に、思い至る。
(嫌じゃない。嫌じゃないってさ。)
俺はつい、鼻歌を歌い、カエは不思議そうに首を傾げていた。




