第15話 Side浅見②
千鶴と話した次の日。巡回をしていると、やはり、いつもの場所に彼女はいた。
「もう、ちづはここには来ないよ」
俺が言うと、カエは無表情のまま視線を俺に向けた。
「ちづは君と仲が良いことがバレて、中央に飛ばされたよ。ここに残っていたら脱走に関わっていると疑われるからね」
「……私は脱走に関与していない」
「そうかもね。でも、これから先も君に疑いがかからないとは言えない」
「……」
「そうなったら、ちづは君を庇うだろうから、ここには置いておけない。もう二度と、ここへは来ない」
「っ」
これ以上ないほど、彼女は顔をゆがめた。この子は千鶴の前以外では、常に無表情なのに。
「会いたいのなら、今度は君が会いに行く番じゃないの?」
俺の言葉に、彼女は吐き捨てるように言った。
「……どうやって?あなたたちが、ここに私たちを閉じ込めているのに!」
わかるよ。こんな協定、正しくないって。でも、俺たちは、ここで足掻くしかない。
俺は努めて淡々と答える。
「異種居住区の管理者になればいい。狭き門だろうけど」
隔離地区で必要なものを外で手配し、物資面を管理する仕事。外に出る必要があるため、管理者はタイラのように外の者が付くことが多い。
だが、吸血鬼も国に認められれば、管理者になれる。そうすれば、この子も合法的に外で暮らせる。
今までに吸血衝動のある吸血鬼が認められた前例はほとんどないらしいが。
彼女は目を見開いた。
「そのために、何をすべきか、わかるよね?」
千鶴の代わりに、俺がはっぱをかけてやる。
「吸血衝動を抑えること。外の知識と常識を身につけること。……千鶴は今も、君を気にかけてる。」
彼女はにらみつけるように俺を見つめていた。
やり場のない気持ちは、俺も同じだと言ってやろうかと思ったが、意味がないと思い、口を閉じる。
その場を離れ、最後に少しだけ振り返ると、彼女がそっと涙をぬぐうのが見えた。
つまらない奴だと思っていた。
が、単に感情を隠すのがうまいだけなのだろう。
どう転ぶかは分からない。ただ、泣く人が減ればいいと思うだけだった。




