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孤独な元少年兵は、隔離地区の吸血鬼に恋をした  作者: tukinami


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第17話 Sideカエ 柵の外

 千鶴が来なくなった。


 最初は嫌われるようなことをしてしまっただろうかと思ったが、浅見にすべてを教えてもらった。


 私のせいで、千鶴は中央へ戻されたらしい。


 そして、浅見は言った。

 管理者を目指せ、と。


 私は衝撃を受けた。


 私は良くも悪くも凡人で、優秀の象徴である管理者を目指すなんて、夢にも思っていなかった。


 それを目指せと言ってくれたのが、いがみ合っている浅見だったことは皮肉だけれど。

 


◇◇◇



 管理者について調べると、学校で優秀な成績を収めており、日常魔法を使え、外の常識を身につけている者が管理者候補に選ばれていると分かった。


 管理者のタイラとたまたま話す機会があり、管理者になりたいと伝えたところ、非常に喜ばれた。


 「皆、外に出たい割に、吸血衝動を抑える訓練で挫折しちゃうのよねー。あなたくらい熱意があれば、頑張れるかもね?」


 タイラの話では、いかなる状況でも吸血衝動を抑える訓練を受け、試験に受かる必要があるという。

 

 通常は管理者候補になってから受ける訓練だが、タイラが来る時には特別に訓練してもらえることになった。



 目標ができた私は、寝る間も惜しみ勉強した。苦手な魔法は毎日練習し、日常生活で必要な魔法を1つずつ覚えた。吸血衝動を抑える訓練も自主的に行った。



 家族や他の吸血鬼から無理だと笑われても、辞めなかった。自分にできることは全てやった。


 そして、卒業ぎりぎりで成績上位となった。



 管理者候補に選ばれた時、学校の成績自体は管理者候補としてはギリギリと聞かされた。

 しかし、魔法の習得度、吸血衝動を抑える訓練を一部前倒しで受けていることが総合的に評価されたらしい。



 本当に危なかった。

 私はタイラに感謝した。



 それと。たまに、浅見が会いに来た。

 はっぱをかけているつもりかもしれないが、腹が立つだけだった。


 でも。


 千鶴が元気そうなことだけが、浅見の言葉の端々から感じられた。それだけで、嫌味など聞き流すことができた。


 

 ◇◇◇




 今日はついに、中央へ行く日。

 

「やっとか」


 またしても嫌味を言われた。

 浅見は管理者になる方法を知っているのかわからないが、学校を優秀な成績で卒業するのが最短ルートであった。


 飛び級などないのだから、仕方ないだろう。


 そんなことを教える必要もないので、顔を顰めて見せるだけにした。管理者候補になった日に、浅見に言われた言葉を思い出す。


『家は探さなくていい。千鶴の家の住所、教えてやる』


 そう言って、千鶴の住所の書いてある紙片を渡された。

 

 ポケットに入れている紙片を握りながら、私は浅見を見つめる。


「千鶴の家に行けば大丈夫なのよね?」

「大丈夫大丈夫。千鶴が何とかするから」


 私はその言葉を信じ、私は千鶴の家に向かった。

 

 千鶴の家は、若い軍人ばかりが住むアパートだった。私からは連絡を取れなかったが、きっと浅見が段取りをつけてくれているだろう。

 

 遠目に千鶴が見えた。買い物袋を下げて歩いてくる。


「ちづ」


 私が声をかけると、千鶴はハッと息を呑んだ。

 買い物袋が千鶴の手からすべり落ちる。


「久しぶり」


 軽く手を挙げると、千鶴は駆け寄ってきて、私を抱き寄せる。


「!?」


 今度は私が目を見開く。肩口から、鼻をすする音が聞こえる。


(泣いてる…?)


 私は千鶴の背中に手を回す。


(暖かい……)


 そう思った。

 


次は21日(月)更新予定です。読みに来てくださると嬉しいです。

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