8.学院の入学試験
あれから2年たった。私は男爵家の期待を一身に背負い王都を目指した。下の兄が王都の騎士団の入団試験を受けるというので一緒に上京した。なお、上の兄は公爵学校を卒業後結婚した。そして、お嫁さんのお腹の中には赤ちゃんがいる。秋に出産予定である。
乗合馬車に乗って、街道をひた走る。馬車は揺れる。お尻が痛くなる。これも試練じっと耐えるしかない。耐えられなくなると自分で作った治癒ポーションを飲む。すると下の兄が
「それは何だ」
と聞いてくる。
「これは私が作ったポーション。お尻の痛みが緩和される」
「ほんとか、お前が作ったとなると、大丈夫なのか」
「私しか飲まないのだから、いいじゃない」
「俺にはくれないのか」
「だって、ブルクハルト兄さんは私の作った物は不安なのでしょう」
「そんなことはない。お前は可愛い妹だからな」
「それなら1本上げますね」
「ありがとう」
そう言って、下の兄は私の作ったポーションを1本飲んだ。すると
「このポーション美味しいな。それになんか尻の痛みが引いたような気がする」
「でしょう、私の自信作なのだから、特に味にはこだわったのよ。甘味を出すのに甘草も入れたのよ」
「そうか、すごいな。やっぱりお前は優秀だな」
「おだててももう1本上げないよ。私の分が無くなってしまうもの」
「ちぇ」
その後数日して王都に着いた。そして宿に入って、最後のあがき、数日勉強した。その間に兄は王宮の騎士団の試験で出かけて行った。後は結果待ちとのこと。
それから私も試験の日となった。
試験は2日間にわたって行われる。1日目は午前中が国語、数学、魔法理論、外国語の4教科、午後が地理と歴史、貴族の常識、法律の4教科である。2日目は魔法か剣術の実技である。なお、2日目の実技で高得点を出した人は優遇されるとのこと。
1日目の午前中の国語、数学、外国語は完璧にできた。魔法理論は山が当たった物は出来たが、それ以外は難しかった。午後は地理と歴史は完璧だった。貴族の常識は非常に難しかった。やはり貧乏男爵家、貴族らしいところは何もない。むしろ商人などの裕福な平民の方がずっと私たちより生活レベルが高い。法律は微妙、「たぶんあっていると思うけど」という感じ。とにかく本を読んだだけなので、実戦で試したことがない。この解釈でいいだろうという程度である。
2日目の魔法と剣術の実技については剣術を選択した。父に教えてもらった剣術であったが、やはり、付け刃は隠せない。小さい時から剣術を習ってきた高位貴族の子弟との差は歴然である。しかし、まあ、一応試験管の素振りからそれなりには出来たように思う。それに女子で剣術を選択した人は少なかったようで、甘い評価を期待したい。これは希望的観測。
フロデント王国の国民なら試験に合格すれば誰でも入学でき、外国人は許可制となっていることになっているが、学費が高いので、入学するのは王族、貴族、それに裕福な平民である。
それに試験に合格しても、その後の審査で犯罪歴や素行不良のある者は不合格となる。これは王族や貴族の子弟が学ぶため、危険を可能な限り排除するためである。
数日して結果が発表になった。私と兄はそろって入学試験の結果発表を見に行った。結果は合格。しかもAクラス。すごいことだ。掲示板で自分の名前を確かめた後、事務室によって提出書類を受け取った。そこには入学試験の成績が記載されていた。入学試験の成績は全体で20位、すごいことだ。兄に言うと
「さすが俺の妹、たいしたものだ」
素直に喜んでくれた。うれしかった。
学園は王都の北東部、王都を南北に流れるフロデント川のほとりにある。広大な敷地に学舎と寮、食堂、売店などが配置されている。生徒数は1クラス50人が6クラスで1学年300人ほど、3学年で900人ほどになる。
なお、兄も騎士団試験に合格した。最初は見習いだそうだが、これで兄弟そろって王都暮らしとなる。私は学院の寮に入ることにした。兄も寮に入るそうである。




