第16話 Side浅見③
その後も、千鶴には何も言えなかった。
あの子に管理者になることを勧めてみたものの、正直実現するのは厳しいと思っていた。
管理者は軍とも連携して、吸血鬼たちに必要な物資や支援を手配する。優秀でなければならないと、わかっていたのに。
なぜあのとき、管理者のことなど話題にしてしまったのだろう。
あの子本人すら、管理者という言葉に驚いている様子だったのに。
千鶴のため?
あの子への嫌がらせ?
わからない。
ただ、悲しむ千鶴を見たくない。
あの子が、来ない千鶴を待つのも見たくない。
結局自分のためだったのかもしれない。
そう思うと、ひどく自分勝手な気がした。
あの時、管理者なんて口にしなければよかった。
そうすれば、あの子が叶うかどうかも分からない希望にすがることもなかったかもしれない。
自分もこんな風に罪悪感を抱くことにはならなかったのに。
ここに居られない千鶴の代わりに、俺が見守ること。
あの時、無責任な発言をした、俺の責任だと思った。
数ヶ月に1回。
柵の近くで千鶴の話を独り言のように話す。
それを柵の近くのベンチで本を読むあの子がこっそりと聞いて帰る。
それだけだった。
あまりにも無反応で、こんなに親切にしてやってるのにと腹立たしい時すらあった。それを「自己満足にすぎない」と自分に言い聞かせ、何度も戒めた。
そして、
「やっとか」
荷物を持って出てきたカエに声をかける。
やっと彼女は管理者になった。千鶴がここを去ってから、2年以上になる。
「……」
内心舌打ちをする。相変わらずほとんど口を利かない。まったく可愛くない。本当にムカつく。
でも、千鶴が待っているのがこいつなのだから仕方ない。
「千鶴によろしくな」
「言われなくても」
話したのはそれだけ。
あっさりと別れを終え、颯爽と中央へと向かうカエを見送る。
「良かったなぁ、ちづ。あとはお前が何とかしろよ」




