第2話 先輩
隔離地区は、高い鉄製の柵で囲まれていた。柵越しに、家やベンチが見える。
(でも、誰もいねぇ)
声はおろか、姿すら見えない。
「おーい!お前、新人かー?」
中の様子を伺っていると、巡回していた兵士が駆け寄ってきた。
「はい!配属されたので来ました!」
「あ、やっぱり。柵の中が隔離地区。隊長がいるのはあっちの隊舎」
兵士は柵からは少し離れた位置にある、真っ白で何の飾り気もない小さな建物を指差す。
俺は頭を下げ、建物へと向かった。
◇◇◇
隊舎にはたくさんの兵士がいた。
制服を着ている者も、そうでない者もいたが、とにかく若い奴らが多い。
「今日から配属の兵士?」
入口で立ち尽くしていると、茶髪の青年に声をかけられた。
「はい!」
「俺は浅見。君と同じ部屋。隊長に連れてこいって言われてんだ。ええと、君は…」
「千鶴です」
「千鶴。着いてきて」
彼はスタスタと歩いていく。
「同じ部屋ってなんですか?」
背中に投げかけると、彼は振り向いた。
「寮の部屋だよ。こんなとこ、家から通えないでしょ?」
俺は頷いた。
「まぁ、家がある人なんて、ここじゃ珍しいけど」
「珍しい?」
「ここは身寄りのない人が多いんだよ。君もだろ?」
俺は少しムッとした。その様子を見た浅見はフォローするように俺の肩をたたく。
「俺もだよ。そんなに睨まないで。仲良くしよう」
「……」
「あ、言っとくと、同じ部屋の先輩が、新人の面倒見るのがルールだから。仲良くしといた方がやりやすいよ?」
「……よろしくお願いします」
「あははー!嫌そう!敬語はいらないからね」
浅見は朗らかに笑った。




