53.結婚式
ニーゲンブルグ公爵が広の生まれ変わりと知って、マリーの心は晴れやかになった。廊下を歩く時も公爵と手をつないで、スキップしながら歩く。しかし、公爵は豚体形、そんな軽やかにマリーに付いて行けない。
ゼイゼイ言いながら
「もっとゆっくり歩いてくれ。付いて行けない」
「そんな事を言っていると式に遅れるわよ」
これを聞いた、メイドが、
「マリー様、公爵に対する言い方ではありません」
とたしなめた。
すると公爵が
「いいんだ。マリーは悪くない。肥満で動けない俺が悪い」
これを聞いたメイドが頭に?マークをいっぱい浮かべて、
「どうされたのですか。いつもの公爵様でないみたい」
とつぶやいた。
式場に現れた新郎新婦を見て、会場の人たちは
「親子ほど年の離れた豚公爵に嫁ぐなんで新婦も可哀そう」
と思ったが、新婦があまりにも軽やで、笑顔なのを見て不思議に思った。
マリーの両親も公爵と打ち合わせに行くときは悲壮感まであったのに今は軽やかに笑顔を振りまくマリーが不思議でならなかった。
結婚式が始まった。神父が誓いの言葉を述べて、新郎夫婦に問うときもマリーは元気よく「誓います」と答えた。新郎の言葉よりよっぽど元気がよかった。
とにかくマリーは元気なのである。それに対して、公爵様は肥満体形のせいか、もう息が切れている。会場に来ている招待客は
「男爵家が橋の援助をしてもらう見返りに娘が嫁ぐと聞いていたのに、何があったのだ」
とささやき合った。
そこまでは問題がなかったのだが、誓いのキスになった時マリーは公爵様の顔をまじかで見た。すると、脂ぎった顔から肥満で膨れ上がった肉がこぼれ落ちそうである。思わず悲鳴をあげた。すると、会場の招待客は
「やっぱりいままでの元気はカラ元気だったのだ」
と、納得するのであった。
マリーは目をつぶって「これは広、これは広」と心の中でつぶやいて誓いのキスを耐えた。
その後のパーティーでもマリーはあえて公爵の顔を見ないようにしてやっとパーティーを乗り切った。両親や招待客が帰って行ってやっと落ち着いた。
式が終わって、公爵と二人きりになった時
「結婚式の誓いのキスの時の悲鳴は何なのだ。俺はすごく傷ついた」
「何言っているのよ、広が悪いのだから。あんな脂ぎった顔で迫られたら誰でもびっくりするわよ。私は可憐な乙女なのだから」
「わかりました。昔からそうだったけど、知世はいつも俺を悪者にするのだから」
「だって、そうじゃない。いつまでたっても結婚式の日を決めてくれなかったし」
「でも今回は決めたぞ」
「それ前世の記憶を取りもどす前じゃない。ノーカウントよ」
「はいはい、わかりました、俺が悪いのです。それで、これからどうする」
「どうするって、新婚の夫婦がすることは決まっているのじゃない」
「でもまた悲鳴を上げられると俺傷つくし」
「そうね、それなら目隠してしますか」
その後、マリーは公爵のダイエット作戦を実行に移した。先ず朝のランニング、食事は野菜中心、午後は剣術の稽古、このようにして健康的な生活を実践した結果、公爵のぜい肉も少しずつ取れだした。すると、もともと顔自体は悪くなかったので、屋敷のメイドたちが騒ぐようになった。
マリーは公爵に浮気厳禁と明言させた。今までは貧乏男爵家から嫁いできた令嬢と思っていたのが、公爵といっしょにいると、どうしてもマリーの方が立場が上のように感じる。何か弱みでも握られているのではと噂されるようになった。
当の公爵は「マリーを気に入っているから、好きにさせている」と取り合わなかった。
マリーはこの世界の魔獣対策として、広に火薬のことを聞いたが、火薬は硝石の入手が難しいと言われた。そこで男爵領で使っている爆発する矢のことを公爵に話した。
すると、公爵はこれなら問題はないだろうということで、これを量産することになった。いつまでもマリーの異空間でコピーするわけにいかないので、公爵領に工場を作ることになった。とりあえずマリーの名前で商業ギルドに登録した。これで、マリーにもお金が入る。
工場は公爵様がすべてやってくれた。このころにはマリーの妊娠が明らかになったからである。工場で生産された爆発する矢は公爵家だけでなく寄子の貴族にも配られ、大きな成果を上げた。するとフロデント王国の貴族や王宮からも注文が来るようになった。この爆発する矢の普及に従って、この国の魔獣被害も軽減していった。
結婚して1年後にマリーは長男を出産した。名前はクラウスと名付けた。その頃には公爵の減量も成功して、まだ、少し太いが、それでもかつての豚体形ではなくなった。やっと目隠しも取れるようになった。そして、その後マリーは4人の子供を産んだ。子供は全部で5人となった。
あるとき公爵邸の庭を散歩していたら、マリーは祠を見つけた。すると
「よっ、マリー。元気にしているか」
「はい、広にも会えたし毎日が幸せです」
「それはよかった。これで俺も肩の荷が下りた」
そう言って祠は消えていった。
そして、その後マリーは祠を見ることがなくなった。
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
8/23に「泡沫の恋の行方と花時計の思い」が完了し、8/31に「マリーの思い家族の思いそして祠がつなぐもの」が完了するので、次の作品を続けて公開していきたいと思います。
それで、次の日は最終回ですが、公開時間を朝の7:00に変更します。
8/31 7:00「マリーの思い家族の思いそして祠がつなぐもの」54話 最終回 公開
8/31 7:10 次回作品 第1話 公開
8/31 7:20 次回作品 第2話 公開
8/31 7:30 次回作品 第3話 公開
8/31 7:40 次回作品 第4話 公開
の予定です。
今後とも私の小説
(連載中)「転生者とバグでない異世界人の物語」
(連載中)「牛乳とチーズは違う味がする(顔だけ男の気ままな旅)」
(完結)「泡沫の恋の行方と花時計の思い」
(完結)「帝国皇女の憂鬱(前世の夫の生まれ変わりを捕まえろ)」
(短編・完結)「妖精に成れなかったダンゴムシの物語」
(短編・完結)「真冬の祭りそして祠がつなぐもの」
(短編・完結)「雨の日は嫌い、雨の日はやっぱり嫌、でも雨の日もちょっぴり好きかも」
(短編・完結)「北の関を死守せよ、野望は泡沫の夢と消えて」
をよろしくお願いします。




